タイトル:野良犬
※ページ毎にご本人の作品をお聴きになれます
『台に問いかけている』
9.音楽をやっていなかったら何をやっていると思いますか?
町田桃子:俺、パチプロをやってる。この答えとしてはマジでパチプロやと思う。パチンコもスロットもすごかったから。大好きやったね。今は本当に遠ざかっていて。やってたときは、友達つかまえて「ジャンケンで勝ったら1万円」とか賭けをやっていたね。
町田桃子:初めはね、深夜に何人か集めて1回のジャンケンで1万円という風にやっていたけど、もうそんなめんどくさいことをやってられなくなって、最終的にはサシになったね。「ジャンケンしよ、勝ったら1万円」って。
町田桃子:大学時代の1回目の留年は、パチンコで試験受けに行けなかったからね。ちょうど打ってた台が出てる最中で、席から立てなくなった。
町田桃子:興奮するやらギャンブル自体が楽しい。……そんなんじゃないのよ、もう。出るか出ないかだけだから。
町田桃子:そう。俺が聞きたいのは「お前(スロット台)は出るのか、出ないのか」、それだけなのよ。
町田桃子:台に問いかけている。
町田桃子:小説や漫画を読んだり、映画を見たり、もちろん人並みに好きで。
町田桃子:ストレス解消法……。解消させちゃったら曲が書けないのかなとも思うし。なんか、溜め込んで良いのかなと思っていたりする。本当に日常生活は色々とあるから、ストレスに感じることもあるけど、「今日はストレス溜まってるから、これしよう」とか考えたことないかなぁ。
町田桃子:今言ってること、めっちゃイキってるやつみたいじゃない。大丈夫?
町田桃子:煙草を吸うのは好き。
町田桃子:PEACE を吸っている。
町田桃子:あるある。洋モクは吸いたくないと思う。Marlboro とかじゃなくて、昔から日本にある煙草の方が良い。初めは味が好きで吸っていたけど。ただ言ったら、PEACE の葉っぱなんて全部バージニア産やし。国産じゃねぇ(笑)。
……そうね、やっぱり小説読んだりは好きかな。趣味でも、表現からは逃れられない。
『その当時、神戸の長田という街を見てきたおじいちゃんが「戦後と同じ景色」と言ってたもんね』
10.子どもの頃のエピソードを教えて下さい
町田桃子:小学1年生か2年生のときに、うちから小学校までが歩いて5〜10分くらいの距離でさ、すごくトイレに行きたかったんやけど、もう学校終わって家に帰るだけやから、学校でトイレ済まさずに帰ってきて。で、そのときマンションの2階に住んでいて、なんとか持ち堪えたんやけど、マンションのエントランスに入った瞬間に安心したんやろうね、2階に上がる階段で漏らしちゃって。
それを後から拭きに行っている母親の後ろ姿が本当に目に焼き付いていて。罪悪感や侘しさとか別にそういうのじゃなくて、単純にその風景が残っている。
町田桃子:そうね、俺もそう思っている。俺の中で本当に写実的な絵画みたいな感じなのよ。
町田桃子:発達障害の傾向があったから、暴れ回るしリアルにテストで0点を取れる子やったのね。テストで0点を取って、親に見せられないのは分かっているから、全部机に隠すわけよ。机の中が0点の答案でぐしゃぐしゃになっていて。
学期の終わりに母親が三者面談でいろいろと言われて、机の中の荷物を持って帰ってくるときに0点の答案用紙が山ほどあって。だから学期の終わりごとにまとめて怒られている記憶がある。
町田桃子:学校の机の中に隠しても、結局母親が持って帰ってくる、そこまでは頭が回らんのやろうね。
町田桃子:その場しのぎで。そこもギャンブラー気質やね。
町田桃子:そう、トータルでは負けてるのに。だから、しょうがないんやね。
町田桃子:記念受験じゃないんやけど、俺が行っていた大学は俺のおじいちゃんが本当は合格してたけど戦争が始まって行けなかった大学やったのよ。それで、その大学をおばあちゃんが「もし良かったら1回受けるだけでも受けてほしい」と言ってきて、「良いよ」と受験したら受かってその大学に行った。
おじいちゃんはもう亡くなっていたんやけど。
町田桃子:そうそう、おばあちゃんがね。俺が初孫やったからそういのもあるんかな。顔もちょっとおじいちゃんに似てるし、とかね。「もしあんたが行ってくれたら嬉しい」って。
町田桃子:兵庫の神戸市やね。
町田桃子:震災のときは、小学3年生かな。
町田桃子:覚えてる。でもさ、やっぱり小学3年生なんてさ、「冬休みが延びた!」とかそういうノリなんよね。あとは、自衛隊の人が学校に来て物資を支給してくれたり、隣のおばあちゃんの家に水汲んで来てあげたり。
町田桃子:うん、一切なかったね。小学生からしたら。親は大変やったと思うけどね。その当時、神戸の長田という街を見てきたおじいちゃんが「戦後と同じ景色」と言ってたもんね。全部焼けちゃってて。「こんな光景をもう1回見ることになるとは」って。
町田桃子:うん、年に1回は帰ってる。場所は神戸の中でも明石市寄りで。明石海峡大橋の麓やね。
『その瞬間の自分のこだわりなだけであって、それってまだポリシーになっていなくて』
11.生きていく上でのこだわりや、どのような人生にしたいかを教えて下さい
町田桃子:さっきの話じゃないけど、毎日色々ある中でコツコツ暮らしていって、最終的に死んでたら一番良いのかな。人生に関することか。それは例えば「こういう家に住みたい」だとか、そういうこと?
町田桃子:ポリシーね。
町田桃子:やばいよね、それ。「こだわりがないことがこだわりなんだよ」とか言わんといてよってね。
町田桃子:ポリシーなくはないけど、たぶん今それを上手く言葉にできないんかな。まだ若造やからね。だから、もっと大きくなって…この歳になって大きくなってはおかしいけど、そのときに初めて分かるんかな。
絶対あるよ、俺にもポリシーはあるけど、今はまだ瞬間なんやろうね。この瞬間に「こういうことをしないでおこう」、「こういうことはしないで生きよう」ぐらいは思っている。けど「人に嫌なことはしないで生きていこう」と考えた次の瞬間には「でも、こいつにはちょっとくらい嫌なことしてもいいや」と思うこともある。
その瞬間の自分のこだわりなだけであって、それってまだポリシーになっていなくて。人生ほどでかいものに対するこだわりは、俺はまだ気づけていない、まだ選択している段階なんかな。
もっと、おじいさんになったら多少の嫌なことは気にせず、何物にも動じないようになれるのかな。あれはなんで動じないかと推察すると、何か起きた瞬間に「自分はどうする」という選択をする必要がないと思うのよ。自分はこうやって生きてきたからこうだ、それこそポリシーやと思うけど。
町田桃子:俺はまだ何か嫌なことが起きたら、「こうしよう」と後手後手の対応になる。それが積み重なって、削ぎ落とされることによって初めて、「自分の人生はこうだった」が確立される、そういうことなんかなって。
町田桃子:そうそう。それが個人的には「後手後手」という感覚。知らないから、対応が全て後手後手になる。だから、明確に「自分はこうだ」と言葉にできない状態。
【アーティスト情報】
アンダーグラウンドジャパニーズフォーク。高円寺を中心に活動中。
【Discography】
「DCBM」 (CD)
release: 2018 / format: album
「逆立ちの季節」 (CD)
release: 2021 / format: album
「ハテタテ」 (CD)
release: 2022 / format: single