ootee

タイトル:発言権2020(Mashup What’s Golden)

※本人の楽曲を聞きながらインタビューを読めます

『真っ黒のフルスモーク車の列があって、それを間ぬいながら入っていく』

4.ラッパーとしての活動を始めるきっかけを教えて下さい

ootee:高校生ぐらいの時から友達がラップをやっていたのがあって、その友達のライブを見に行くとかで、高校生ぐらいからクラブに行っていたんですよ。クラブと言っても高崎のブラックチャーチ、後は伊勢崎のLUVぐらいしか主なところはなかったんですよ。


中学生でバンド好きで、ドラゴンアッシュを聴いて、RIZE、山嵐とたどって、ラッパ我リヤ、オジロザウルス、Zeebraを知ったんですよ。
中学、高校ぐらいにクラブとか友達のライブとかに行くようになって、HIPHOPを知って、その時は、今みたいにアーティストはレジェンドみたいな感じじゃなくて、「流行ってきたよね」ぐらいなんですよ。


伊勢崎のLUVって郊外にあるんですけど、超でかいんですよ。DABOのリリースライブとかがあるとなると、featでTOKONA-Xが来たり、普通に豪華なメンツがくるんですよ。


その前座で友達がライブしていたんです。その時って、いなかっぺなので都内の方はどうなのか知らないんですけど、群馬、怖いんですよ。めちゃくちゃ怖くて、本当に怖くて。自分も結構割とがたいもあってイカツめの格好して、当時はある程度怖く見えるかもしれないと思うんですよ。


でも、そんなレベルじゃなくて、群馬の怖さって。HIPHOP、トランス、Techo系も一緒にイベントをやっていて、そっちに来る人がナンパ目的だったり、もうやばいんですよ。飲酒運転とか余裕の時代だったんで、クラブの入り口、エントランスの前にセルシオ、ベンツ、ハイエース、ベンツ、ベンツ、みたいな。真っ黒のフルスモーク車の列があって、それを間ぬいながら入っていく。


中からB-BOYが出てくるわけではないんですよ。普通にスーツとか、よくある今も格闘家の人が黒いTシャツぱつぱつ、デニムで金髪みたいな。そういう人たちが「うぃ」みたいに出てくるんですよ。
「絶対これは無理だ」と思いながらいたので、その時に「その界隈でやりたいな」と思い歌詞とかも書いているんですけど、自分がMCをやるってことが許される世界だと思ってなかった。


絶対ダメだって。友達でイルブラストという今もやっているんですけど、当時IBCという名前でやっていて、「こいつら相当気合い入れてやってんな」と。多分ノルマとかもすごい、半端じゃないノルマだったと思うんですよ。


そこから社会人になり、別に音楽をやるわけもなく、普通に過ごすんですけど、20代後半の時に転職で川口に住むことになり、あんまりツイッターとかをやるタイプではなかったんですけど、インスタとかでリア充な投稿をしていたタイプの社会人になりつつあったんですよ。リア充な投稿を続ける会社員という感じで。


「リア充時代」


すごい話飛んじゃうんですけど、震災があって、その時にツイッターが一番情報が飛んでくるなと思って、今や誤情報ばっかりですけど。震災の時にツイッターをやって、アカウントをそのままにしていたんですよ。


「今、ツイッターってどういうのがあるんだろう」と、蕨とか川口の情報を調べていて、「蕨サイファー」というのをたまたま見かけて、サイファーってなんだろうと思ったら、喰吐がやっていた。
蕨サイファーが家の近くの公園でやっていて、「へぇ、サイファーってやっているんだ」と思って。初心者でもOKって書いてたんでいったのが4,5年前ぐらい。


始めて行ってそれでラップして「自分でラップやっちゃっていいもんなんだ、今や」と思って。ツイッターとかみたらサイファーって結構やってるんだと、やっていいんだと。それで始めた。


