小林大悟

※1ページごとに、本人の作品をご覧になれます


『逆さ遊泳』

『絵本という表現自体にすごい興味があるし、自分の軸にしたいと思う』

5.今後の目標を教えてください

小林大悟:社会的な目標で言うとしたら生活を安定させたいですね。
やってみたいことはたくさんあるんですけど、たくさんと言いつつ絶対に手を伸ばさない部分はあるので、自分の中で限られた範囲があるので、それをやりつくすというかちゃんとやりたい。

すごい近しいので言うと、イタリアのボローニャで世界絵本原画展をやっていて、そこに挑戦したいというのは今年の目標。絵本に対する欲望みたいなのがすごいあって。

一回、絵本を出版してこういう道も自分にはあるんだという風に思った時期もあって、今思うとビギナーズラックだったんですよ。でも、賞とかもらうと期待しちゃうじゃないですか。そうそう世の中うまくできていないというか、1個獲ったらぽんぽんといけない、むしろ熱意のないままに獲ってしまったからこそ引きずってしまう。たまに言うんですけど、テレビの一発屋芸人の気持ちがよく分かります。ブームになってしまったからこその次への葛藤。

「大島絵本館より出版された『せんのりきゅう』」

絵本作家になりたいかはさておき、絵本という表現自体にすごい興味があるし、自分の軸にしたいと思う。一時期は1作目を引きずって全然描けなかったんですけど、もうちょっと自分の中で降ろすというか、チャレンジし続けたいというか。作っているのは同じ自分なんですけど、これに関してはとにかくやりたいように俺がやるという気持ちを持って。

1作目で賞を獲ってしまったから「次は何を描くの?」とか「これからどうするの?」みたいなの聞かれるけど、それは一回うるせぇということにして。建前としては絵を描いている美術作家なので、建前というか講師とかもやっていたりしているから、こっちは隠れ蓑的にすすめる。目標というか野望ですね、「もう一回やってやるぞ」みたいな。それで名を挙げたいとか見返したいとかとは違うけれど、炎は途絶えていない。

-絵本は何がきっかけで興味を持たれたんですか?

小林大悟:すごい意志のない感じなんですけど、大学の時に絵本サークルに入っていて、あまり活動はしていなかったんですけど、文化祭とかで絵本サークルのブースがあってその時だけ描き殴って作品をだすみたいなことをやっていて。

そもそも僕、絵本きらいだったんですよ。絵本に対する偏見がすごくて。

-なぜ、嫌いだったんですか?

小林大悟:ハートフルな感じとか自分の手に取れる領域にない、特に男の人なんて小さい頃に読んでいたかもしれないけど、大人になって絵本に触れる機会なんてない。正直、独身で絵本に立ち返るなんてないじゃないですか。

ただ同級生の子に「君の絵は絵本に向いている」と言われて「そうなんだ、じゃあサークルに入ってみよう」と軽い気持ちで入って、そこで色んな絵本を知ったらすごい面白い世界で自分の絵本知識が狭いものだったと気がついて。文化祭とかのタイミングで定期的に創るようになって、卒業して働き始めて絵も描いていくつもりだったけど、絵本も描きたいなと思って。

「小林さんが講師を勤める子どもの作品」

職場が美術の学校でそこに絵本のコンペ募集があって、一週間ぐらいかけて描いてとりあえず送ったら、まさかの大賞を獲ってしまった。20回ぐらいやっている、そこそこ歴史のある公募展で今まで受賞していた作品はハートフルなもので、ナンセンスものは初めてだったのでそれもビックリしました。

今後、絵本作家になるならないに関わらずライフワーク的に絵本を描いていこうかなと思っていて応募したら幸か不幸か獲ってしまった。そういういきさつです。

『これについては考え続けなければ…。』

6.お金についてどう思っていますか?

小林大悟:とてもとても大事だなと思います。正直、作家としては作品だけで生計を立てているというのは理想だとは思うんですけど、それは結果論でそうあるべきだなと思っています。それを目指すために頑張るというか、今の収入源を繋ぎと思ってしまうとただひたすら自分を追い込む。それは危険だけど、ただ完全に趣味というにはもう活動をし続けてしまっているから、考えなきゃいけない部分。今後の課題というのが一番です。

一方で、全部お金に還元して活動したくはないですけど、お金に還元せずに活動するにはどこかで収入を得なければいけないという残酷な事実があるので、これについては考え続けなければ…。

『ひきこもっているんじゃないですかね、割と真面目にそう思います』

7.絵をやっていなかったら何をやっていると思いますか?

