タイトル:カールモールのテーマ/karlmohl special band
『「私はこのお店にずっといるし、ずっといたいな」って初めて思った仕事です』
4.カールモールで仕事を始めるきっかけと、いつから始めたかを教えて下さい。
-元々、音楽活動をされていたときにWildSide Tokyoに出演されていたんでしたっけ?
マダム:今の*WildSide Tokyoが、*HEAD POWERだった頃ですね。HEAD POWERに割と呼んでもらってたんですけど、その手前にあるカールモールがすごく気になってて。
初めてカールモールに足を踏み入れたのが、何年前だろう…20年くらい前になるのかなぁ。
*WildSide Tokyo…カールモールと同じ貝塚ビルの地下1階にあるライブハウス。2009年オープン。
*HEAD POWER…1968年オープンの、日本最古級のライブハウス。2008年に貝塚ビルから東新宿の明治通り沿いに移転。
カールモールの入口
奥に進むと、地下のWildside Tokyoに降りる階段がある
-当時はマスターさんが1人でお店をやられていたんですか?
マダム:そうそう。ちょうどマスターの奥様が亡くなられた直後くらいに、私がカールモールに初めて来たから、マスターの奥様にはお会いしたことがないんです。
そこから、たまにカールモールでライブやったりとか、飲みに来たりとか、企画ライブをやったりとかしてて。
そしたらマスターが、「お店やらない?」って言ってくれて。
でも、実は色んな人に「やらない?」ってお願いしてみたけど、ことごとく皆ダメで去っていくみたいなことがあったり、あとは変な人とかもいたりとかで。
そういうのを聞いてると、「そんな人に頼むんだったら、私がやった方が良いじゃん」って思ったけど、やっぱりカールモールが好き過ぎるお店だから、自分が全ての責任を負って、お店を潰しちゃったらどうしようっていう不安がすごくあって。
そのときって私が28,29歳で割と大人になってたから、20代前半で言われてたら「やりますやります!」ってきっとすぐ言ってたと思うんだけど。そのときは別の仕事もしてたから、それで2年くらい「そうだなぁ…」って考えてて。
で、たまたま仕事の契約のタイミングとかがあって、割と岐路に立った時期があって。その選択肢の中に、「カールモールで働く」っていうのも入ってて、「これからの人生、どう生きたら面白いのかな?」って思ったときに、正直何の安定もないし、何のノウハウもないのに、お店をやるってどうなんだろうと思ったけど、でもやるんだったら1本でやりたくて、副業とかもやりたくないし、それ一本で仕事をしたいって思って。
それで、2年くらい考えて、お引き受けをして。それが2012年。5月くらいに「やります」って言って、前の仕事を辞めて、8月から働き始めました。
-働き始めたときから「マダム」という役職があったんですか?
マダム:「名前をどうしようか?」という話になって、でも私「ママ」って言われるのがすごく嫌いで。「私はあなたのママじゃないし」って(笑)「お店のママ」みたいな感じは、自分としてはそうじゃないし、違う素敵な呼び名はないかなと考えて。
そしたら、「『マダム』っていう呼び名はどう?」っていう話になって。でもマダムって名乗るほどマダム感もないし、最初しばらくは「マダム見習い」でしたね。いつから自分で勝手に「見習い」を外したのかは覚えてないんだけど(笑)そんなところから始まりました。
それまで会社でしか働いたことがない人が、マニュアルがない所にポンって放り出されて、ルーティンワークがないと、「朝来て何する?」っていう、まずそこからなんですね。
でも、当時お店の中が綺麗とは言える状態じゃなかったから、「まずは掃除かな?」と(笑)
それで、何をどうしたもんかなと思って…。でも、とりあえずライブの営業はやってたから、「まずは音楽を取っ掛かりにやっていくか」っていうことにして、そこからはひたすら営業活動でしたね。
1日に30〜40件、いろんなアーティストのホームページを見て、出演オファーをしたり、あとはライブを観に行って、良いアーティストがいたら声をかけたりとか。そういうことをひたすらやってました。
ほんとに、そこからちょっとずつ出てくれる人が増えていって。でも、それでも全然毎月の土日なんか埋まるわけもなく。何日くらいだったのかな…例えば頑張って4組くらいのブッキングで月に3,4日開催するとか。
それがちょっとずつちょっとずつ、出てくれた演者さんが誰かを紹介してくれたりとか、そういうので繋がりが増えていきました。
マダムと、カールモールの創業者であるマスター(右)
-当時から今も出演されている方っていらっしゃいますか?
