タイトル:火星の運河
※ページ毎にご本人の作品をお聴きになれます
『あとは、納得いくまで読む』
3.曲作りの方法について教えて下さい
町田桃子:言葉をノートに書き留めておいて、「よし、今日曲作ろう」というときに、色んなところから言葉を取ってきて作る感じかな。
町田桃子:一文や本当に「なんだこれ?」みたいな言葉もあるし、書き留めておいても使わないこともある。だけど、何か思いついたら携帯でも何でもメモをしていて。
町田桃子:それは嬉しい。
町田桃子:そこも意識してるかな。言葉自体は分かりやすいものを使うように。
町田桃子:組み合わせるのはね、まずは直感。あとは、納得いくまで読む。でも、初めから意味が通ってるかどうかじゃなくて、そこも自分の直感になるのかな。自分で良いと思えるまで言葉の並び方を変えたりする。ライブで実際にやってみてしっくりくる場合もあるし、今の段階ではこの並びで……、ということももちろんある。
町田桃子:言葉を組み合わせるのとメロディを付けるのは大体同じタイミング。
町田桃子:そこは自己流、あんまり考えてないのかも。運動会の感想文とか学校で作文とかよく書くやん。小学6年生のときに担任の羽生先生がいて、その先生は「今日は運動会が楽しかった」や「嬉しかった」など感情をただ表現してるだけの言葉を使うと、作文を再提出させる先生だった。
その「嬉しい」をどう書くのかが作文だからって。小学6年生にとっては「何それ?」って。「ええやん、提出したんやから」となるけど、それが俺はずっと引っかかっていて。それをいつも考えている。別に感情を表す言葉を使ってもいいけど、「寂しい」を表現するときに「寂しい」という言葉は使わないようにしようって。
町田桃子:そう。そこは影響を受けているのかな。
町田桃子:それはあるのかもね。喰らってたんかもしれんね。
町田桃子:子供ながらに、確かにそうやなと思ったね。だからって、日常会話では普通に「楽しかった」とは言う。けど、わざわざ歌詞を書いて曲をつけて、わざわざ人前で演奏するんやから。制約があればあるほど楽しいみたいな気持ち、限られたものの中で何かをする、そういう楽しさはあるのかもしれん。
町田桃子:うん、初めて。
町田桃子:2年前ぐらいからちょうど、いつも出演している高円寺のライブハウス Club ROOTS のブッカーの太田ちゃんに「ちょっと俺、弾き語りをやってみようかなと思う」という話をチラッとして……。この話、長くなっても大丈夫?
町田桃子:ちょっと衝撃を受けたことがあってさ、自分の年齢も年齢やからさ、ライブに呼んでくれるのは嬉しいけど、「もっと若い子たちをステージに出してあげてもらえたら」という気持ちもどこかにあったんよ。そういう話をライブ終わって精算のときにポロっと言ったら、「いや、私は町田桃子さんを育てる気でいるんですけれど」と言われて。
10歳くらい年の離れているブッカーの子にそれを言われたのがやっぱりちょっと衝撃で。それで俺は、プレイヤーとして今後本腰を入れて弾き語りをやっていこうと思って。その流れで、弾き語りの企画をやり始めた。企画もやるし、いろんな場所、いろんな地方に行ってみようとなった。そこで1枚、自分の自己紹介じゃないけどアルバムがあった方がいいなと、活動の幅を広げるため、本腰を入れるためにも作ったのがきっかけ。
「コロナ禍だからやります!」とかそういうのではなくて。このタイミングでたまたまコロナになるんや、くらいのね。……そうですかーって(笑)。
町田桃子:うーん。ベストという意識はないけど、ライブでやり込んでいる曲を入れた意識は合ったのかな。
町田桃子:「鉛の夢」は、このアルバムを作るにあたって書いた……訳ではないか。でも「アルバムに1曲こういう曲を入れたいな」という意味で、9曲目の「鉛の夢」を作ったのかな。
町田桃子:簡単に言ってしまうと、自分が歌うことについてと、弾き語りをやっていくということを込めた曲を作りたくて、作ったのかな。
町田桃子:そうね、この中では。
町田桃子:「火星の運河」は、江戸川乱歩*4の小説から取っている。小説を読んだときに書いた曲。でも、俺が考えたことにしとこうか。
町田桃子:これもまた難しい話でさ、どれくらいの量を読んだら俺はよく小説を読むと言えるんかな。
