佐伯武昇

アーティスト:血液サラ Sara
タイトル:ナットウキナーゼ

時岡秀雄(Tsax)/ 佐伯武昇(perc,key,rhythm machine etc…)/ and many other musicians
※ページ毎にご本人の作品をお聴きになれます

『あれは一年前ぐらいに完成していてイタリアのピアニスト Paolo Tognola が音をつけたいって』

4.現在の活動について教えて下さい

-今、怪獣墓場 group、ニュージャージーズなど様々な名義で活動されていると思うんですけど、それぞれどういうイメージで命名されていたりしますでしょうか?

佐伯武昇:勝手にバンド名っぽいのをつけているだけで、一応バンドをやっているつもりでやっているんですけど内容は即興だし。

-リリースされた怪獣墓場 group『ヒューマンラヂオ』、ニュージャージーズ『テトラガマルス』は即興で録られていたんですか?

佐伯武昇:そうですね。

「怪獣墓場のシール」

「ニュージャージーズ(佐伯氏、YUTASTAR 氏)」

-構成がしっかりと存在していると感じたので驚きです。

佐伯武昇:曲のように聴こえるようにあとで構成はしっかりしています。

-『テトラガマルス』は曲名に亀がたくさん出てきたりしますが、音源をつくる時もコンセプト的なのはないんですか?

佐伯武昇:このジャケットは息子が描いたものなんだけど亀っぽくみえた。なんとなくね。適当にぱっとみてのイメージです。

#2274 『ニュージャージーズ / テトラガマルス』『Nyujajizu / Tetragammarus』


(本作については上記のレビュー #2274 『ニュージャージーズ / テトラガマルス』『Nyujajizu / Tetragammarus』をぜひご参照ください。)

-ニュージャージーズの『Unorthodox Musical Behavior』は新しいリリースですか?

佐伯武昇:あれは一年前ぐらいに完成していてイタリアのピアニスト Paolo Tognola が音をつけたいって。Right Brain Records というレーベルから出ている。サブスクリプションにあると思う。送られてきたんですけど、全く聴いていなかった。

「Out There (Paolo Tognola & Takenori Saeki)」

-拝聴しましたが、佐伯さんの普段演られているライブとはまた違うイメージでした。

佐伯武昇:違いますね。ニュージャージーズで先に録っていて、録音方法などをなんとなく掴んでね。火炎瓶テツとの怪獣墓場 group の時は最初に3分ぐらい即興で次はビート感のある音を15分録って。イメージは作っておきます。

-その中で即興していくんですね。

佐伯武昇:そうですね。あとはいらないところ切って、火炎瓶テツのボーカルをどこに入れようかみたいな。

「火炎瓶テツ氏(怪獣墓場 group LIVE at 乃木坂 Club CACTUS)」

-擬水葬楽団の録音も始められているのだとか。

佐伯武昇:あれはちゃんとリリースされますよ。音楽活動を復帰してリリースを始めたのは最近で、そういう作業にはまった。この他に血液サラ Sara でアルバムを作って。

-様々な名義であるのも佐伯さんが主体でやられている?

佐伯武昇:そうですね。録音も俺がやりたいと言っていて。

-主体的な意味では「ムコウミズ」以来なんですかね。

佐伯武昇:けっきょく、売れなかったし売れるとかは関係ないけども。作業的にも面白く形にできたのはよかった。

『演奏中に意味もなく壁を触りにいく。あとは扉の開け閉めですよね』

5.好きなアーティストについて教えて下さい

-特定のアーティストのこの部分を取り入れているなど、ありますでしょうか?

佐伯武昇:Han Bennink、Tony Oxley からは影響を受けています。Airto Moreira って人も。浮かんだのはその3人かな。演奏のベクトルが一緒。奏でている出音の感じが好きな方向、自分がやりたいのと同じ方向をむいていると思う。

「Misha Mengelberg & Han Bennink」

「Airto Moreira – Missa Spiritual」

-これまでの話から「演ってみたらたまたま似ていた」という回答が返ってくると想像していましたが、しっかりといらっしゃるんですね。

佐伯武昇:そうですね。何も考えていないはずなのに。その辺がいやらしいところですね(笑)。

-(笑)。

佐伯武昇:Han Bennink、Tony Oxley も映像で見ただけで変なんです(笑)。ドラムセットが普通じゃない。Han Bennink は座っていなくて壁を叩きながら登場したりします(笑)。シンバルを回したり、何かを巻いてみたりね。

「Tony Oxley(Taunton 1991)」

-佐伯さんのライブで見かける「イエローチキン」はいつ導入されたのですか?