マダム:一番古くて、*せきねたくやくんや*田中一世くん、それから*蜂鳥あみ太さんや*高橋絵実ちゃんも、私がマダムを始めてそんなに経っていないときに出演してくださってますね。*岡田くんも割と古くから出演してくれていましたね。
*せきねたくやさん…2人組音楽ユニット「金魚」のボーカル・ギター。カールモールではスタッフとして勤務。
*田中一世さん…「新宿の野良犬」の異名を持つ男性シンガーソングライター。出演歴の長さや数々の名演から、「Mr.カールモール」とも呼ばれる。
*蜂鳥あみ太=4号さん…全身網タイツのシャンソン歌手。抜群の歌唱力と圧倒的エンターテイメントショーで人気を博し、カールモールでのライブでは多くの観客を集める。
*高橋絵実さん…カールモールや、都内のシャンソニエ(シャンソンを聴かせるライブハウス)を中心に活動中の歌手。2017年に日本シャンソン協会 プリスリーズ優秀新人賞を受賞。
*センチメンタル岡田 a.k.a 岡田啓佑さん…ジャズピアニスト、ラッパーとして活躍中のアーティスト。
-かつて、岡田さん、「水中、それは苦しい」のジョニー大蔵大臣さん、大森靖子さんの3マンライブがカールモールで開催されたと聞いたことがあります。
マダム:そうそう。それは大森さんがまだインディーズの頃で、岡田くんが何か企画やりたいって言って。
でも私、その日友達の結婚式で不在で。でも岡田くんが「1人でも大丈夫です」って言ってたから、お任せしましたね。
-2012年の8月からカールモールで働き始めて、もうすぐ7年ですかね?
マダム:そう、今年(取材時の2019年)の8月で7年ですね。私、こんなに仕事で長く続いたことって初めてで。
5年以上、同じ職場で働いたことがなくて。すごくいろんな職場でいろんな仕事をしてきたけど、どんなに人間関係が良くて、どんなに仕事が楽しくても、「絶対10年後はここにいない」って思ってました。
でも、カールモールで働き始めて、最初は「続けよう」というモチベーションよりも「どうしよう!?」っていう気持ちが先立ったけど、「私はこのお店にずっといるし、ずっといたいな」って初めて思った仕事です。
-「ずっとカールモールで働きたい、ここにいたい」という気持ちはどこから出てくるのでしょうか?
マダム:なんだろう…面白いから、じゃないですかね?(笑)
やっぱり、飽きない。やらなきゃいけないこととか、プレッシャーっていう部分は、会社員とは比にならないけど、普通に月〜金で決められた仕事をこなすのとは違うし、やっぱりそれに余りあるリターン、例えばみんなが喜んでくれるとか、良い音楽がカールモールで生まれてみんなで共有できるとか、あとはくだらないことを思いついてカールモールで実現できるとか。
そういう、総合的なところかなぁ。
あとはやっぱり、一番大きいのは人間関係の部分で、嫌いな人と仕事しなくていいっていう。あと、怒られない(笑)
-それ、重要ですね(笑)
マダム:褒められて伸びるタイプで、あんまり怒られたくないんですよね(笑)
でも、20代のときに散々怒られたりとか、そういうのをやってきたから、カールモールで働いてても、何となくいろんなことがそこまでなぁなぁにはならないかなっていうのはありますね。
もし社会人経験がない状態ですぐにお店をやるとなってたとしたら、きっと今みたいにはできなかったと思うし。また違った形で、もしかしたらやれたかもしれないけど。
ちゃんと会社で働いてた期間があったことは、すごく重要だなと思います。
ライブハウスや音楽関係のお仕事って、ちょっとなぁなぁでやり取りするイメージがあるかもしれないですけど…もちろん場所によっては違いますけど。
私は会社員気質が抜けないから、メールもすごく丁寧に返信するし、電話とかのやり取りも「こういう仕事だからこそ、ちゃんとしていたい」っていう思いが強くて。
あと、舐められたくないですよね。やり取りする相手に、「適当にやってればいいや」って思われたくない。
-その丁寧さは、日頃やり取りさせていただいている中でも感じます!
