ootee

経験が生んだ 一線を画すooteeの押韻

タイトル:ステロイド

※本人の楽曲を聞きながらインタビューを読めます

2015年より東京、埼玉を中心にラッパーとして活動するooteeさん。
数々のMCバトルでも活躍し着実にその名を挙げていっています。

巧みに韻を踏み、核心を突いたそのリリックは”権力を自己都合で使用する人”にとって耳が痛いでしょう。日本で生活を営む人々は一度、彼のメッセージに触れてほしいといった気持ちが筆者にはあります。

そのメッセージは机上の空論ではない実体験に基づいています。それはまた、”普通に暮らす人々の生活”からそう遠くない気がします。良薬口に苦し、リアリティのある話に「暮らしていくこと」「ラッパーとしての姿勢」をぜひ感じ取ってみてください。

『だから、ギターをやるというのは革命でしたね』

<インタビュー>

1.なぜ音楽をやっているのですか?

ootee:ずっと何かを表現したいというのはあって、それって多分、結構ほとんどの人が何かを表現したいというのはあると思っていて。


音楽とかアーティストとかみたいなものって、絶対何かのバックボーンみたいなのが、それこそ「すげえ昔悪かったです、今も悪いです」「何かしらの暗い過去やハンディキャップを持っています」みたいなキャラが立っていないと、表現って通らないみたいな風潮、僕あんまり好きじゃなくて。


普通に、昔から普通。ええと、普通じゃないかもしれないんですけど、すごい良いかと言われると…笑。
普通なんだけど、自分の思っていることをやっていくのであれば音楽かなと思う。自分がやりたいのはそういうことなのかなと。


-若いころから何かを表現したいというのはあったんですか?


ootee:そうですね、一番初めは何を表現したのかというと…始めるきっかけ。始めるきっかけは中学校にあがるときに、ちょうどその頃、GLAYとか、そういうバンドがすごい流行っていて、それで先輩がギターとかバンドをやっていて「やりたいな」と思った。
それで親にギターを買ってもらおうとしたことがあって。


うち自営業であんまりお金がなかった。ただ、全然明日のご飯がないとか超貧乏ってわけでもなくてすごい満足に育ててもらってたんですけど、ただお金はないんですよ。借金めちゃくちゃあるし。


小学生の頃から友達に噛みついたりとか、石を投げていたりとか、若干、一般家庭の荒い子供みたいになっていたところがあって、ギターが欲しいと言ったら、「バイクに乗らないと約束するんだったらいいよ」と言われて、その時、めちゃくちゃ暴走族でみたいなノリの奴らが多くて、「絶対コイツもバイクに乗るだろ」と親からも思われていて。


「バイクに乗らないと約束するんだったら、いいよ、買ってやる」と言われて、「わかった、約束する」ってなってギターを買ってもらったのが初めて。


-確かご出身は群馬とお聞きしておりますが、小学生、中学生は群馬で育ってきたんですか?

ootee:そうですね。18まで群馬で。


-群馬のどのあたりですか?差支えなければ..

ootee:群馬の中でも、すごい田舎の下仁田町。ねぎとこんにゃくのところ。マジで何もない。
例え話で、「家からコンビニまで~分」みたいな話をよくすると思うんですけど、家からコンビニに行ける範囲が徒歩20分ぐらいのところ。それもできたのが小学2,3年生とかぐらいで。それまでは親に車に乗せてもらった帰りに「コンビニあった、コンビニあった」みたいな。コンビニが”トイザらス”ぐらいの感覚でしたね。


-笑

ootee:本当にそんな田舎で。


-ギター始めたり、暴走を始めたり、結構賑やかな感じがしますね。

ootee:田舎なりにやっぱり荒れているんですよね。埼玉とか東京に来るようになって、ここに住んでいる子供たちって、服を買いたいと思ったら自分で渋谷に行けるし。
ゲーセンも家の近くで団地もいっぱいあるし、こういうところで昔から育ってきた人もいるんだなって。環境が全く、国が違うぐらい違うんだなって。


