死紺亭柳竹

※ページ毎に本人の作品をご覧になれます


あらかじめ失われたBEATのために

行き場ない満月をさがせ
自分をめぐる殺意と友愛についての省察
期待が結果を規定する そして
他者の名前が呼ばれる

俺が言いたいのは つまり
すべてマボロシの罪ホロボシのリフ
俺が言いたいのは つまり
       すべて2行の決めゼリフ

アルジャーノンに中指を! 
アルツハイマーのレーガンのむくろにこそ花束を!

俺の取り柄は嘘をつかないってコト
おっと俺のコトバを引用すんなよ
Hey Yo Babyちゃん
  俺は何も言っちゃいない

俺はしばし冷静 ヘラクレス
言ってしまえばクール・ハーク 力(りき)むラキム
すなおに針 針すなおに レコードに落とす
すべてを把握 ルーラーズ・バック 
グランドマスター PTSD フラッシュバック
マキャベリの君主論を2パックくれないか リザレクション ヨミガエリ

NTTドコモで売人にTel イージー・マザー・ファッキンEに借金 
種なし シンセミア キモチE
変てこNAME エミネム ドクタードレに踊らされる奴隷 
スレイブ・ノースリーブ
      8マイル街のエルムの悪夢

ドクタードレのドクターSTOP ドレ博士の異常な愛情 
或いは如何にして私はギャングスタラッパを憎むのを止めて愛するようになったか
アイスキューブのキューブリックで組み立てるリリック
暗殺者の孤独なポッセ 
今夜は暗殺の森でブギーバック
2パック・シャクールのアゴしゃくる クールな一休さんクルー新佐ェ衛門さん!
ラッセル・シモンズのDeafでJamな ネズミ小僧のネズミ講

ラッパーズ・ディライトは 消しちまえ

暗殺者の心得 
トレンチコートに「ライ麦畑でつかまえて」を忘れずに
白泉社uブックスのHey Yoブルース

あらかじめ失われたBEATのために
おっと俺のコトバを引用すんなよ 
Hey,Yo Babyちゃん 
俺は何も言っちゃいない 
行き場のない満月を探せ
俺をめぐる殺意と友愛についての省察

期待が結果を規定する そして
他者の名が呼ばれる

俺が言いたいのは
すなわち すべてマボロシの罪ホロボシのリフ
俺が言いたいのはすべて2行の決めゼリフ

アルジャーノンに中指を! 
アルツハイマーのレーガンのむくろにこそ花束を!


『多分テキストとか小説とかに向かなかったんだと思うよ、人間性的に。』

7.リーディングをやっていなかったら何をやっていますか?

死紺亭柳竹:何やっているんだろうね。ナチュラル・ボーンだからね。小説家になりたいというのがあったから「小説家になりたい」と言って、ゴールデン街あたりで飲んだくれているよね。万年一次選考みたいな(笑)

やっぱりさ、芸人のリーディングとかさ、その場で結果でるでしょ。
それがいいんだよね。小説って書くだけ書いて、評価が来るのにすごい時間がかかるなって。
多分テキストとか小説とかに向かなかったんだと思うよ、人間性的に。

-全然関係ないんですけど、好きなスポーツとかあるんですか?

死紺亭柳竹:いや、俺ね、スポーツ音痴なんだよね。

-観戦とかもしないんですか?

死紺亭柳竹:錦織圭がリオのオリンピックに出たら観たりしたけど、ミーハーの枠は出ないよね。
錦織の時は徹夜して観てたんだけどね。全然わかってないの、ルールとか。ラブってなんなのとかさ。

-そういう意味では生まれ変わっても文化的な方面に進んでたんですかね。

死紺亭柳竹:石野卓球さんとかピエール瀧さんとかどこにでもいそうにないじゃん。忌野清志郎もそうなんだけど、結局俺が憧れる人たちってそうなんだよね。もう、生まれたときからみたいな。

ケラさんとかも好きだけどさ、ケラさんもあの人ああなんだよなっていう。
周りの人も「死紺亭はああなんだよな」って思っていると思うよ(笑)
例えば、ジュテームさんを観てアドバイスする馬鹿いないと思うんだよね。ジュテさんはジュテさんというか。
詩人の世界ってそういう人多いと思うんだよね。

-キャラクター性ですか?