マダム:それと、私、最初この仕事を始めるときに、夜仕事をすることにすごく抵抗があって。前のホテルの仕事で、遅番で遅くまで働くとかはあったんですけど。
割と、「健全に生きたい」っていう思いがあったから、自分が夜がメインの仕事をするってなったときに、不安と抵抗があったんですよね。だから殊更、他のことをすごくちゃんとしたいなって意識してます。
例えば、夜に仕事をして、帰ってきて昼過ぎまで寝るとかもすごく嫌だったから、絶対に朝起きてちゃんとご飯を食べてっていう普通の生活をした上でこの仕事をしたいなって思ってて。
-7年マダムをやられてきて、カールモールの規模が大きくなっていっている実感はありますか?
マダム:まだまだ全然ですが最初に比べたら、お店を知ってもらえてきた、という意味では規模は広がったなぁ、と思います。アーティストさんの層が厚くなったことも積み重なった年月を感じますね。
マダムを始めた頃、出演してくれる演者さんを探していたときも、誰でも構わずコピペで出演オファーのメールを送ってたわけじゃなくて、必ず「良いな」って思う部分があるアーティストさんにしか連絡していなくて。
だから余計に時間がかかったんですよね。100人いるうちの全部を聴いたって、その中で自分が好きな音楽って正直そんなにヒットしなくて。
好き、という感覚の部分は昔とそんなに変わらないと思うけど、「カールモールで演奏してもらいたい」という基準は確実に上がっていると思います。正直言って、カールモールにお呼びしている演者さんはかなりレベルが高い方ばかりだと思っています。
でも、規模でいうと、今いろんなことが整備できて、ライブ以外にもランチやったりとか、新規のイベント、婚活パーティーなどを含めて、いろんなことができるようになってきたから、全然まだまだだけど、マダムを始めた最初の頃に比べたら、やっとスタート地点に立てたって感じですね。
『「くだらないことにこそ、全力を注ぐ」っていうところは大事にしてます』
5.カールモールでの普段のお仕事を教えて下さい。
マダム:なんだろ…(笑)ええと…掃除、仕入れ、ホームページの更新、ホームページのリニューアルにあたっての打ち合わせ、企画、新規営業、ランチの仕込み、音響、受付、ドリンク、打ち合わせ、あと…全部(笑)
分業制ではないです。
-ほんとに全部ですね(笑)これらのお仕事も、最初は全部ノーマニュアルだったんですよね。
マダム:ノーマニュアル!超ノーマニュアルでした。
だって、カールモールで仕事をしていくにつれて「仕事のマニュアルってこうやって作られていくんだな」っていうことが勉強になったというか。
今だと、やっぱりずっとやってると、「なんとなくこういう感じだよね」っていうのができてきて。
例えばライブの日だったら、当日来て、とりあえずバーっと掃除して、表の看板を書いて、仕入れして、音響の準備をして。そのうち演者さんが来て、リハーサルをやって。
リハーサルも、そもそも最初はまず音響とか知らなかったんですよね。「えっ!?」と思って(笑)
一番最初は、スズキくんっていう、前にWildSide Tokyoで働いてて、今はフリーで自分の会社をやっている子がいて、その子にちょっと音響を手伝ってもらいながらやってたんだけど。
でも、音響のことは全然分かんなくて、「PAって何ですか?」っていうところからでしたね。機材の使い方も全然分かんないし、ケーブル類も全然…。
元々自分で音楽をやってたときも、ボーカルだし、ギターとか使うわけじゃないから、機械を通して何かをするっていうのが、スタジオでマイクを挿すくらいのことしかなくて。
例えば、今も使ってるPA卓は、ミッドとかもないし、ハイ、ロー、リバーブだけで。「もっと、ちょっと、クリアな感じで」って演者さんに言われても、「クリアな感じ…?」って思って(苦笑)
そういうのも、1個1個覚えていって。例えば、「そういうのって、ローを切って、ハイを上げると、明るい感じになるんだよ」っていうのをいろんな人に教えてもらいながら、知っていきましたね。
マダムの定位置である2階カウンターにて
-金魚のせきねさんがスタッフとして入ったのは、いつ頃からですか?