佐伯武昇:あれは結構前かな。

-あれは先ほど言われていた変な音が鳴ればってところで使われているものですかね。

佐伯武昇:そうですね。

「ライブで使用するイエローチキン他」

-丸椅子の脚を閉じたり開けたりするパフォーマンスが印象に残っていますが、ああいうのは即興的に演られているのですよね。

佐伯武昇:最近、触りに行くのはよくやりますね。演奏中に意味もなく壁を触りにいく。あとは扉の開け閉めですよね。

-扉の開け閉め、いいですね。忘れられないライブや演奏はありますか?

佐伯武昇:共演者が激突して頭を切って血だらけになった日です。それは印象に残っています。

-事故ってことですね。

佐伯武昇:歌いながら頭を振っているときにシンバルを持ち上げて当たってしまったんですよね。シンバルにヘッドバットしてしまった。額が切れてプシャー……。一生忘れないかもしれない。

-それは確かに印象深いですね。ずっと繰り返し聴く作品などありますか?

佐伯武昇:プログレはやっぱり聴くかな。安心する感じ。この音色みたいな。ELB、PS やあの辺りは聴きますね。

6.構成する9つの作品


1.The Grand Wazoo/Frank Zappa
とにかくドラムが素晴らしいビッグバンドジャズ。

2.原子神母/Pink Floyd
ジャケットも含めトータルアートの名盤。

3.危機/Yes
カラフルなビンテージキーボードの音色が素晴らしいです。

4.イルリヒト/Klaus Schulze
ダークなアンビエントミュージックです。

5.Üdü Wüdü/Magma
暗黒ファンクビート!

6.展覧会の絵/ELP
クラシック音楽とロックビートが融合!

7.永遠のリズム/Don Cherry
フリージャズとガムランミュージックの融合!

8.コンプリート・ライヴ・イン・ジャパン/Art Ensemble Of Chicago
グレートブラックミュージックが完成形。

9. チューブラー・ベルズ/Mike Oldfield
環境音楽のルーツはこのアルバムにあると思います。ひたすら心地良い……。

『そういう本を読んでいましたけど、何もなかった気がします(笑)。理解していたのかもよくわからないし』

7.音楽をやっていなかったら何をされていますか?

佐伯武昇:7、8年演奏活動を休止していた時期があって何をやっていたのか記憶がないです。子育てや日々の生活でいっぱいいっぱいだったのかな。

-年を経ていくとどういった内面の変化がありましたか?

佐伯武昇:スピリチュアルを抜けたのがやっぱり大きいかな。

-精神世界的なものというのは、自己を見つめたり。

佐伯武昇:そういう本を読んでいましたけど、何もなかった気がします(笑)。理解していたのかもよくわからないし。

-先ほどのお話だとインドの旅で嫌になられたと思うんですけど、逆に今でもこれは確かだなと思える事柄などありますか?

佐伯武昇:なんかあったかな。思いつかないな。ちょっとわからないですね。日本でそういう活動をしているとヒッピーっぽい活動をしている人は素晴らしいなと思うんですけど、旅で出会った人にはね。幻滅しちゃったから難しいですね。

日本でやっている人を否定するあれもないし。旅行から帰ってきたらインド的なものやスピリチュアルなものがクソだと思ったのも確かだし、よくわからないです。この辺りは言葉にはできないですね。

「アイ・アム・ヒッピー “日本のヒッピームーヴメント60’s~”」

-精神世界にご興味を持たれるのは、乾いている感覚、渇望してしまう感覚がどこかにあるのですか?

佐伯武昇:結局、ヒッピーっぽいものに憧れたのがスタートなんでしょうね。WoodStock の映像を何回も観て、こういう世界がいいなと思いました。ヒッピー幻想ですね(笑)。

-内面から出てきたというより外的な刺激を受けてなんですね。

佐伯武昇:やまちゃんと遊んでいるとそういうのもあってね。国立の駆け込み亭にヒッピーが集まっていて、そこに入り浸っていた。インドにいって嫌になっちゃった。やまちゃんとかあの辺りのヒッピーがどうとかではなくて。遊んでいる友達には何も思わないけど、自分の中にある何かが終わっちゃった。

-最後に情報の取捨選択についてお聞きしたいです。現代は SNS など情報を得られる媒体がたくさんあると思うんですけど、どのように得ていますか?

佐伯武昇:テレビ以外で情報を得てますね。携帯、パソコンの情報だけですね。X、Facebook、インスタとか。

-興味を持って検索することは何が多いんですか?

佐伯武昇:何を検索してるんだろう。……エッチな動画とかかな。そのぐらいしかしない(笑)。


佐伯武昇

– profile –


1973年岐阜出身。90年代中頃、パンクバンド「ムコウミズ」のギターとして演奏活動を開始。以後、ウランアゲル、非非非の非、Coco de キッコリーズ等数多くのグループ、ユニットを経験しながら、最近は廃材や生活用品を取り入れた独自のパーカッション・セットでの演奏も始める。現在はソロやセッションと共に、ニュージャージーズ、怪獣墓場、芸能佐伯組、しめころし、血液サラ SARA など様々なグループ、ユニットで活動している。

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