芸術に出会うべくして出会った、その人生観
※1ページごとに、本人の作品をご覧になれます
インタビュー中、∮TaKu‘ ,n∮ さんから圧倒的な”生のエネルギー”を感じました。前向きで生きることに貪欲なその姿勢の裏には何があるというのでしょうか。彼は繊細さと大胆さを持ち合わせており、自身が芸術家であることを確信していると感じました。
創作の核として『変容』『再生』『再構成』の三つの言葉を挙げています。それは決して概念ではなく、過去の”挫折”を通して得た、何にも代え難い信念として∮TaKu‘ ,n∮ さんの心に息づいています。
彼は”挑戦してもなかなかうまくいかない”人たちを間違いなく勇気づける芸術家です。
今後の展望、過去の出来事、赤裸々に語っていただきました。
そのまっすぐな言葉を通して、その心に触れてみてください。
『100日描かなかったら、100日分人生が変わらない』
<インタビュー>
1.なぜ表現をやっているのですか?
TaKu‘ ,n:パーソナルだけだと、世の中と繋がれないじゃないですか。
人と会えないというか、村とかもそうなんですけど、人が二人以上いたら社会と思っていて、一人だと社会じゃないと考えています。自分にはパーソナルな部分と社会的な部分があって、パーソナルな部分では繊細さだったり、子供の時から変わらずに持っている感情があります。
傷つくことって誰しもがあると思うんですよね。俺、そういうのを受信しやすいタイプというか。
誰かと喋っていると、その人の経験や怒り、悲しみが自分の中に入ってきちゃうんです、どうしても。ニュースとかでもそうですね。ひどいニュースとかがあったりすると…ね。
友達が悲しいとか、そういうのはやっぱり大人になってもありますね。必要以上には受信しなくなったけど、子供の時からすごく入っちゃって、それがすごくしこりとして溜まってくる。
蓄積してくると言えばいいのか、ずっと生きていると、人と関わっていると、溜まっていくじゃないですか。その溜まっていくものって消えちゃったり、違った形で自分の中に屈折した形で残ったりしちゃうんです。人ってそれを頭の中で考えたり、ストレスになったりもする。
自分の場合はそれを画面に残したいというか、その時に残った誰にも伝えられないようなものが、他に描くことによって、自分が最初に認知できるんですよ。
それが気持ちいいんですよね。創るってそういうことだと思うんですよね。自分を表に出す。
自分の感覚とか気持ちが創作を通して物語などの媒体に押し込まれてそれを認知する。その時、自分はこういう気持ちだったんだということを初めて知る。客観視もできるし、外に出すことによって一人ではないと思えます。
やっぱり生き物みたいに残っていくから、ずっと。
絵が作品として残っていくこと、感覚的にすごいガサツな言い方をすると、ポケモンが増えていくって感じで、旅を続けると友達が増えるみたいな感覚で作品があるんですね。全部自分の子供だから、すごい気持ちがいいんですよ。それが創作の一番のモチベーションですね。
気持ちがいい、気持ちよさですね。気持ちがいいと、楽しいじゃないですか。
行為がただただ楽しいって。後は、人に表現したいという気持ちがやっぱりあります。承認欲求、認められたい、認知されたい。
やっぱり絵ってコミュニケーションなんですね。
音楽とか歌もそうなんですけど、鑑賞者がいないと成り立たないんですよね。自分自身すら鑑賞者なんですよ。絵を切り離して創るじゃないですか。
それを認知するのは自分じゃないですか。だから、初めての鑑賞者なんですよ。
家族だったり、恋人だったり、「いいね」って言ってくれる人が増えて、もっと広がって不特定多数の人に見られて、やっぱり世界が変わるんですね。
画面を通り越したコミュニケーションって言葉じゃないんですよ。
だから、理屈が通り越せるんですよ。何を言っても通じなかったものが、何をやっても変わらなかったことが、自分の芸術を通してどんどんと世界が変わっていくんですよ。
一枚描くごとに、対価を稼ぐことによって身なりが変わっていったり、自分の人生が変わっていくから。だから、毎日やりますね。100日描かなかったら、100日分人生が変わらない。
-作品に舵を取ってもらっている感じですかね。
そうですね。人生を変えていくのに、他者がいないと絶対変わらないんですよね。
何をするにしても、「いいね」と言ってくれる人がいないと出来ない。つまり、心の動きだと思うんですよね。自分の作品を通した誰かの心の動きが近くで見えるから、色々と変わっていくんですよ。
例えばすごい有名な人が僕のことを「好き」と言ってくれて、その人のInstagramで作品をアップしてくれたら、その時って一気に何万人に届くわけじゃないですか。それで、僕は新しい色んな場所にいける。それって絵を描いていなかったら、起きないわけじゃないですか。だから、大事にしています。それだけです。
まずは描いて人に見せたり、自分を表現していかないと変わらないから。
適当に描いてもそれが良かったりもするわけじゃないですか。創らない日はないです、だから。
-作品を通して未来に連れて行ってくれるんですね?
創るってことがそもそも気持ちいいじゃないですか。気持ちいいことで人が喜んでくれる。
-パーソナルな部分も社会的な部分にもいいということですか?