マダム:せきねくんは4〜5年前くらいになりますかね。その頃お店でちょっと色々あって、その前後だったかなと思います。
その色々があって私にとって「自分がちゃんとしないといけない」と改めて考えさせられるきっかけになりました。その出来事自体は最悪でしたが、今思うとあれがあったから今があると思えるのでむしろ感謝してます(笑)
やっぱり、自分が何でも「いいよ、いいよ」って言ってて、流されるままやることによって、辿り着いた先が、自分が目指してる所と全然違ったりとか、もう嫌って言っちゃいけないところまで来たりすることってたまにあるじゃないですか?
特にカールモールみたいなお店って、決めごとをちゃんと自分の意志で決定しないと、そういう風になってしまうんだっていうことが分かって。
だから、どんなに小さなことでも、ちゃんと自分の意志を持って決定することの大切さを感じましたね。そういうのってやっぱり大きいですね。
せきねくんももう5年くらいになるのかぁ。
-傍から見ていて、マダムさんとせきねさんはお二人ですごく良いチームワークを発揮してるなぁと思います。
マダム:せきねくんはね、人間がよくできているんですよね。そして思慮深い。
私にとって、1人で色んなことをやっていて一番つらかったのが、誰にも相談ができないということだったんですよね。
別に、業務としてやらなきゃいけないことをやるのは全然できるんだけど、例えば「これ、どうしようかなぁ?」って思うことがあったときに、結局自分で決めるんだけど、誰かに伝えて、「いいんじゃないですか?」って言ってくれるだけで、精神衛生上ものすごくありがたいですね。
だから結果、いろんなやり取りだったりとか、やることは全部私がやるとしても、何かを決めるときに、誰かに相談できることってものすごく大事なことだなって思って。
今、週一でせきねくんと打ち合わせをしてて、なんとなく決めかねるものとか、ほんとに別に些細なことなんだけど、どうしようかなって思うことって、すぐに決められないってことはちょっと何かしら引っかかってるものがあったりとかするから。
例えば「これ、どうかねぇ?」って言ったら、「でも、前回こういう感じだったから、これでいいんじゃないですか?」「そうだよね」って言えることの、ものすごいありがたさ。ほんとありがたいよね…感謝しかないです(笑)
カールモール1階の棚
昭和に活躍した画家・中原淳一さんのグッズが、店内のレトロな雰囲気に華を添える
-他のスタッフさんだと、*みつおさんや、一時期は*蓮理さんもいらっしゃって、カールモールをお手伝いする人も増えましたよね。
*みつおさん…「みつお:the record man」として活動中の音楽家。カールモールではカウンタースタッフやブッカーを担当。
*山本蓮理さん…シンガーソングライター活動を経て、現在は自身の焼き菓子ブランド「夢見菓子」「絵空菓子」を立ち上げお菓子作家として活躍中。
マダム:お手伝いしてくれる人に関しては、カールモール側の人選が厳しい。絶対に私とせきねくんが一致で良いねっていう人でないと、お願いしないですね。
たまに「バイトしたいです」ってメールが来たりとか、カウンターに「私ここで働きた〜い!」って言ってくる人はいるんですけどね。
あとは時々、演者さん経由で「カールモールで働きたいって言ってる子がいるんですけど」っていう話が来たりするんだけど、基本的には、ちゃんと人柄が分かってる人じゃないとお手伝いはお願いしない。
やっぱりお金の取り扱いもお願いするし、あとはお店の雰囲気との相性だったりとか、そういうことを含めて考えます。
-確かに、そうですよね。
マダム:だって、そういうことって誰にでも頼めることじゃないし、けっこう無防備なお店じゃないですか(笑)
だから、変な話、お金とか持っていこうと思ったらいくらでも持っていける状況なわけなのに、誰も持っていかないのが、マスターは「すごいね」って言ってる(笑)
-確かに(笑)
マダム:それはほんとにすごいと思う。
-カールモールへの愛があるかどうかですよね。
マダム:あとはやっぱり、真面目さ。何回か会って、けっこういろいろ話とかすると、「この人ってすっごく真面目だな」とか、そういうのって分かりますよね。そういうところはすごく大事にしてるかな。
-ちなみに、カールモールでお仕事をされる上で、参考にしているお店や人、物事って何かありますか?