-経緯が独特ですね。

ootee:群馬のGEORGE TIGER ONEという、マジでめちゃくちゃ格好いい、群馬のレジェンドラッパーの方ですけど、その人と話ししたときも、「そうだよな。あの時代じゃラッパーできねえよな」「わかる、わかる。お前もやれるようになってよかったよね」ってそういうのを笑いながら話していて、やっぱ、ジョージさんもそう思っていたんだなと。


-そういう時代だったんですかね。

ootee:群馬って怖いんですよ、田舎なんで。怖いのハードルは結構高いと思います。


-ooteeさんはなんだか、何人分もの人生を歩んできた感じですね。

ootee:変な人なんですよね。


-そこからトラックの作り方を勉強した感じですか?

ootee:音楽はやっていたんで、結構バンドとか一度やっちゃうと、結構そのままなんですよ。作り方ってそんなに変わらなくて、MPCとか買うじゃなくて、一回やってみようから入るタイプなんで、iPadのiMPCというソフトがあるんですけど、それでやっちゃっています。それと、あとGarageBand、全て無料みたいな。


アップロードしている曲とかもiMPCのソフトで作ったトラックにGarageBandでRecしてエフェクトかけたりして、マイクだけ外付けの6000円ぐらいのなんですけど。
こだわりじゃなくて、お金をかけらんないなと思って。家庭があるなと思って、理由はそれだけです。できちゃうんだったらいいじゃないと思って。

『ナルコレプシーっていう、そのまま、ストンと落ちるのを3年くらい経験して』

5.今後の目標を教えてください

ooteeミニぐらいのサイズにはなると思うんですけど、アルバムを今年。先輩のSAG.MICさんというラッパーがいて、その人と2年前ぐらいから録っていたやつがあって、それを2人とも同じタイミングで家を建てる、子ども2人目が生まれる、転職するみたいになって、全然出せていなかった。


-共作という形で?

ootee:そうそう、ダブルネームで。トラック、一曲だけ、M1NAZUK1からトラックもらったんで、それ以外は自分のトラックでそれを出して。


あとは一枚ソロでも出したいですね。出すと言っても本当にストリート販売でやっていきたいなと。曲、聴いていただいたらわかると思うんですけど、通らないんですよ。サブスクとかストリーミングとか。結構過激な政治的表現とかあって、審査通らないかなと…面倒くさいことやるより、イベントで買ってもらうとかのほうがいいなって思っているんです。


後は、目標というか、30半ばになるからこそ、売れるということはそんなに楽じゃないとわかっているんで。
これ音楽でも仕事でもそうだと思うんですけど、「自分だけの実力」とか「素晴らしいものを作っている」とかが全て売れるものではないというのがわかるので、表に出すために頑張ろうというより、自分がやりたいこと、変化をさせながらライフワークにしていきたい。


-音楽以外では何かありますか?

ooteeないかもしれないですね、安定ですかね…それはちょっと違いますかね…ただ、考え続けられる人でいたいかなと。
僕、本当にお人良しの日本人文化が嫌いなので、無関心、無思考というか…ずっと、こう考えて、それを吐き出していく。幸せなリリックもそうだし、考え続ける。仕事でもそうですね。「既定路線に乗っている感じがするから嫌です」と言って、最近も役職を降りました。


-そういう考え方のルーツとか影響を受けた人とかいるんですか?

ootee:誰ですかね。あんまり人から影響を受けない、そうそう影響を受けないかもしれないですね。本当に変わっているので、自分の中でずっと何かを考えている、それが特徴ですね。


他人からすごい会心の一撃みたいな言葉をもらって「そうなんだ」と思うことはあるんですけど、後々まで影響するほどの残り方はしないですね。「いいこと言ってんなぁ」くらいの感じです。


-考える人は影響を受けやすい気はしますけど、そういう感じではないんですね。

ooteeちょっと重たい話なんですけど、一回ぶっ壊れて。
元々、めちゃめちゃ考える人間で、それを受け止めすぎる、感受性が強すぎるタイプの人間だったんですけど、10代後半から20代前半ぐらいの時に欝をやってしまって。一回、本格的にぶっ壊れて日常で自分の中で負担になる言葉を受けると、ナルコレプシーっていう、そのまま、ストンと落ちるのを3年くらい経験して。
そこから何か変わりましたね。「冷静に考えたら、そんなに自分に関係ねぇじゃん」って、すごい客観的にみれるようになって。


