第19話

ファンならずとも必見です。


 書籍の紹介文、レビュー等で度々目にするこのフレーズだが、果たして必見だった事はあるのだろうか?自分はかなり懐疑的である。そもそも社交辞令や挨拶として受け取って流すのも問題ないと思う。「お世話になっております」と言うが世話になった事などない、と同じかも知れない。本気でそれ言ってるなら、お茶の間、世間を甘く見過ぎな点でその舐めたスタンスに芸術すら感じる。芸術なら語るに値する。

 タレント(特にアイドル)に使われる事が多く、中でも容姿は整っているが中身で個性を出す事に苦戦してる場合によくある印象だ(逆パターンはあまり見ない)。プロのライターが書いた紹介文なら安心して読めるが、ファンが書いたレビューとなると、その中身の部分を掘り下げて褒めてしまうと底が見えて墓穴を掘ることになり、せめぎ合いが難しいように思える。自分の言葉で否定的な意見を呼び寄せてしまう恐れだってある訳で。なので箸にも棒にも引っかからない方向性の深読みをして考察兼感想を言ってくケースも観測される。容姿の整った駆け出しの女性お笑い芸人の地下ライブで、無理に笑うおじさんファンも「ファンならずとも必見です」の始まりな気がする。分岐した先にあるものとして。

 そしてこのフレーズを聞く度に、いつかの妖怪ウォッチの映画が異様に「大人でも最高に楽しめる!」的売り込みしてた時を思い出して、その時と同じ顔をしてしまう。

 類似したもので自分が観測したケースとして、アーティストが「Amazonでアルバム星五でレビューしまくって!」と呼び掛けてファンがレビューをしまくるも、何人かが文末に(…ワンマンの時の約束通り書きましたよ!)と余計なネタバラシを書き、結果寒くなるみたいなパターンが存在した。所謂ヤラセ的アプローチはとにかく空気を読む力が必要なので、ファンであろうと不特定多数に投げかけると必ずしも思った結果が出るわけではない事をこれで学んだ。

 勝手にモヤモヤしてしまう自分としては、「ファンならずとも」の中でどの程度の印象を抱いていれば楽しめる対象に入るのか、他に細分化した言葉があればいいと思う。お金落とす程ではないけど好印象、名前よく知らないけど表紙の顔は好き、人としてあまり興味ないけどこの本自体は面白そう、など状況に応じてもっと踏み込んだ手の差し伸べ方をしたフレーズが出てくる事を願う。ファンならずとも必見です。で溢れ返ってる。今の日本は。

【記録係】
伊藤竣泰


『観察庁24時』

第18話:フルネームで検索すると真面目な人ほど足が付く

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