「人間やってるね」
建物の23階から窓を覗くと聳え立つビル群が目に入る。それぞれにある直線や画一的な模様が美しい。建築の凄みたるものをひとりでに感じる。高い場所から見下ろすと、道路を走る車はゆっくりと進んでいく。神田に行くのか、どんどんと車線を変える。そんな様子を眺めながら筆を走らせてみる。
昨日は旧友と再開し天下一品なるものを食べた。確か私は「あっさり味」を頼み麺をすすった。その味に哀愁を感じた。特別に高級なわけではないが、その味の親しみやすさに幸福をみたのだ。何に啓示を受けたのか、友は突然、私に向かい「人間やってるね」と言った。旧友は上手に例えるものだと、しきりに感心してしまった。
話は突拍子もなく飛ぶが、戦争は形を変え続いているように感じる。日本においては武力による衝突はないものの。過去に逢いに行かない限り、個人は生まれた時点からしか歴史を作らない。
80-100年ほど前を記録した映像や文字に触れると、それらは全くと言っていいほど、遠くのない過去のように思える。ひと続きなのである。実感としてないものに、危機感を持つことは少ない。襟を正し知ろうとする。
(2019年8月6日 心象記より)