「このまま、こういう風に壊れる人間なんだ」って、思っている時点で損で、だったら死んだ方がいいって。ただ、死にたいとは思わない。


「一回しか生きれないから楽しいほうがいい」という歌詞とかよくあるじゃないですか。その歌詞に影響されているわけでは無いんですけど、わかる。だから昔から表現者って、こういうこと言っているんだと、その意味がようやく分かって。「楽しく生きる」って聞くと、「またお人好しなことばっかり言いやがって」と思っていたんですけど、単純にそういうことなんだと、考えすぎていたんだって。


結構変わるようになりましたね。「やりたいことやる、やめたいことやめる*2」じゃないですけど、まさにその通りなんですよね。


*2…DOGMA,漢 a.k.a GAMI,LIBROを客演に迎えたPONYの楽曲「SUKIKATTE」のリリック。

『結構難しいことです。普通の生活を成り立たせるって。そんなのが根っこにあります』

6.お金についてどう思っていますか

ootee:お金はめちゃめちゃ大事だと思います。
人生体験みたいな話になっちゃうんですけど、高校を卒業したときに、高校はほとんど野球で行ったみたいなもんで、中高、本当に勉強していなくて、一番笑えたのが高校一年生の期末テストで、数学のテストで2点とかだったんですよ。


分数の足し算から始まるんですよ。分数の足し算から、分数の掛け算があって、それでたかし君が何キロで歩いたとかの問題なんですけど、まったくわからないんですよ。たかし君が何キロで歩いて…とか、今でも意味がわからない。
分数の足し算も今でも意味がわからなくて。


分母を揃えるとか、aとかbとかあるじゃないですか。意味が分からなくて、とくにaとかbとか「数字じゃねぇじゃん」ってところで、思考がずっと止まっている。


分数の掛け算はそのままかければいいだけ。2×3 が 6 と 3×3 が 9 みたいな。だからそれだけ解けて2点。それがあって、お金ないし、大学とか専門学校に行く道はないと自分でよくわかっていた。じゃ、どうやって働こうかってなった時に、中途半端な働き方をすると、多分自分は良い方向の大人にはならない気がして。それこそ、コンビニの店員にタメ語で話す、煙草ポイ捨てとかするオッサン像…それは絶対ダサいなと思って。


スーツを着たいと思っていて、ネットとかもあるわけではないので、それこそ調べるにはiモードしかない。なので、学校の進路相談室に行ったんですよ。紙の求人票見て「めっちゃ給料良いじゃん」と思ったのが、最大手の消費者金融だったんですよ。


そこを受けようと思って、そしたら進路相談の先生にめちゃくちゃ笑われて、高校2年の時に「お前さぁ、自分の学力分かっている?」みたいな。野球部だったので追試の答えも全部教えてもらって、それを丸暗記してようやく2年生になれた。
同じの追試を受けたやつ、全員辞めているみたいなところで。


「分かっているでしょ。お金の会社、わかる?これ、お金の会社、計算できる?」と言われて、「いや、いけるっしょ。いける、いける」みたいな感じで、募集要項に気持ちを強く持てる人って書いていて、「俺、野球部だし」って。「そういう事とは違うんだよ」ってすごい諭されて。


「就職も何回もできるわけじゃないんだからちゃんと選びな」って。
「いや、絶対ここ受ける」。しかもスーツ着れるし、絶対スーツ着たい。


その時にすでに1人受ける子が決まっていて、しかも学年でめちゃくちゃ頭がいい女の子で。で、その場で先生が電話してくれて「どうしても受けたいと言っている、野球部の気合い入っている男がいる」と。募集1名だったんですけど、もう1人だけ受けさせてもいいかって。で、OKで。


