佐伯武昇

アーティスト:Monster Graveyard Group
タイトル:カンバセーション

火炎瓶テツ(vo)/ 佐伯武昇(perc,tb,tp,key)/ 三谷みっく(ba)/ ヴァロン(dr)/ 秋廣シンイチロウ(gt)
※ページ毎にご本人の作品をお聴きになれます

『みんなの音を聴いてアンサンブル的な感覚もないですね。何もないです』

2.創作の方法について教えて下さい

佐伯武昇:変な音をだす、その楽器から本来は出ない音をだす。それを引き出そうみたいな(笑)。サックスも変なところにテープを貼ったりして、音階の練習ではなくて変な音をだす練習をしています。

-ああ、そういう練習もあるのですね(笑)。

佐伯武昇:やばい音みたいなね。

-音楽のリズムとはどういうことか、良いメロディはどこから生まれる、などと考えられたりしますでしょうか?

佐伯武昇:ないかもしれないですね。「こうやったらウケる」、「これやったら楽しい」とかそういうのですね。

-音自体ではなく、コミュニケーションのところですね。

佐伯武昇:あと、楽曲は壊しますね。「すごい尊敬している」とか「この楽曲が好きだ」などあれば出来ますけど、うずうずしちゃってぶっ壊したくなっちゃう(笑)。

-壊すというのは?

佐伯武昇:いけるタイミングあればいっちゃう。1,2回だったらあれなんですけど、パーマネントに特定の楽曲を集まってやるとなるとできないかもしれないですね。

-なるほど。それが即興をメインでやられている理由でもあるんですかね。

佐伯武昇:固定のメンバーでも即興の要素が多い方がね。

-楽曲をやられる機会はあまりないのですか?

佐伯武昇:ないですね。一時期パーカッションでマラカス振っていたり、曲に奉仕するようなシンバルを叩いたりはしてましたけどね。

-曲自体は作られていたんですか?

佐伯武昇:作っていないです。女の子が弾き語りみたいな曲を寄ってアレンジして、いいところでカーンと入れたりしていましたね(笑)。

-曲作りなどには興味が向かないんですかね。

佐伯武昇:多分作れないですね。経験として修行だと思ってやっていました。特に今には生かされていないけれど、経験としてね。

-ムコウミズさんの時は曲があって、そこからスタートしたけれどだんだん即興に向かっていったんですね。即興演奏ので気を付けていることはありますか?

佐伯武昇:何もないですね(笑)。みんなの音を聴いてアンサンブル的な感覚もないですね。何もないです。

-即興演奏で上手くいった時と煮え切らない時などありますか?

佐伯武昇:それはもちろん。今日はあんまりだったな、今日はもらった。何をやっても気持ちいい状態とかはあります。

-上手くいっているとき上手くいかないときの違いはありますか?

佐伯武昇:一時期、音量の問題はありましたけどね。爆音でギター弾いて、ギターの世界観だけでもっていこうとする時は「困ったな。どう絡もうかな」とか思うんですけど、やっていると楽しくなっちゃって。これはこれでいいになる。

終わって次のライブをその人と演るとなるとね。終わると楽しいんですけどね(笑)。

-どういう状況でも楽しさを見つけていく感覚なんですかね。抽象的な話ですが、「これはこういうものだ」とかパターンづけていったりしないんですか?

佐伯武昇:人によってありますけどね。この人はこうくるだろうなとか、おおっ、やっぱりきたなって。でも、イメージはしていますね。この人とやるときは、こう来たらこれを出すみたいなの。

-変わった音を出すための練習やイメージなど、不明瞭なものに対しての準備はしっかりされているんですね。表現する上で一貫して大切にされていることとかってありますか?

佐伯武昇:考えていないかな。考えているんだろうなという知り合いはいっぱいいますけどね(笑)。

『ヒッピー、カウンターカルチャーに興味を持ち始めて本を読んだり、最終的にはインドにも行きました』

3.生きている中で印象的だったエピソードを教えて下さい

-ご出身は岐阜ですよね。岐阜のどちらですか?