小林大悟:淡々と生きていたと思います。そんなに社交的でもないしどちらかというと内向的なので、悲観的に生きていたと思います。ひきこもっているんじゃないですかね、割と真面目にそう思います。

-活動されているからこそ、人と触れ合ったりされているんですね

小林大悟:活動している建前と作品というツールがあるから出回れる、強くでれるというか、それを口実に興味を持てるのがある。
それがなかった時の素の自分は無気力というか無関心だなとふとした時に自分でも思うので。それはそれで幸せなのかなと思いますけど、ひきこもりながら生きるのもそう悪くない。

『日本画だけでやるというのは、自分の中では俳句とか短歌とかそぎ落としに近い』

8.表現形式に関するこだわりを教えて下さい

小林大悟:メインは日本画の画材。岩絵具を使っているんですけど、それが一番使い慣れている。大学の時から勉強していて10年近く使っているので、扱いやすいというのはもちろん、後は感覚としても合う。
ただ日本画の画材に自分の表現したいものを集約してしまうと、すごいそぎ落とされるものも感じる。絵本を創ったり文章を書いたりするのも好きなんですけど、そういう時はデジタルなものを使ったりする。

素材としての余地は残しつつも何でもありにしてしまうと本当に何でもありな世界になるので、今まで自分の培ってきた軸として日本画の画材を使って絵を描くというのがあります。ただそれは軸でしかないし、たまに軸からぶれたくなるときは素材として思いっきりぶれる。

-道具によって制約のされ方がまた違いますよね

小林大悟:もちろん、違いますよね。
何でもありにすれば理想の作品ができるかといったらそういうわけではないし、日本画だけでやるというのは、自分の中では俳句とか短歌とかそぎ落としに近い、制約の中でのそぎ落とし、全部をそのそぎ落としの中で見せたいかと言われるとそうでもない。

「小林さんと教え子の作品」

-小林さんの中で日本画は”そぎ落とし”というイメージを持たれていますが、”そぎ落とし”以外にも日本画に対して何かイメージはありますか?

小林大悟:日本画で描いているものは絵画と言っているんですけど、こういうことをしてみたらどうなんだろうという気持ちより自分の中の内面を掘り下げる作業として日本画の素材の相性が合っているなという風に感じています。

ふざける感じで日本画の画材を使うと鼻につくような感じになってしまう、そういう見せ方には合っていないんだなって。そういう見せ方をする時はアクリル絵具だったり、パソコンのデジタルで何度も描き直しができるような素材でゆるーと描くというか、そのゆるーと描いた感じを絵画にしようとは思わない。

それをやると変な文脈ができてしまう。もっと純粋にくだらなく作りたいものをわざわざ質のいい素材でやってしまうと、くだらなさを込めた絵画みたいな、そんなことはしたくない。

-日本画って存在が重い側面もあるのかもしれませんね

小林大悟:正直、あんまり語りたくないほどうんざりしているんですけど、日本画というものの存在が曖昧で何をもって日本画なのか。明治以降にできた「美術」という言葉や概念も含めて、西洋画が入ってきたことに対しての日本画だからそもそもアイデンティティが不安定。

日本画の第一線で活躍されている方々もそこに明確な定義をつけられずに今に至る。そういったぐだぐだ感も含めて日本らしいのかなと勝手に思うんですけど。

一方で何十年前に「日本画とはなんぞや」と新しい日本画の定義、日本画を解体する運動のもありました。俺たちはアンチ日本画的な動き、それすらもかつて行われた運動の中に回収されてしまう。「今の日本画というのはおかしい、だから私は新しい日本画を…」という風に定義づける立ち位置すらが一昔前。

相手をすると日本画というぐだぐだしたものに吸い込まれてしまう、面倒くささがある。でも素材としてはしっくりきている、そんな矛盾があります。

「創作に使用する岩絵具」

-ところで小林さんは立体の作品とかも創られたりするんですか?

小林大悟:粘土で少し作ったりします。僕は民芸品みたいなのが結構好きで、昔の埴輪とかだったり..考古物。
作者名は分からないけど、ああいう手作りのものってひとつひとつ筆致が違ったり、手のこねた感じとかが違う。

明らかに人が作った、誰かの手先の痕跡を感じるのに作品然としていない、名前もわからない。そこに想像力が膨らむというか、そういう愛しさみたいなのはあります。そんなノリで僕は立体を作るので、作品としてしっかりとしてやりたいという意志はないけど時々やる感じです。

絵を描いている人の中には、立体に対するコンプレックス、立体的なものを作るのが苦手で絵の方にきたって人もいます。僕自身も図工の時間とかにいい立体物を作れた経験がない。ぐちゃっとして素材をうまく扱えなかったり、どこか自分の中で工作コンプレックスを抱えていて、解消したいという思いも込めて時々立体をやっているのもありますね。

-絵を描く時の感覚とどういう風に違いますか?

小林大悟:単純に360度を意識することの大変さというか、やっぱり表面的にみてしまう。気が付けば後ろの方がぺちゃんこになっていたりします。時間をかければある程度の形にはできるんですけど、明らかに不器用に時間を浪費している。

「小林さん作・『りきゅう陶器』」


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