マダム:参考にしてるお店とかは特にないんだけど、常に新しいものを発信したいなっていう。
例えば、そういう意味ではライブハウスだと、四谷OUTBREAK!は、うちのお店と毛色は違うけど、面白いし、会社としてすごく良い会社だなって思います。
*四谷OUTBREAK!…2004年、東京・四谷にオープンしたライブハウス。“なんでもやっちゃうライヴハウス”を自称し、「1週間住み込みギグ」「ヒッチハイクギグ」などユニークなイベントを数々企画している。
あとは、「くだらないことにこそ、全力を注ぐ」っていうところは大事にしてます。
-でも、クオリティは高いですよね。
マダム:くだらないことって、低いクオリティの人がやっても、それって全然面白くないから。面白いことをやる上で、音楽的な部分で言うんだったら、やっぱり演奏力とかはあった上での面白いことだから、上手い・下手だけじゃないけど、最低限のところができてないのに、ただ「ほら、面白いでしょ」みたいなことをいう人は嫌いです(笑)
そういうのじゃなくて、やっぱり高いクオリティ込みのくだらないことを大事にしてるかな。
あと、人でいうとみうらじゅんさんとか。くだらないことにあんなに力を注いでて、でもそういうことですら仕事になることがやっぱり素晴らしいなと思いますね。
『本当に、支援してくれた1人1人に対して感謝しています』
6.お金についてどう思っていますか?
マダム:普段はあんまり考えないけど、やっぱり、「こうしたい」って思うものができたときに、すごく大事だと思うもの、ですね。
例えば、今、カールモールで思うところで言えば、出演してくれるアーティストみんなにギャラを渡して出演してもらいたくて。
でも、そのためには、やっぱりお店として安定した収入がないことには、そういうことってなかなか難しいじゃない?
だから、今カールモールとしては、安定した収入がほしい。それで、その収入の中から、出演してくれる人に対して還元してあげられるようにしたいねっていう。
あとは設備的な部分ももちろんそうだし、新しく何か物事を始めるっていう部分でもそうだし。
だからお金って、やっぱりちゃんと目的を持ったときに初めて必要と思うものですね。
さっきの、私が仕事をする理由とも共通するかもしれないけど、お金ありきっていうよりも、なんかやっぱり、目的があった上で、それに必要なパーツみたいなものかな。
-なるほど。今回のクラウドファンディングもそうですよね。
マダム:そうそう。クラウドファンディングのような、人がお金をくれることってないじゃない?「みんなすごいな」って思って。
本当に、支援してくれた1人1人に対して感謝しています。カールモールは会社だけど、常にお金が見える状態の職種だし、売掛があるとかそういうものじゃないから、目に見える売上で成り立ってるお店をやってる中で、想いに対してお金を出してくれるのはすごいことだと思うし。すごく、不思議な感じがします。
-今回のカールモールのクラウドファンディングは良いペースで進行していますよね。
マダム:*もう今、手渡し分を含めて26万円近く集まってて、ちょうど半分を超えましたね。なんとか達成したいです。
*クラウドファンディングは、結果的に手渡し分を含めて118名の方から計105万8千円の支援があり、目標金額の2倍以上を達成して成功を収めた。
なんだろ、お金をもらうことを達成したいっていうよりは、自分が掲げたからには、やっぱり、支援してくれた人たちにもきちんと還元できるように!という想いも含めて、達成したいなぁって思います。
『課長が書いた文章に、私がめっちゃ赤入れしてたの』
7.音楽活動や、カールモールでのお仕事をやっていなかったら、何をやっていると思いますか?
マダム:会社で出世してたんじゃないかな(笑)
-確かに!
