「ループさせる言葉」(DJへの敬意はありますか?)
DJへの敬意とは何だろう。ヒップホップやクラブカルチャーにおいて、DJは絶対的な存在である。
しかしながら、ポエトリーの文脈において、DJへの敬意が語られる事は少ない。それは何故であろうか。
端的に、DJの凄さを実感する機会の差であると私は考える。
言葉が主体的に躍動し、同時に言葉の中身を問う詩の世界においては、仕方がない事でもあろう。故にDJをより知る機会が必要である。
同時に、どの様に凄いのか?という視点を確保しなければならない。
今日は、ヒップホップDJにおけるループについて述べていく。よくメディアなどで、レコードを使い、同じ箇所をループさせる光景を目にする。
いわゆる2枚使いであるが、この2枚使いは、ヒップホップのDJにおいて、基礎的な技術手法となる。
同時に、グランドマスターフレッシュを筆頭に、この2枚使いこそが、ヒップホップカルチャーにおいて、大きな影響を及ぼしていく。
DJの具体的な技術は、ジャグリングにおいても、スクラッチにおいても、現場で腕のあるDJを実際に見て頂きたい。この寄稿においては、いわゆるループをさせる機能的な意味を述べていく。
まず、理論的に、サンプラーで、同箇所をループさせる行為と、DJが2枚使いし、ループを維持させる事は同じである。しかしながら、人力で同テンポを保ち、時に意図して速度を上下させながら、ループを持続させるDJは、やはり凄いのだ。
この、ループをさせる行為は、ブレイクビーツを接続させる上で、避けては通れない。
また、「グッドタイムス」を初め、2枚使いの定番皿も、数知れず存在する。2枚の同箇所を使用し、別なグルーヴへと繋げる行為こそが、90年代ヒップホップの下地とも呼べよう。(同楽曲において、別箇所を2枚使いし、ループさせる行為や、別々のレコードを使用する行為も含む)
そして、プレミアを筆頭に、DJが作るループをトラックとして、次なるベクトルに繋げていく事も、ヒップホップの美学である。
「Code Of The Streets」や「Mass Appeal」は勿論であるが、「Come Clean」における上ネタとドラムの高度なシンプル性は、ヒップホップループの、正に醍醐味と言うに相応しい。
しかし、そこには、プリモの巧みな技術があり、削ぎ落とされた音像である事を忘れてはならない。
ポエトリーの現場において、DJが2枚使いをするシーンは少ないが、言葉を主とする以上は、どの様な言葉が繰り返されているのかを、探ることも大切な行為なのだ。
また、2枚使いされるレコードには、2枚使いされる理由が必ずある。それは、引き立つパンチラインであったり、フックであったり、ヴァース内で、リリックを引き立てるレコードからの言葉であったり、様々であるが、興味を持ってして、DJを見ない限り「本当の敬意」は得られない。
CDを一枚渡して、「ライブDJやって」というのは簡単である。しかし、問いたい。あなたは、「そのDJをちゃんと見ていますか?」
では、第4回目でお会いしよう。
【今回の試聴】
「Saitama Madness」(Masaki On The Mic Self Remix) – Masaki On The Mic
Rap,Track by マサキオンザマイク from ZGR
第二回目:「己がサンプリングされよ」(マサキオンザマイク理論)
第四回目:???
『Initial $』