矢野信一郎

※ページ毎に Goozen にて開催された展示のフライヤーをご覧になれます

『近くにいる人、触れあえる人、自分が実際に体験してることで自分の現実を作ろうと思った』

3.今の世の中について感じていることを教えて下さい

矢野信一郎:ものすごい勢いで変わってきていると思う。人それぞれの部分もあると思うんですけど、今まで知識とされていたものが役に立たなくなったり、今まで「素晴らしい作品です」とか「素晴らしい人です」というのが、落ちていって逆にそうじゃないとされていたものにもっと光が当たったりと、そういう現象も起こってくると思う。今までのものに執着がある人は移行することに対して抵抗すると思います。

-時代の転換期というものでしょうか?

矢野信一郎:「そもそも何を目的としているか」、「何を大事にしているか」ということなんですけど、自分自身としては本当のことが知りたい。色々と隠されたり誤魔化されたりしていることがあって、そうじゃなくて本当はどうなっているのか。それが一番自分の中では重要。

最初の方にお話しした中でも言いましたが、それぞれの本当がある。ただ、少なくとも現代の社会は自然にそうなっているのではなくて、意図的な力が働いているし、そういうものがだんだんバレて表に出てきています。今までなんとなく崇められていた人も、なんとなくが通用しなくなるのではないでしょうか。

無理な力を働かせてその立場にいるとしたら、落ちてくると思う。そういうのが加速する予感がします。

-なるほどです。

人それぞれだから一個の現象に対しても捉え方が違うけど、今まであった社会に抗う姿ではなくて詩が本来持っているポテンシャル、そういうものがクローズアップされるし人々にとって必要になる気がしています。今までのシステムで価値があるとされているものが崩れていくので、何を大事にしているかによって反応が違うはずです。

現在の文明の中にアイデンティティを持っている人、専門職の方、その中で成功したとされている人たちでそこに未練がある人はそのシステムが嘘だったという風にはされたくない。「それ、全部ウソでしたよ」と言われたらたまったもんじゃない。

-「何を大切にしているか」というところですね。

矢野信一郎:そうです。今までのシステムや在り方がそこまでしがみつく必要があるものなのか?ということだと思うので。隠されていた事が明るみにでた方が、混乱の時期はあるでしょうけど、多くの人が生きやすくなると。

-コロナ禍ってのも大きいですよね。

矢野信一郎:きっかけにはなっていると思います。数年前では考えられなかったようなことがどんどんと起こっていると思います。コロナ禍で何があったのかは明るみに出てきてわかるはずなんですけど、いかに日本人が日々殺されているのかが表のニュースには出てこない。戦時中よりも日本人は殺されているんじゃないだろうかと思っている。

-もう少し具体的に教えていただけますでしょうか?

矢野信一郎:日本は明治以降、他国に乗っ取られているし、早く言えば日本を滅ぼそうとしている勢力があるわけですよ。そういう人たちが動かしているので、日本人に優しくないのは当たり前だと思います。ものすごく自殺大国で、30年間も賃金が上がらないのに税金だけがどんどんと上がっていって、大企業と特権階級だけが儲かる仕組みに変えられていたわけです。

いつの間にか、日本人ではない人たちがこの国のほとんどを仕切っていた。テレビが洗脳装置であるというのは昔から言われてましたけど、それ以外の何物でもない見方ができるようなわかりやすい形になった。それこそ、テレビがすごい好きだった自分からするとちょっと悲しいけど。

「Goozenでおこなった『美しき緑の星』の上映会」

-考えると恐くなってきますね…。

矢野信一郎:ただ、大事なことは、だからと言って何も悲観的になったり恐れる必要はなくて。立ち上がれ!日本人!みたいな話でもないと思っています。実際何が行われてきたのか、何が隠されてきたのかは知る必要がありますし、「じゃあどうしたいのか?」「どうする事が幸せなのか?」それは明確にして行動する必要があると思いますが。

先ほどお話したように目の前で起こっている現実というのは実は自分が作り出しているので、不安や恐れや怒りなどの感情に囚われればそういう現実が目の前にあらわれて、そういう体験をすることになると思ってます。