町田桃子:そう。難しいのよ、そういうの。よう言わんけど、でも小説を読むのは好き。
町田桃子:推理小説は小学生の頃にめちゃくちゃ読んでいて。それこそモーリス・ルブラン*5が書いた「ルパン」、コナン・ドイル*6の「シャーロック・ホームズ」シリーズ。あとは、江戸川乱歩の名前の由来にもなっているエドガー・アラン・ポーがいて。江戸川乱歩も読んでたし。……小学生、中学生の頃はミステリーをいっぱい読んでいたかな。
今はミステリーを読むことはあんまりなくて、いわゆる純文学みたいなタイプの作品と、めちゃくちゃ男くさい警察小説が大好き。
町田桃子:それこそ中学生のときは観ていたよね。マカロニ・ウェスタンや時代劇を。通ずるものがある。
町田桃子:クサい台詞が格好良くてね。
町田桃子:滅多打ちにされている。正直に話すと、行って良かったと思っている。恥ずかしげもなくやけど、良い経験ができたとか楽しかったとか、そういうのじゃなくて、何て言うのかな……。「もし行っていなかったら今のこの感覚はない」というのがある。
町田桃子:表現者である、プラスで演奏者であり演者である、そのバランス。元々両方とも考えていたけど、そこのバランスの取り方、意識の仕方は変わった。今までは「全力でできることを出せばいいや」みたいな気持ちが強かったけど、いろんな所にいろんな人がいるとなってくると、出さないことも選択肢にあるなぁ、と思うようになってきたな。
もちろん欲もあるよ。せっかくそこに行ったんだから。でも、受け入れられたいとかじゃなくて、より良くしたい。より良くしたいときにはただ感情を出せばいいわけではなくて、演奏面、立ち振る舞いだとか、そういうのも含めて。考え方が変わったわけじゃないけど、考えることが増えた。遠征に行ったからじゃなくて、その場所に行ったことによって。
町田桃子:それと同時に、ようやく当たり前のことをするようになったぐらいの話であってさ。ようやくスタートラインに立てたのかも。でも、「ようやくスタートラインに立った」とは言いたくないしさ(笑)。分かるよね。葛藤じゃないけど。
こうやってインタビューを受けて「今回のツアーはどうでしたか?」と聞かれてさ、「いろんな街に行って、いろんなヤツに出会えて最高だったぜ!」、そういう一言で終わらせた方が良いかもしれんよね。
町田桃子:そういうことも言ってみたいけどね。「最高だったぜ!」って。
『結局ライブが良かったらすべて良かったみたいになっちゃうのよ』
4.表現の形式に関するこだわり
町田桃子:弾き語りは良くも悪くも全て自分。それが良いなとは思っている。バンドは相乗効果になる場合もあるし、足をひっぱり合う場合もある、それが面白いなとは思う。
町田桃子:いやぁ、足をひっぱり合うよね。これはほんまにね、バンドにとってマイナスの話やからアレやけどさ。「お前なんやねん!」とか「なんでアイツはあんなヤツやねん!」みたいなことがさ、スタジオ練習であったりするんやけど。「アイツもうええわ!」って。でも結局ステージに立って、終わって楽屋で「楽しかった!」となる(笑)。
DV の繰り返しよ。DV 夫婦やで、バンドはほんまに。結局ライブが良かったらすべて良かったみたいになっちゃうのよ。
町田桃子:そういう感じなのか。いや、そういう感じではないやろ。
町田桃子:こないだ飲みに行った。ONICHIKU PAJAMA PARTY*7 の配信に出てからはライブはやっていないかな。あれがラストライブになる可能性もあるから。246*8さん、ありがとうございました。
町田桃子:辞めたわけでも休止してるわけでもなくて、ただやっていないだけの状態。
*4 江戸川乱歩…大正から昭和期にかけて活躍した小説家。日本の探偵小説の草分け的存在。
*5 モーリス・ルブラン…フランスの小説家。怪盗紳士「アルセーヌ・ルパン」の生みの親。
*6 コナン・ドイル…イギリスの小説家、医師。『シャーロック・ホームズ』シリーズの著者として知られる。
*7 ONICHIKU PAJAMA PARTY…日曜夜更かし倶楽部のボーカル 246 が主催するイベント。
*8 246…バンド・日曜夜更かし倶楽部のボーカル。本記事のインタビュアー。