∮TaKu‘ ,n∮

※1ページごとに、本人の作品をご覧になれます


『Cross the media』

『認知が広がっているから新しい表現が出てくる』

3.好きなアーティスト、憧れのアーティストを教えて下さい

TaKu‘ ,n:まず第一に挙げたいのが、ジャン=ミシェル・バスキア。27歳で死んじゃったアーティストで、今度森アーツセンターギャラリーで大きな展示があるんですよ。

-そういえば、駅の広告をみかけました。

あれすごいことなんですよ。日本でやるのは初めてなんじゃないかな。日本はバスキアの作品はいっぱいありますが、それが一カ所に集まるのは初めてなんじゃないかな。バスキアは有名だから、ファッションにも使われるし、一般の方でも知っている人は知っている。

子供みたいな絵の代表格、プリミティブアート、原始的なアートの総本山。一番上、どうやったって最高峰と言われていて、「ああそうだな」って俺はそう思ってますね。

彼はストリートで活動をしていて、自分の主張、メッセージを描いていて、それは器物破損とも言えるのかもしれないけど。zozoタウンの社長が120億で落としたりとか、絵が描かれていないからどんどんと価値が上がっている。

大人の資本主義的な何かが働いているというのは、わかっちゃいるんだけど、俺はただただかっこいいんです彼が。すごい解放されるし、これでいいだろうと思うし、とにかくかっこいいですね。

結果、アパレルのブランドもバスキアを使ったり、ファッション関係の人もバスキアが好きな人が多いし、その事実もかっこいい。バスキアは世界を席巻している。

元々、自分はアートがわからなかったんですよ。アートを見て初めて「かっこいいんだなぁ」と思ったんですね。ゴッホとかピカソとかすごいなって思うけど、シーンとしちゃう。

バスキアは、ニルヴァーナみたいですね。ロックってカッコいいんだ、バンドってかっこいいんだ。
グランジやダメージジーンズ、ナンバーガールみたいな初期衝動。バスキアはめちゃめちゃ影響されていますね。ちょっと似ている部分もあったりする。だから、先生ですね。

-他に好きなアーティストはいらっしゃいますか?

ちょっとマニアックになっちゃうんですけど、ニューヨークのアーティストで、リチャード・プリンス。アンディ・ウォーホルに似た空気感を持っている。クールで影響力を持っている。クールな姿勢というか、淡々としているというか。

アプロプリエーション※、盗用アートとか引用とか言われるんですけど、既存の作品をそのまま使って、少し変容させて表現しています。

※1 アプロプリエーション‥美術史や広告やメディアや消費物など、既成の表象体系からイメージを取り出し、新しい文脈に組み入れる行為

ソニックユースのアルバムのジャケットも作成してましたね、ナースのやつ。
その前に日本で個展したときは、30人ぐらいしか来なくて、とても熱狂的なファンはいたんですけど、日本では全然で閑古鳥が鳴いたみたいな状況でしたね。

日本から帰った後にソニック・ナースがすごい勢いで売れましたね。
最近で有名な作品が、Instagramをキャンバスにして、サインを描かずに、コメント欄に自分のアカウントを載せるというもの。限りなく自分の手は加えないんですよ。それをキャンバスに落とし込む。

昔の有名人をそのまま印刷して少し変容させたりしています。リチャード・プリンスがそういう表現を始めたから、それがクールと認識されている。

-著作権とかそういう意味合いにも疑問を投げかけているんですかね?

著作権は芸術とは関係ないんです。著作権は社会的なものであって、すごい理性的なもの。裁判をしてもリチャード・プリンスが勝ちますし、その人たちにとってプラスになっていると訴えられない。芸術には法律は及ばない。

-現代アートの人が基本的に好きなんですか?

TaKu‘ ,n:昔の人でも好きな人はいっぱいいるんですけど、心が近い人が好きだし、昔のアーティストでも、現代アートへの畏敬みたいなものを感じられるアーティストが好き。

エゴン・シーレとか。28歳で死んじゃったんですけど。
女性のヌード、自分のポートレートを描いたり、すごい過激で。調べていただければわかりますが、すごい。かっこいい。100年前ぐらいの人なんですけど、すごい斬新でイラストっぽいですねちょっと。基本的にパンクな人が好きですね。

現代アーティストはとにかく数がどんどん増えていっている。Instagramでも素晴らしいアーティストと思える人はたくさんいる。認知する人も増えているから、現代アートはすごい楽しい。最近もうアートは飽和状態とか言う人はいるんだけど、そういう話じゃなくて、認知が広がっているから新しい表現が出てくる。

みんなが宇宙人を見たことあるから、宇宙人の上を描く、提示する。現代人が宇宙人を認知しだしたら、もっとすごい宇宙人を見せられる。現代アートが広がって俺はすごい面白いと思う。認知が広がると理解ができる。40,50年すると今の現代アートを見て、「印象派みたいだね」とかそういう感じになるんじゃないかなと思います。

『前からずっと、芸術のことがわかっている人なんだと認知できた』

4.創作、表現活動を始めるきっかけを教えて下さい

これが結構よくて、今9月だから、創り始めたのが2年3ヶ月ぐらい前で、30歳ぎりぎり手前から始めました。なんでやり始めたかというと、元々僕は音楽をやっていたんですよ。27ぐらいで一回辞めちゃったんです。

-音楽はいつ始められたんですか?

10代からですね。高校の時から10年ぐらいやっていたんですよ。その時、すごい好きな彼女がいて、その人のお母さんがライブを見てくれたんですよ。家とかにお邪魔した時に、音楽を聞いていてくれていたんですけど、「タクくん、仕事をしてるの」と聞かれてドキッとしちゃって、そのとき仕事をしていなくて、ニートだったんですよ。

で、多分、お母さんは「これはプロになれるレベルじゃないわ」って。何か頑張っている姿を見せないとと思って、その時につなぎで司法書士の資格の勉強をしていて、紛らわしていました。すでに返したけれど身内から30万円ぐらい借金をしたり、彼女とは結局別れちゃった。

今思えば本当に好きじゃなかったのかもと思う。その時には必要だった。もちろん好きなところもいっぱいあったけど、うまくいかなくて。人生を考え直そうと思って、2年ぐらい本当に何もできない。次何を頑張ればいいのかって。別れて勉強する動機もなくなっちゃって。

それで仕事を始めて、働きながらドライフラワーをやったり、新しい何かを探していたんです。花切って活けたり、アクセサリーを作ったり、たまに動画配信をしてみたり模索していたんですよね。でも、全然燃えなくて、始めてブルーハーツを聴いた時のあの感じがなくて。
「俺って終わった人間なんだな」と思い始めて。そんな時に、石田力丸っていう友達が「絵を描くぞ」と誘ってくれた。彼、一時期すごい絵を描いていた時期があって、よく遊んでいたんですよ。

ある時、力ちゃんがすごい面白い友達がいるといって、その子と絵を描く約束をしていたんだよね。「その子はパンチが効いているけど、びっくりしないでね」って。

靴も黒の厚底でセックスピストルズのライブにいそうな、村上春樹の小説に出てきそうな感じで、俺が結構しