「初期衝動は音楽の中に」
パーカッショニスト・佐伯武昇
アーティスト:Nyujajizu
タイトル:Unorthodox • Musical • Behavior
yutastar(gt)/ saeki takenori(perc)/ paolo tognola(pf)/ carlo cimino(ba)
※ページ毎にご本人の作品をお聴きになれます
とあるライブ会場にて、無数に転がるピンポン玉、空中に舞うイエローチキン、辺りに散らばる巨大な白い布に金や銀の紙、ハウリングする拡声器、移動するドラムセットなど、予想だにしない様々な光景を目の当たりにしました。
豪快に音を鳴らしながら身体を大きく揺らし、時にシンバルを叩きつけて、地面に転がり、丸い小さな椅子を優しく持ち上げる、そんなパフォーマンスを行っているパーカッショ二ストの佐伯武昇さん。
一見すると破壊的に思えるその姿も、通り一遍な破壊衝動などから生まれたものではなく、音楽への愛情から生まれる魅せることを忘れないご本人の精神の顕れだと感じられます。
佐伯さんは「芸能佐伯組」「怪獣墓場 group」「擬水葬楽団」「血液サラ Sara」「しめころし」「平和堂」などの名義で様々な人たちとともにハイペースでライブ活動を続けられています。”何もないことがそこにある”という逆説的な即興音楽は表現の新たな息吹を感じさせます。
とても穏やかな受け答えで取材はスムーズに進みましたが、「何も考えていないはずなのに」という佐伯さんのセリフが心に残り、音楽の中にしか存在しない理解もあり得ると感じてしまいます。
本サイトの展示ページにも掲載させていただいた以下のライブ映像をご覧になってから本記事をお読みいただくと、また違った”何か”が浮かび上がってくるかもしれません。
<インタビュー>
『ハモンドオルガンと MOOG のシンセサイザーの音に異様にはまって』
1.音楽はいつから始められましたか?
佐伯武昇:22、23かな。横田基地で働いていて、ニューロティカというバンドがいるんですけど、そこの人が働いていて、その会社自体に芸能部門があって、そういう事務所だからギターなど置いてあって、なんとなくギターは弾けていたので、音楽に合わせて弾いていたら「佐伯さん、ギター弾けんですか?バンドやりましょうよ」と誘ってもらって、ムコウミズというバンドが始まった。
佐伯武昇:全然ないです。たまたまです。家が横田基地の近くで米軍の基地の中で働くのも面白いかなと思って。
佐伯武昇:プログレ聴いてましたね。中学校の時は MTV で流れているランキングとかで聴いてましたけど、主体的に聴くようになったのは中学校の終わりぐらいからで、ほぼプログレッシブ・ロック。
佐伯武昇:音色なのかな。ハモンドオルガンと MOOG のシンセサイザーの音に異様にはまって。特にハモンドオルガンの音が「わっ、何だこれ」って(笑)。聴くと身体が震えるぐらい。ハモンドオルガンっぽい音がなると反応してしまう。ハモンドオルガンではないけれど、キューピーの三分間クッキングの音も、すごくビーンときますね。
佐伯武昇:プログレはそういうキーボードが多くて、そういう音が聴ける。
佐伯武昇:うーん。当時はですけど、サックスの音はあまり好きではなかった。ピンクフロイドの「クレイジーダイヤモンド」にサックスが入っているんですけど、「うわぁ、よくない音だ」と思った記憶があります(笑)。
佐伯武昇:今はサックス吹くぐらいなので全然好きですけど。ジャズ的でお洒落なイメージがあったのかもしれませんね。
佐伯武昇:すごく強烈にあったわけではないですけれど、今思うと少しはあったのかもしれませんね。周りにプログレを聴いている人はほぼいなくて、バンドブームで X とかを聴いていて。「俺は違う音楽を聴いているんだな」みたいなのは少しあったかもしれないですね。ひとりだけ掘っているみたいな。

