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「己がサンプリングされよ」(マサキオンザマイク理論)


 第二回は、手前味噌ながら、私マサキオンザマイクのアルバムについて述べさせて頂く。というのも、メンバーや、関係者からの有難い指摘を受けて、独自の思考や、方法について、もっと自身を説明したいと考えたからである。

 まず、ご存知の方も、そうでない方の為にも、私のライブにおけるフリーフォームを述べる。
 元々ジャズの即興演奏や、セッションが好きな私は、ラッパーのフリースタイルよりも、より直感的な即興ラップを得意とする。聴いた事の無い曲に、用意もないマイクのコンディションで、その場にしかない世界を言葉で演奏するのが、私のスタイルだ。

 しかし、ライブの途中には、その正反対に、入念に作り込まれた小ネタを挟む。
 そうでなければ、私はライブにおける文脈や、「現在地」が見えなくなるからである。
 せっかく作ったビートも、私の DJ である YEW は使用しない事が多い。
行き当たりばったりなステージにこそ、美学を求めてしまう。無論現場の状況や、イベント内容により、入念なリハーサルが必要な場合もある。
 その都度において、臨機応変に対応が可能であり、裏返せばトラブルに即座に、適応出来る事が、MC の本質であろう。

 では、ZGR*1 等の作品群はどうなのか。フリースタイルが得意なラッパーほど、スタジオ作業が弱いと言われる。しかし、私は、スタジオ作業でのフリーフォームも強く持ち合わせる。具体的には、構造的に定まった楽曲であっても、規定様式に留まらない。
 しかしながら、入念なる準備という事を考えれば、結果的に極端に作り込む事は、やはり不得意ではない。

 この様な、異様な価値観で、ライブの現場に出て来た私のアルバムは、コンセプト自体がヒップホップなものである。私マサキオンザマイクは「DJ や他者が、ミックスした作品こそがアルバム」であると定義している。つまり、それらは無数に存在して頂けば、ありがたいことであり、同時に無数にあって良いのである。

 故に意図して、アルバムを1枚もリリースしていない。様々なオファーや、制作したいと思った事はあれど、この12、13年は興味すらないのが実情だ。
 是非とも、私のレコードを購入し、ミックスをリリースし、「あなただけ」の私の 1st を作って頂きたい。
自身がある意味で、他者をサンプリングしている以上は、同時に自身を他者がサンプリングしたり、ミックス創作をする事に対して、抵抗は全く無い。
自分を棚に上げて、サンプリングをしようとは思わない。故にヒップホップゲームは、常に「フェア」である。

 では、第3回目の寄稿でお会いしよう。ご清聴に感謝する。

【今回の試聴】
「埼玉狂気」(Original Mix) – Masaki On The Mic
Track by マサキオンザマイク from ZGR


*1 ZGR…ZIGOKU RECORD。2005年にマサキオンザマイクが立ち上げた自主レコードレーベル。


第一回目:「ヒップホップにおけるマッチョイズムとポエトリー」(4 Poetry Artist/詩人達のブレイクビーツ)
第三回目:「ループさせる言葉」(DJへの敬意はありますか?)


『Initial $』

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