「夏の旅」
東北の仙台にきた。
大宮から1時間で仙台へと到着することに驚きながらも、新幹線ではすぐに眠った。しばらくしてむくりと起き、窓から外の風景をみた。高速で移動しているため、電線が高くなったり、低くなったりしている。その奥にある風情たっぷりの田園の風景を気にもとめず、電線の高低にしばらく気を取られていた。
仙台駅に到着すると、牛タン道(ロード)なるものが駅構内にあった。人がずらっと並んでいる。誰もがそうであるように、人の多いところは苦手である。「牛の舌は食べたことがない。固いのか、柔らかいのか」そう言いつつ、その牛タンロードを後にした。
この時期は仙台の名物である「七夕祭り」が開催されている。上部に丸い玉がありそのした側に、涼しげに和紙がぶら下がっている、くす玉が割れた後のような、装飾物が商店街を覆い尽くしていた。その装飾物を暖簾に見立て「へい、いらっしゃい」と和紙をめくり、周囲を和まそうとした人々のことを考えながら歩いた。
商店街の店それぞれがその装飾物を出しているため、色々なデザインが並ぶ。呉服屋は切り絵を使用したり、何かと質がいい。ドン・キホーテの装飾物は、他に形容できない「ドンキホーテ」に溢れていた。「ドン、ドン、ドン、ドンキ」という軽快なメロディとあのペンギンが頭をよぎった。そこで、私は旅を実感し始めた。
(2019年8月10日 心象記より)