マダム:何かの会社で出世して、今だったら部長とかになってたかな。
-今まで経験されたお仕事のうちの、どれかを続けていたとしてっていうことですよね。
マダム:どの仕事でしょうね?販売とか、アパレルとか、メーカーとか、分かんないけど。ほんとにその仕事だけを、ずっとやってたら、出世してたかもしれません。
-カールモールの前にやられていたお仕事の中で、一番手応えがあったり、印象に残っているものってありますか?
マダム:やっぱりホテルの仕事はすごく楽しかったかな。私はホテル業の専門学校を卒業して、ホテルで働きたいなってずっと思ってて。それで、働き始めて、ベルガールやったり、フロントやったり、予約係やったりしてました。
けっこうね、面白い人がいっぱいいる職場で。私、フロントから予約課に何ヶ月かヘルプで行ってたときに、それがちょうどインターネットが普及し始めた頃で、定期でメルマガを配信しようっていう企画があったんですね。その企画をやってた課長さんが、すごく面白い人で。
美大を出てて、すごく絵が上手くて、なのに英語もペラペラで、パソコンとかにも超詳しくて。なんか飄々としてるんだけど、すごく面白い人で。その人がメルマガの文章を書いてたんです。
ちなみに、働いてたのがディズニーのオフィシャルホテルだったので、送り先は割とポップな家族層が対象で。そのとき、課長が書いてた文章に、私がめっちゃ赤入れしてたの。
-すごいですね(笑)
マダム:「課長、これダメですね。ここ、もっとこうした方が良いですよ」って言ってたら、課長から「もうさ、担当変えようよ」って言われて。
それから、月に1回、私がメルマガの原稿を書くことになって。新入社員の「舞浜舞子」っていうキャラクターがみんなにメルマガをお届けするっていう設定で、ものすごく悪ふざけした文章を書いてました(笑)
そしたら、けっこう評判が良くて!お客さんから、「舞子ちゃんは…」ってファンレターが届いたりして(笑)あと、お客さんがフロントに来て、「舞子さんってどの方ですか?」て聞かれたりとか。けっこうそういうのがあったなぁ。
ホテルの仕事って、接客業なんだけど、その職場ではすごくクリエイティブな部分に関わることができて、それがすごく面白くて。それと、文章を書くことがすごく好きになったきっかけの一つでしたね。
-それは面白いですね。
マダム:そうなの。それで、文章を書くのが好きだったから、メルマガ以外にも、社内報とか、同期の子から「原稿書かなきゃいけないんだけど、ゴーストライターやってくれない?1回飲みに行くの奢るから」って頼まれたりして。
それで、その子に「入社してからの自分がすごく頑張ったこと」とかのインタビューをして、「なるほどなるほど」って原稿を書いて、社内報に載って、「みんなが良かったって言ってた」ってその子から言われて(笑)
『みんなが「今日も良い日だったね」って言って、帰ってもらえるようにしたい』
8.カールモールでお仕事をする上でのこだわりはありますか?
マダム:カールモールでお手伝いしてくれる人たちに言ってるのは、全員に気持ち良く帰ってもらうこと。それが一番。
全員っていうのは、もちろん演者さんもそうだし、お客さんもそうだし、働いてる人も。みんなが「今日も良い日だったね」って言って、帰ってもらえるようにしたい。
っていうのと、あとはさっきも言ったけど、くだらないことほど全力を傾ける。その二つかな。
-大事ですよね。そして、先ほど聞いたホテルのお仕事で経験されたことに、ルーツを感じますね。
マダム:やっぱり、ホスピタリティみたいな部分はすごくあるかな。私、ライブ中とかイベント中に、いろんな人をものすごく見てるんですよね。「あ、あそこ灰皿ない」とか「あの人いつも演奏前にお水飲むからお水出さなきゃ」とか。そういうのが、気になっちゃう。別にそれしてるから偉いでしょ、とかじゃなくて、すごく気になっちゃうから。すっごくキョロキョロしてる(笑)
-正に、ホスピタリティですよね。
マダム:別にそれがお金に繋がることじゃなくて、もてなしですね。「お店に来てくれてありがとう」っていう意味でのもてなし。