喜びですね。そのふたつがリンクしているのが芸術をやっている理由だし、芸術をできる自信です。芸術をやる理由はシンプルです。
『自分の線を愛した方がいい。そっちの方が面白い、それって今までなかったものじゃないですか』
2.創作の方法について教えてください
-自身で描かれたり素材を集めてきたりだと思うんですけど、いかがでしょうか?
TaKu‘ ,n:俺の創作の方法めちゃめちゃ面白いですよ。
先に言いますけど、本当に楽しいなと思います。大体、みんな「こういうのを描きたい」とか「こういうのが自分なんだ」とかあるじゃないですか。
俺の場合は先にやっちゃうんですよ。何を描こうかなと考えるのではなくて、とりあえず書こう。「アイデアが出ない」とか、「ネタがない」とかじゃなくて、描きながら創っていく、構成しながら創っていく。コラージュ作家はそれが多いんですけど。
ちなみに俺コラージュ作家じゃないんですよ。よく言われるんですけど、みんな「コラージュ作家のタクさんだよ」って紹介してくれるんですよ。だけど、アーティストなんです。手数が多いだけなんです。
-コラージュに特化しているわけではないんですね。
TaKu‘ ,n:コラージュはするから、コラージュしていく人って”ただ発想していく”人が結構多いんですよね。「象さんに見えるから象にしよう」という感じです。コラージュって構成したり重ねることによって、どんどん変わっていくんですよ。最後まで何ができるかわからないんですよ。
-偶発性に身を任せているってことですよね。
TaKu‘ ,n:普通は耳を描く時とか、「大体こういう耳の形にしよう」と思うじゃないですか。僕の場合は、耳という形になっていくみたいな感じ、粘土みたい。だから、すごい創るのが早い、最近は特に。一日一個は創りたいですね。
-最初に描く対象を決めて、創ったりすることもあるんですか?
TaKu‘ ,n:そうですね、ドローイングというか、いわゆる見て描くみたいな感じですね。でも、ある時に思ったんですよね。絶対、同じものを描けない。見たものと同じものを描けない。
でも、「同じものを描けても面白くないな」と気がついて、描けないんだったら、もっと描けない方がいいなって。
変容したり、自分のフィルターを通したものが面白いですね。
僕は割かしちゃんとするということがあまり得意じゃない。絵が別のモノに変わっちゃって、それが面白いというか。自分のものさしです、うまく描けたか、描けていないか。
ある意味、うまく描けようが描けなかろうが、それを好きという人は絶対いるだろうし、それだったら、自分の線を愛した方がいい。そっちの方が面白い、それって今までなかったものじゃないですか。
-線という表現がいいですね。
TaKu‘ ,n:みんな、自分の線を持っていると思う。俺は美大に行っていないんですけど、美大とかだと先生が「これはうまい」とか言って、その人に褒められたい気持ち、その人がいいというものを描こうとなってしまう。少なくとも、芸術ってそうじゃない。
技術を学ぶ場としてはすごくいいと思うんですけど、本質を失ってしまうのがすごい悲しい。
生まれたときから自分の線って持っているんですよ、癖とか。その癖を直しちゃうのがもったいない。社会生活を営むにはあれかもしれないけど、大事にした方がいい。
変な話、俺「手」を描くの全然興味ないんですよ。
たまに素材で使ったりするんですけど、顔がやっぱり多いんですよ。最初は、手を描けないのはどうかなと思ったけど、顔だけ描けばいいとなって。
好きなものを描けばいい、自分の得意なものをやっていけばいいだろうし、人の目は気にしない。
自分が一番興味あるものを突き詰めるのが絶対いい、手は手を描くのがうまい人に任せればいいから。自分の癖を知るには嗜好を考えることです。自分の好み、自分が一番興味が湧く、創っていて一番気持ちのいい対象。芸術の言葉を借りると「モチーフ」、動機ですね。
自分が一番テンションが上がる動機、塗るのが一番の動機になる人は塗るのがいいし、子どもが動機になる人は子ども、裸が動機になる人は裸を描けばいい。
-創作は自分が一番作っていて、気持ちのいいところを探りつつがいいんですね。
TaKu‘ ,n:それがやっぱり大事だと思う。
俺はへたくそでも気持ちよく好きなもの描いている方が伝わるんですよね。後は、練習とか、そういうものだと思うし。そういうのを忘れちゃうのがもったいない。不得意なことはやっている人に任すし、仕事でもそうだと思う。
好きじゃないことをやって、犠牲にすると…ね。それだけだと人間の大切なものを失くしちゃう。みんな才能があるのにもったいない。それは伝えたいですね。
僕は「解放」と呼んでいるんですけど、ものすごい絵とか表現を見たときに心がすごい開いた気持ちになる。人間が社会というものを創り上げて、それは成長していくためには必要なんだけど、それだけじゃ人間の本当の歓びが制御される部分があるし、それをリリース、「解放」してあげるのが芸術の一つの使命だなと思う。原始的な部分にアクセスする、僕は結構そういう感覚が強い。
-原始的な部分へのアクセス、確かに芸術の一つの役目ですね。
TaKu‘ ,n:蓋をこじ開けないと。変な話、無理やり好きにさせたい。良い表現を見ると気持ち良くなる、きっと、みんな解放されたいんですよ。社会から解放された瞬間に歓びを感じるというのは絶対あると思う。