死紺亭柳竹:世界だよね。

『そうだね。死紺亭は結構、本物なんだよ(笑)』

8.子供の頃のエピソードを教えて下さい

死紺亭柳竹:俺、母親がいなかったんだよね。継母の次の継母とそりが合わなくてさ。この人がひどくて。

俺喘息だったんだけど、オヤジが飲みに行くでしょ、そしたらばれないように遅れて呑みにいくんだよ。
その間、発作を起こしててぜえぜえ言っているのに、オヤジが帰ってくるちょっと前に帰ってきて、今まで看病していたふりをして..そういうトラウマはあるよね。

-そういう記憶はずっと心に残るものなんですか?

死紺亭柳竹:覚えているね。母方がね、空手の家元なんだよね。
妹がいるんだけど、妹はお母さんが引き取ってオヤジは俺を引き取った感じね。
どうやら、俺を引き取っちゃうと空手の跡継ぎの問題とか出ちゃう。結構、でかかったからね。

大島健夫くん空手やっているんだけど、あれの流派はうちのおじいちゃんがつくったの。

-そういう繋がりもあるんですね。ご自身で空手はやらなかったんですか?

死紺亭柳竹:母親は俺が1歳ぐらいの時に別れているから。
剣道とかやっていたけど、そんな真面目にはやっていないよね。

-小さいころから本に触れていたとお聞きしましたが、家に本がたくさんあったんですか?

死紺亭柳竹:オヤジがリーダーズ・ダイジェスト*12を購読していたのね。アメリカ版の日本語訳なんだけど、その月に出た本を「こういう本なんだよ」というあらすじだけが書いているのね。まとめて雑記を読むというか。そういうのから入っていったんだよね。

-どういうジャンルがあるんですか?

死紺亭柳竹:普通の心理学もあれば小説もあるし、今そういう本ないよね。
どっちかというと今ネットでやっているでしょ。それこそ、ツイッターのアカウントの書店フォローしてみたいな。

昔は雑誌がそういう役割だったよね。
おばあちゃんが家政婦紹介所をやっていて、家政婦さんが読む小説とかあるのね。
星新一の「ようこそ地球さん」とか、そこから筒井康隆にいったね。

-喘息で放っておかれたり、そういったトラウマが小学生の時の登校拒否に繋がっているのですか?

死紺亭柳竹:うーん。元々集団生活になじめなかったというさ。かといって家にいるのも嫌だから、本に逃避行している感じよね。

-でも、お楽しみ会の時には学校に行くんですね。

死紺亭柳竹:そうだね。死紺亭は結構、本物なんだよ(笑)
人前に出たいとか何かやらなきゃという気持ちがすごく強いんだよね。ECDとかもラップやっていなかったら何やっているんだろうって。
周りから見たら俺も「あいつ、詩をやっていなかったら何やっているんだろう」って感じだよね。

9.構成する9つの作品

1.有頂天「マリオネットタウンでそっくりショー」(アルバム「ピース」収録)
ピースというアルバムに入っているんだけど、自分で自分の真似をしている。ケラさんと言ってもケラさんという人はいない。
小林一三というのが本名で、操られるようにしている。俺も死紺亭柳竹じゃない。死紺亭柳竹なんていないし。松下真己もいない。操られている感覚を歌った詩です。

2.桂枝雀「まんじゅうこわい」
人生で初めて聞いた落語。それをコピーしてお楽しみ会で披露していた。恐怖に近い笑いというのは、その時初めて味わったね。

3.電気グルーヴ「B.B.E」(アルバム「UFO」収録)
Bull Beam Expressの略で直訳すると矛盾した表現の光線の特急。意味を逸脱している。言葉を使って、言葉を脱臼させるというか。その技を学んだね。

