第13話

超空間ナイター プロ野球キング攻略本1997年

『超空間ナイター プロ野球キング 公式ガイド&データブック』
株式会社アスキー
1997年1月

試合に、ライバルに勝てる知識をギュ~ッとパック!必勝法、チームデータ、育成の秘密を大公開。
「BOOK」データベースより

【親しみのある見た目】

NINTENDO64のゲームソフトとしてイマジニアから発売された「超空間ナイター プロ野球キング」の攻略本。表紙裏表紙の「12球団というバリエーションを使ったヴィジュアル」とのテーマを言わんばかりの安易なデザインアイディアは何か好感持てる。安易過ぎて逆にかわいい。

【書いて良い事と悪い事】

今現在の野球ゲームの攻略本は、リアルで複雑なゲームシステム、モードの攻略解説にページを割き、残りは選手全員のステータスデータの羅列に費やされる。選手ステータスに関しては、数値やアルファベットのみの表記にし、取り立ててコメントはせず公平な扱いをしている。
しかしこの攻略本の一番の特徴は、シンプルなゲームシステムの中で如何に戦うかかなり具体的な作戦の記載と共に、ひたすら勝利の為にチーム、選手に対して気遣い無用のコメントでずばずば解説するところだ。
これがドラクエなどの架空のキャラクターを扱ったゲームなら何の問題もない。しかしプロ野球ゲームのような実際のスポーツ選手を実名で扱ったゲームなら、個人が書いたネットの記事でもないのだから、ある程度は気遣いするのがモラルなはずだ。それが例えお粗末なポリゴン顔で再現されていたとしても。攻略本発売当時は現在進行形でその選手働いてるわけだし。
誌面にはチーム毎に「勝ちを狙うならこの選手」コーナーを設け、「総合力で見るとあまりパッとしないチーム」「捕手なのに捕手力が低いのは致命的。」「荒れ球なのが幸いして意外に打ちづらい」など下校中の少年たちの意見をそのまま書いたかのような率直な意見が並ぶ。

唯一感心したのが横浜ベイスターズの解説「ひとことで言って、これからのチーム。」、せめてこれくらいの言い回しはしてくれ。カクカクなグラフィックでも、このゲームの各データにはモデルとなる選手の魂が入ってるんだよ。家族がいるんだよ、彼らにも。

【この本の本当】

あくまで野球はゲームの題材の一つに過ぎず、野球やスポーツの楽しさ面白さ自体は汲もうとしないスタンスを貫く誌面をよそに、各章の扉絵には往年のプレイヤーや漫画のキャラクターの格言を記載している。
名言を掲載することで「ただゲームを攻略するだけじゃない、その中でキミたちに感じて欲しいものがあるんだ!」とでも言いたげだが、残念。こちらからすれば、さっきまでの人を人と思わぬ扱いを見せつけられ、もはや単なるサイコパスにしか感じない。
それでいて最後の最後で「禁断の秘技」としてバグを使った経験値大量入手法を記載してしまうのが、この本がこの本たる所以なのだろう。

独特な投球フォームが特徴な野茂英雄の「自分のフォームにあれこれ言われたくない。思い通りにやりたい。」という言葉の扉絵は「選手エディット&育成」の章。野茂さんごめん、俺が代わりに謝ります。

一通り読み終え、荒いメッセージ性を受け取り本を閉じると、表紙では選手の顔グラフィックを1203個使用したモザイク画、裏表紙では全身グラフィックのポリゴン全開の選手達が各チーム一人集まり大団円を組み、読者を見つめる。人間の再現を目指し創られた彼らはやはり個体値を持ったデータとしか扱われなかった。人ではない。ただのポリゴンなのだ。

【記録係】
伊藤竣泰


『観察庁24時』

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