これは少しわかりにくいかもしれませんが、何か現象があってその反応として感情が生まれるのではなくて、感情が現象を創り出しているんですね。

-一般的に考えられている、何か出来事があって感情が動くというのとは違うんですね。

矢野信一郎:でも、良い悪いではないのであくまでも自分が体験したい方に進めば良いと思うんですよね。恐怖!不安!を体験したいならそっちに行けば良いと。

-この考え方をひとつ知っていれば、各人の現実の在り方が変わりそうです。

矢野信一郎:僕はもうテレビを観なくなりましたけど、まぁテレビだけじゃなくて新聞とかも読まないんですけど、そうしたことの理由のひとつに「自分とは関係ない世界」と思った、というのがあります。これはバラエティでもニュースでもドキュメンタリーでもそうなんですが、実際に会った事も見た事もない人、もっと言うと本当にいるのかあるのかもわからない人や事ではなくて、近くにいる人、触れあえる人、自分が実際に体験してることで自分の現実を作ろうと思った。自分とは関係ないものを取り込んで余計な不安やストレスを呼び込まないようにしようと。

これ、結構日本人は弱いと思うんですね。「そんな自分勝手な〜」とか「もっと他人の事を考えて〜」とか言いがちでしょ?かつての自分もそうだったので。

-確かにですね。

矢野信一郎:でもね、違うと思うんだな(笑)。もちろん、他人のことなんて思いやらない!みたいなことを言ってるんじゃないですよ?

大事なのは、今まで想像できてなかった可能性が実はいっぱいあるっていうことに気づくことだと思います。

5.構成する9つのもの


1.「未完成」作品第1番 トゥー・ヴァージンズ
「イマジン」はアメリカが戦争をする時、必ず放送禁止にするって聞きます。ジョンの声は人を癒しちゃうんでしょうね。このレコードのような実験的な音にはずっと興味があります。ビートルズをやってる時にリリースするって大事件だったんでしょうね。

2.エスパー魔美
藤子Fさんの絵は今でもとても好き。ドラえもんとかも短い話の中に必殺の一コマみたいなのがたまにあるんです。藤本さんの人柄が窺えるグッとくるコマが。エスパー魔美は小学生の時以来久々に全巻読み返したらスゲー面白かった。みんな摩美ちゃんが好きだと思います(笑)。

3.年上の女を讃える
父親が翻訳の仕事を始めたごく初期の頃の作品。なんと装丁が北園克衛で!多分父が亡くなってから発見したんだと思います。凄くビックリして。それにしてもこの頃の装丁って洒落てるなーと。
タイトル、、あれですけど、実際父が結婚したのは「9コも年下の女」です(笑)。

4.阿呆列車
百閒先生は二十代の頃から好きですね。これか「冥土」っていう夢うつつの怪しげな話か迷いましたが、コチラを。百閒先生のボヤキがひたすら痛快な阿保珍道中。漱石のように重くなりすぎないところが好き。

5.ひたち荘
インタビュー中にもでてきますが、3歳ごろまで住んでいた東京、町田のメゾネットタイプのアパート。僕たち子供はずーっと遊んでました。この頃(70年代)までは、隣同士で醤油の貸し借りなどフツーにありました。

6.パラレルワールド
この本が、というより「パラレルワールド」に関心があります。SFではなく現実のこととして。量子力学ですね。

7.美しき緑の星
去年 Goozenで上映会もやった、30年近く前のフランス映画。公開当時は本国で軒並み上映禁止になったそうです。あまりに本当のことを言いすぎてるので(笑)。美しき緑の星って地球のことだったらいいなーと思います。この夏、第二回上映会をやりたいと思ってます。

8.麦秋
小津の映画は二十代の半ば頃にハマって、現存しているものはほぼ全部観ました。一番繰り返し観てるのがこれか東京物語かな?セリフの言い回しやイントネーションが独特なのでつい真似したくなっちゃうんです。
「のりこさん、アンパン食べる?アンパン」
文字におこしてもぜーんぜん伝わらないけど(笑)。

9. Goozenでその時やっている展示作品
Goozenでは3週間強の会期で毎月新しい展示をしています。展示している作品にはやはり毎回影響受けていると思います。オープン前にドアを開けた時の気配のようなもの。作品同士の対話。発光。贅沢な空間に居れることに感謝。



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