4.高橋源一郎「さようなら、ギャングたち」
高校に入った時に読んで、文学でこんなことができるんだという驚き。すごく詩的なんだよね。小説なんだけど。

5.ECD「マス対コア」(アルバム「HOMESICK」収録)
これはECDの到達点の一つ。インディーズというのは、売れないからインディーズではなくて、コアの意識を持っているかどうかだよね。マスのフィールドにいた人が言うから説得力がある。

6.佐藤信夫「レトリック感覚」
これも高校の時に読んだ本で、言葉って自明なものではなくて、言葉を操るには技術がいるというのを学ばせてもらった。

7.森奈津子「西條秀樹のおかげです」
これは傑作ですよ。愛と笑いとエロスがある。ネタバレになるから中身は言わないけど、過渡期ナイトで指定図書みたいにして、女の子に読ませたことあるのよね。そしたらエロすぎるって(笑)
森奈津子さんはレズビアンで描写とかがハードだけど、きちんとSFなんだよね。”本格派にして異端”というところが好きかな。

8.平田順子「ナゴムの話 ~トンガチャッタ奴らの宣戦布告~」
過渡期ナイトを立ち上げる時、名前が決まっていなくてレーベルを作りたいという話の中で、参考図書にしていた。80年代にケラさんがナゴムだったんなら、00年代は死紺亭のなんだろう、と考えるときに役に立った。

9.北村太郎「港の人」
これはものすごく好きな現代詩の詩集。現代詩人の松下真己というのもいるでしょ。それがすごく影響を受けているのかな。ある時期、大学で詩を教える授業に携わっていたんだけど、その時に、学生に現代詩を教えながら自分が一番影響を受けていたのが「港の人」なんだよね。カッコいいんだよね。

『あんた、私を安定した職業について食わせるのか?死紺亭を続けるのどっちなの?』

10.今生きているこの人生に関するこだわりや、どんな人生にしたいかを教えて下さい

死紺亭柳竹:結婚がしたいよね。それが未解決でしょ。
大学の時に7年間、付き合った彼女がいて、大学卒業しても「死紺亭柳竹」をやっていて、ある日、裏手に連れ出されて「あんた、私を安定した職業について食わせるのか?死紺亭を続けるのどっちなの?」って聞かれて、死紺亭って答えたんだよね、俺ね(笑)

-初めてそんな二択、聞きました(笑)

死紺亭柳竹:厳しいよね(笑)そこでさ、「安定した職業について君を食わすよ」とは口を裂けても言えないよね。
今度、死紺亭のロンリーガールっていうのやるから、そこでその話もするからね。
その時はポエトリーとかをまだやっていないのに、正直それで見切る彼女は現実を見ているなって。

-人生の目標は結婚なんですね。

死紺亭柳竹:やっぱり、恋愛から始めてね。最初はお友達からですね(笑)


*12…デウィット・ウォレスとライラ・ベル・ウォレスが1922年に創刊した月刊の総合ファミリー雑誌。


【アーティスト情報】

死紺亭柳竹

【プロフィール】

詩人・喜劇人
1973年 鹿児島生まれ。

1989年 熊本・紫紺亭一門創設。熊本大学落語研究会入門。”紫紺亭柳竹”命名。

1992年 早稲田大学進学。コメディ・サークル『お笑ひの科學』代表となる。同時に”死紺亭柳竹”に改姓、現在に至る。

2001年 SPOKEN WORDSレーベル『過渡期ナイト』始動。以降、代表としてレーベルの全活動のディレクションを担当。
同時期から日本語のポエトリーリーディング・アーティストとして、頭角を現す。

2004年 SHINJUKU SPOKEN WORDS SLAM(SSWS)にて『死紺亭の東京っていい街だな』を発表。同作により、SSWS総合優勝。

2012年 SLAM・ゼウスガーデン優勝。

2018年 TOKYO LANGUAGE SLAM vol.1優勝。

本名の「松下真己」名義では、旺盛に現代詩などを執筆している。



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