『「ひめゆりの塔」へ』
ひめゆりの塔にいった。それは那覇から十数キロ南下した糸満市にあった。一度、中学生のときに沖縄に訪れたが、ひめゆりの塔にいったかどうかは定かではない。記憶にない。
当時使用していた薬品の瓶のようなものが飾ってあった。それはボロボロで、時の経過を止めた、その瞬間を保存しているようだった。
最後のあたりの部屋では、ひめゆりの女学生の顔写真が飾られてあり、その下に一人ひとりの気質が書いていた。「リーダーシップがあり、気立てがいい」。
写真は壁一面に張り巡らされてあり、少しの罪悪感を生んだ。爽やかな心持ちになれるようなものではなかった。直感的に”繰り返してはいけないもの”と認識した。人間の生に対する感情。それを記録すること、伝えようとする意志、そのような芸術がひめゆりの資料館にはあった。
人間はやたらと汚く、とても綺麗である。いくつもの面がある。
その奥底に触れる作品を創りたい。死を迎える前に。
(2019年10月31日 心象記より)