今はインターネットがどうこうとかありますけど、都会にはこういう遊び場があったんだなって。
自分のところは何もなかったんですよ。
チャリで色んなところ走り回って、友達の家に行ってゲームやって、秘密基地やったりとか、川で泳いだりとか。後、銛で魚を突いたりとか、小学生の遊び方がね。


詩人の三木悠莉っているじゃないですか。三木悠莉の家の下が川になっていて、「竹に針をつけて魚を釣る」みたいな、保育園とか小学生とか、本当そんな遊び方でしたね(笑)だから、ギターをやるというのは革命でしたね。

「ブラックバスを釣り上げるootee」


-そこから、表現の道に入っていった感じなんですかね?

ootee:おそらく、広く見たときにヤンキーグループの中の一味の一人なんですけど、つるみたくなかったんですよ。なぜかというと、呼び出しを受けるのが嫌なんで。


中学生の時とかには、通学路で普通にタバコとか吸いながら通っているんですけど、それでも「つるんでいなければわからないでしょ」みたいな感じで。ちょっと、変わっている感じでしたね。


中学、高校ぐらいの時とかは、本当に変わっていると思う。中学の時、ギターはみんな、有名な曲のギターソロとかから始めるんですよ。自分は全然違うくて、普通にコード、スケールを一日中弾き続ける。マジで基礎の練習。
キャッチボールを一日かけて、ずっとやっているみたいな。


-あの憧れの投手のフォームを真似して、とかではないんですね。

ootee:です。一番初めの教則本に則って。
だから、そういう性格なんですよね。やってみないと、絶対嫌だなって。そこから、多分、自分で歌詞を書くとかやってましたね。見せられるようなものじゃないんですけど。

『面倒くさい遠回りだけど、韻を踏んでいるから格好よく、かつ、面白さもあって、最終的には全部が届いている』

2.創作の方法について教えて下さい

ootee:ほとんど自分で作っちゃうので、トラックとかも自分でやるので。トラックがいわゆる8小節、HIPHOPでワンループっていうんですけど、8小節を作った結構なストックがあって、それをたまに見返して「こういう曲書いたら面白いな」というのがある。
もしくは曲、J-POPとかでもいいんですけど、J-POPだとコード進行、それこそHIPHOPだったらトラック、音の方に耳と頭がいってしまうタイプで。


聴いてきた曲に、トラックはちょっと影響されているかもしれないんですけど、歌詞とかって基本は影響されなくて、イマジネーションがポンと来た時に、そのトラックのインストを探して、それに乗っけてまず書いたりします。既存のトラックにバァーンとのっけてみて、自分が書いた後に考えが変わっていくんですよね、それでまた創っていく、というのを繰り返してますね。


ライブとかでも毎回トラック変えてやったりとかで。


「左からootee、エイジ(GET DRUNKERS)、DJ RIND 池袋knotにて」


-抽象的というより、具体的で強烈なメッセージの曲が多いイメージなんですが、トラック作成時もトピックは意識されているんですか?

ootee:トラックの部分はあまりイメージとかはなくて、かっこいいなと思ったネタをサンプルしてチョップして、叩いてみて創っていく感じなので、あんまりトピック考えていないかもしれないですね。


トラックの方は創る前にはイメージがないので、アーティスティックでは全然ないですね。思ったままなので、この音でこれを表現しようみたいなのはあんまりないです。トラックとリリックは別個ですね。


リリックに関しては、結構やり方を変えて、書き方を変えているかもしれない。何個かあるんですよ。例えば、こういう内容のラップをしてみたいなってなった時に、インストを流して一回フリースタイルでバッーと。うまい下手とかじゃなくて、詰まってもいいし、噛んでもいいし。それ録音して聞いてみて、書きだすみたいなのもあります。