イタリアのプログレなどを無理やり貸して「なんだ、これ」みたいに嫌がられて(笑)。X がクラシックと融合している、それはもう完全にプログレだから ELP の「展覧会の絵」を貸すと、何の反応もなく返ってきました。
佐伯武昇:お姉ちゃんがエレクトーンをやっていたので、家にあったものはいじっていました。弾けないけれど、音をポンポンと出して。
佐伯武昇:音楽ばっかりだったかな。映画や本は高校を出てからで、当時は音楽ばっかりだったな。
佐伯武昇:パンクを聴いていてたら思っていたかもしれない。プログレなので超難しい。コードも変なのつかっているからわかんないですよね(笑)。なので、やろうとは思わなかった。バイト中に流れてきたパンクは「これだな」と音を当てられるんですよ(笑)。
佐伯武昇:ベースが同級生で22、23でボーカルとドラムが3つぐらい下だったかな。


佐伯武昇:結構、ちょろいなと思いました(笑)。こんなんでみんないいと言ってくれて。鳥井賀句さんという人がいて、戸川昌子さんのお店などにも出演させてもらったり、青い部屋のオーディションも受かっちゃうし。
佐伯武昇:そうですね。
佐伯武昇:結成して最初のライブやるまで半年ぐらいで3年ぐらいかな。ボーカルの子は今 OverLightShow というリキッドライト*1のチームを主宰していますね。活動しているうちに音楽的なところで自分が求めているものとかけ離れていく感覚があって。

佐伯武昇:そのあとは参加するぐらいですね。俺の意志がガッツリ通っているのはムコウミズぐらいでした。ドラムも初心者でエイトビートで叩けない。ベースが同級生で彼と音楽的なこと、作為的なことも共有してやっていましたね。バンドを辞める20後半ぐらいにちゃんやまなどと知り合って。
佐伯武昇:青い部屋、UFOクラブ、レッドクロスなど、すごい数のライブをしていました。
佐伯武昇:ギターはムコウミズだけで、そのあとはパーカッション。ちゃんやまと会って公園でフリーセッションをしていたので、ギターはあんまり。友達に呼ばれてギターでセッションぐらいには使うけれど。
佐伯武昇:緩やかにですね。ムコウミズの3年ぐらいでギター熱がなくなってくるのが自分でわかってくる。うまくなってきちゃって(笑)。パンクぐらいだと良い感じに弾けているのかもと……。考えれば逆にボーカルに操られていたのかもしれないね。
ギターだとすごく上手い人がたくさんいるじゃないですか。これは天下が取れないなみたいな(笑)。ムコウミズやる時もドラムもやってみたいと思っていたんですよね。

佐伯武昇:いや、最初からガラクタです。鍋とかですね。ドラムに目覚めたのはここ2ヵ月ぐらいじゃないですか。
佐伯武昇:ちゃんやまですね。彼とウランアゲルというユニットになっていて、最初は楽器じゃなくても誰でも音楽ができるんだみたいなコンセプトで、口琴やディジュリドゥでジャンベもなかったですね。やまちゃんが鍋を持ってきたり、アコギの人もいたり、色んな人がいて。なんでもOKで公園に集まってフリーセッションしていました。
どういういきさつでそうなったのかはよくわからないですけど、だんだんちゃんとした楽器を持ってくるようになって曲を演ろうかとなった。

佐伯武昇:ムコウミズやるぐらいには、パンクなどを聴いてプログレはほぼ聴かない。最初は日本のフォークや Bob Dylan、村八分、頭脳警察、Stones、Humble Pie、ハードロックとか。なんでも聴いていましたね。
佐伯武昇:ごった煮で聴いていますね。とにかくずっと音楽を聴いていた。その当時はこのミュージシャンはここに影響されてとか何かあったと思うけどね。その辺の記憶がなくて、あんまり覚えていない(笑)。
佐伯武昇:オルガンは基本的に好きですね。あとサックスがそんなに気にならなくなった。
*1 リキッドライト…舞台用照明の一種。1960年代のサイケデリック、ロックカルチャー内で多く使用された。