佐伯武昇:飛騨地方で山の方で。山、川があるところで育ちました。白川郷という豪雪地域。よく川で遊んでいましたね。

-どういう子どもだったんですか?

佐伯武昇:わっと言われるとやっちゃうみたいな。見られていると思うと「いったれ!」みたいな。いっちゃいけないであろう時にいっちゃう。すごい高いところから飛んじゃうとか。

-小さいころからの気質なんですね。当時から性格が変わったと思う部分と変わっていないと思う部分はどういうところですか?

佐伯武昇:基本的に変わっていないと思います。演奏中はあれですけど、普段はずっとぼっーとしている感じかな。昔から声が小さいし(笑)。なんかの時にばっーとなっちゃうけど。突然壊れるみたいな。一番後ろにいたのになぜか最前列でピースしているみたいな(笑)。

-生きていくことに対する不満や不安などありましたか?

佐伯武昇:それは高校を出てからの方がありましたね。
ヒッピー、カウンターカルチャーに興味を持ち始めて本を読んだり、最終的にはインドにも行きました。

-インドはいつ行かれたんですか?

佐伯武昇:それは37、8歳ぐらいですかね。タイ、インドに行ってしこたま葉を吸ってね。帰ってきてヒッピーも終わりました(笑)。

-実際に行ってどう感じられたんですか?

佐伯武昇:こいつら、クソだ(笑)。どうしようもない。自分の中で広がっていたんでしょうね。現実を叩きつけられた。下痢もするし。日本にいると周りもいい人ばっかりだし精神世界的なイメージもどんどんと広がります。

-影響を受けていたけれど幻滅されたんですね。精神世界的なものというのは具体的に瞑想などされたりするのですか?

佐伯武昇:やります。結婚するときはスピリチュアルのパワーを持っている人が夜の何時に周波みたいなのを送るからそれを二人で寝ころんで受け取るみたいな。今思うとやばいこと言っていると思うけど(笑)。

-結婚式の時にそれをやられたんですか?

佐伯武昇:そうですね。

-当時はどういう感覚でそういったものを受け取っていたんですか?

佐伯武昇:ホメオポシーですね。足に液を垂らして実際に体調も良くなるし、それは心のどこかが開いているからだと思う。効いているから「何を言われてもそうじゃん」って。変な宗教が入ってこなくてラッキーだった。グル的な人がいたらお金も取られていたと思う。

-その感覚がインドの旅でピタッと止んだんですね。インドはどうでした?

佐伯武昇:薬のことばかりですね。ハシシ、粘土みたいな塊。油紙に包んでもらってたまに警官が来るから隠して。陰毛にも小さくして巻いたりしていた(笑)。こんな吸えないやと思って、ホテルのベランダにビニールで吊るして。帰国。

-今まで理想としていたものが失われたときはどういう心境だったでしょうか?

佐伯武昇:なにもならないですね。面白くなる。「騙された」と書いている本も探せばいっぱいあって、それを読んで同じ経験をしているので共感して楽しんでました。

-そのインドの旅以降、音楽の聴こえ方や捉え方に変化はありましたか?

佐伯武昇:たまたまその時期は音楽から離れていたので、たまに友達のバンドに呼ばれてですね。にぎやかしぐらいな。

-35,6で離れられて7,8年でまた再開されたきっかけなどありますか?

佐伯武昇:子どもが大きくなって音楽を演ろうかなと思っていて。ペンギンハウスというところで友達が働いていて、そこでやろうと思ったらノルマもあって躊躇して、プログレ好きな人がメンバー募集を出していて、気に入ってもらって一緒にやろうみたいな。阿佐ヶ谷の Yellow Vision、阿佐ヶ谷天、フライングティーポットで演っていて、始めたら昔一緒にやっていた友人がまだ音楽を続けていたりね。

ムコウミズ時代に対バンしていた人が即興界の重鎮みたいな扱いになってとかありましたね(笑)。ルイス稲毛というやつなんですけど。

「ルイス稲毛 – 淋しい女 (2002年アルバム「Spirits」収録)」


ShareButton:

返信する