歩いていると、思いつく言葉とかってあるんですよね。それを本当に一行ぐらいずつ、めちゃくちゃ携帯に溜まっているので、それをひっぱり出してきて、最後まとめるみたいな。やり方とかは固定していないですね。


-あれだけ韻を踏んで、きちんと意味が通っていて、”踏むための韻ではないクオリティ”が常に続く、ずっとパンチラインが続くと思えて、そのバランス感覚が驚異的ですよね。

ootee:それは嬉しい言葉ですね。思った時に、韻が出てくるのを溜めておくのがいいかもしれないです。例えば…タイムリーなのだと、コロナウイルス「買い溜め・転売、外為・限界」みたいなものを、思った瞬間に書いておくんですよ。それを溜めておく。


自分子供がいるんですけど、子供と遊んでいてその時にふわっと言葉が出てきたら、やさしい言葉を書く。だから、全然温度感が違うものが溜まってくる。それを後からまとめていくというのはあります。


後は、賛否両論あると思うんですけど、僕は絶対韻を踏みにいくんですよ。絶対、踏みに行きます、自分は。


-韻を絶対に踏みにいく理由とかあるんですか?

ootee:聞いてきた音楽がそれっていうのもあるんだけど、三善善三さん、今、三好出さん、SECRET COLORSの。あと、ラッパ我リヤとか、キングギドラ、Kダブシャインとか、中高の時にあのあたりをすごく聞いていたので。韻を踏むとこんな面白くなるんだ言葉って。


良いこと言おうと思ったら、いくらでもいいこと言えるんですけど、韻を踏むことでちょっと格好つけて。恥ずかしさを格好よさでカバーしながら、言いたいことを恥ずかしげもなく言っちゃっているところが、格好よさなのかなと。


普通の人がオブラートに隠している感情をJ-POPとかのアーティストは曲にして言うじゃないですか。それで共感を得たりする。
HIPHOPミュージックは恥ずかしさを言葉遊びでごまかして、”ちょっと遠回しから言うことでわかる奴には響く”みたいなのがいいところなのかなと。僕は韻を踏みたいです。


HIPHOPって「あなたのことを愛しています」とは、言わないじゃないですか。「あなたのことを愛しています」っぽい内容で韻を踏むことですごい遠回りになるんですよ。
その遠回りが、面倒くさい遠回りだけど、韻を踏んでいるから格好よく、かつ、面白さもあって、最終的には全部が届いている。それがすごい。

『本で読んだのって「君主論」って本ぐらい、ニッコロ・マキャベリの本』

3.好きなアーティスト、憧れのアーティストを教えて下さい

ootee:HIPHOP全然関係ないところなんですけど、僕ずっとGRAPEVINEというバンドが好きで。GRAPEVINEが好きです。HIPHOPと全然関係ないですね。好きなアーティスト、難しいですよね。


-中学生の時とかに聞いた物は自分の糧になりますよね。

ootee:そうですね。後はなんですかね。
ブッダブランドとか、みんなが聞いている、日本語ラップとかは全部聴いていましたね、全部かわかんないけど…


洋楽とかは、本場のそれこそアメリカのHIPHOPとかすごい好きなんですけど、わかんないじゃないですか。すげぇどシンプルなんですけど、英語は何を言っているかわかんない。
格好いいというのは大前提でドーンとくる。「格好いいんだな」と思うんですけど、言語がわかんない分、それ以降はあんまり中まで刺さらない。良い意味で、かっこいい以外はわからない。


-GRAPEVINEはいつごろからお好きなんですか?

ootee:中二病の中二ですね。GRAPEVINEはめちゃめちゃ衝撃的で、ブルースに近いのかな。歌詞の内容とかが一回で理解できることはなくて、しかも最終的に理解できやしないんですけど。そこから高校生になって、20代になって、30代になって、「あっ、これこういうこと言ってたんだ、なるほどね」って、10年超えて出てくるってすげえなと思っていて。