受けに行ったら受かったんですよ。1名だからその女の子、落ちちゃって。


後から聞いたら入社試験ほぼ0点だったんですよ。言語、非言語みたいなのをやったと思うんですけど、言語の方はまあ、普通より下ぐらい。非言語は0点。


「じゃあなんでとったのか?」後々出世してから人事と仲良くなって聞いたら「面接の対応だ」って。当時面接なんか当然したことなくて、大学生とかと混じって5対役員3ぐらいの面接だったんですが、みんな緊張していてすげぇなと思っていて。


「わが社に入って何やりたいですか?」って質問で、「はい!わたくしは、〇〇です!」とかみんなキリッとした感じなんですよ。で、自分は受かると思ってないし、面接のルールとか知らないんで「カッコ良さそうなんで、自分もそっち側でその質問したいです」って言ったんですよ。


そう言ったら場が凍り付いて…俺そんな悪いこと言った?って。今考えると頭おかしいんですけど、その時は別に自分としては普通で。そんな感じで無事会社に入って。


そこに入って7年ぐらい働いていたんですよ。もう、お金ない人たちと毎日接するわけなんで、何回も借金取りに行ったり、明らかに親切心でできる仕事ではないんですよね。自分がとにかく成果をあげて上にいって稼いで。ちょうどぶっ壊れたときぐらいで、20代前半の僕の年収1000万円ぐらいだったんですよ。


働きすぎて、めちゃめちゃ寝不足とかで、それのめりこんでやっちゃたんで、だからぶっ壊れたんですけど、「お金、ちゃんと計画的にやらないと結果こうなるんだな」っていうのを毎日見るんですよ。毎日金に関するやり取りをするんです。金の失敗例を日々見続ける。金の失敗を見て、さらに煽るのがライフワークなんですよ。


金貸しの経験が一番強烈ですね。だから、お金は大事ですね。きれいごと言っても結局やっぱりお金いるんですよ。死んじゃうじゃないですか。普通に死亡診断書とか見るんですよ、めちゃめちゃカオスですよ。


当時そこで支店長をしていて、全ての業績自分の責任なので、全てを背負い続けていて。朝出社したら電話が鳴って「なんだこの数字?おい!!」って、そこから一日中詰められ続けて。毎日…感覚麻痺してましたね。


そんな中仕事していて、郵便で見慣れない茶封筒が来るんです。死亡診断書。これ何回もあるんですけど、開けると手紙と死亡診断書が入ってて、手紙は殴り書きで恨みつらみが書かれていて、死亡診断書は発見時の図も状態も詳細に書いてあるし、何が死因ですって。


それが届くとどうすると思います?


名前とかだけ確認して、延滞がある人か調べる。それで、延滞がある人だと「よっしゃぁ!」とか言って…それで回収なんですよ。
死んじゃうと回収。実際は保険が負担するんですけど。それでガッツポーズするんですよ、「この書類本社まわしといて」って。今思い出すと狂気です。ただその当時はこっちも生きるか死ぬかだった。事実精神ぶっ壊れてましたし。


そのメンタル状態でやっていたから、自分はそういう金で苦しむ人生にはなりなくないなと。平凡な幸せ、税金を収めながら平凡に生きることに対しての尊さが結構あって。そのくせ、口では税金とか批判する。自分がそうやって素直に税金を払うダサさを感じないのはそこかもしれない。
結構難しいことです。普通の生活を成り立たせるって。そんなのが根っこにあります。


取り立てでよくあるのが暴力沙汰。包丁を出されたり、田舎だと鎌持って追いかけられたり。もうそれすらも慣れてしまって…。
「これで刺してもお金になんないから。刺す覚悟あるならその覚悟で金策してきてくれ。」って、冷静に対応してました。金が回収できるなら、二、三発くらい殴られても良かった。その当時、手段は問われない。とにかくより多く金を貸して、より多く金を回収すれば自分の金になるんです。
そういうのが毎日だったんですよ。


何にしても、お金は大事です。


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