その時に書いている田中さんというボーカルの人が、20,30で書いているわけじゃないですか。それがその時になると分かってくるというのが、すごい面白いなと思って。


-ミュージシャンに愛されるバンドですよね。

ootee:あるかもしれないですね。関係ないかもしれないんですけど、GRAPEVINEがラジオをやっていて、僕がバンドというかコピーをやっていて、それでギター、当時TAB譜でバンドスコアみたいなのがあるんですけど、そこに書いていない音があったんですよ。
絶対ギターの音なんですけど。「これどうやって弾くんですか?」ってGRAPEVINEに聞くしかないんだろなと思って本人に聞いた。ラジオで読んでもらえたんですよね。そのぐらい好きですね。


-ラジオとかもよく聞かれるんですか?

ootee:自分サブカル的な要素も結構あって、「モーニング娘。」の影響は結構大きいですね。
多分オタク気質みたいなところもあって、小5,6はモーオタで。群馬は電波が悪いんで、モー娘のラジオを聴くためにラジカセのアンテナを思いっきり伸ばして、家の外にまで出したり、網戸のアルミの枠にくっつけると電波がとれるみたいなのをずっとやっていましたね。


ラジオって面白いな。深夜、ラジオをかけながら寝たりとか。深夜のラジオの世界って面白い。


独特の世界があって、なんでしょうね。すごくエモくないですか。かかる曲によってその場が染められる。
目を閉じると自分が今何者でもなくて、何もしていない状態でいれるじゃないですか。その時にかかる曲のすべての世界を、けっこう暗くして聴いてみると目を閉じているからその場全部に広がらせるみたいなのがあって。


で、終わったら「お送りしたのは…」と淡々と言って、ワーとかキャーとかなくて、めちゃちゃ良いなって、はまりますね。


-アイドル系も好きだったり、バンドも好きだったりとお聞きしていますが、音楽以外の作家、本とかはお読みになるんですか?

ootee:本、読めないんですよ。3ページとかなると面倒くさくなっちゃって。勉強をしてこなかったんで、習慣が本当になくて。本で読んだのって「君主論*1」って本ぐらい、ニッコロ・マキャベリの本。


それも超ミーハーなんで、2pacが刑務所の中にあった「君主論」と出会って人生を変えたって、それを何かのネット、ネットじゃないな、それこそiモードでみて、そこから「君主論」だけは一回全部読んでみようと思って。


それが読み切った本ですね。後は、野村監督の本を読み切ったことがありますね、「エースの品格」。
そうですね、「エースの品格」と「君主論」ぐらいですね。


-リリックにカタカナをよく使われているんですが、海外とか行かれたりするんですか?

ootee:「海外に行った」という表現は正しくないと思うんですけど、シアトルと台湾なんですよね。


後、スペインにポーンと一人で。前の前の会社で、働きまくっていたので有給がばっちり残っていて、その辞める時の有給で思い立ってスペインに行った。何もしゃべれないんですよ。でも、全然ありだなと。


「スペインのバルセロナにて撮影」


韻を踏もうとして、こういう韻があったらいいなと思うと意外とあったりするもんで、実はインプットされているんですよ、英語も。実はインプットされているんだけど、別に意識をしていないだけで。
ある韻を踏みたいと考えた時に、英語でそれっぽい言葉あるか当てずっぽうで考える。調べる…あるじゃん!って。しかも、当てはめたら意味、通ったじゃん!そんなのばっかりやっています。


-「実はインプットされている」というのは、無意識を掘りだしてくるみたいな感じですね。

ootee:そうそう、バイリンガルとかだと絶対無理な言葉の出し方。英語わかったらもっと絶対的な正解を出せるじゃないですか。そういうのじゃないんですよ、だからこそ。

*1…1532年に刊行されたニッコロ・マキャヴェッリによる、イタリア語で書かれた政治学の著作。


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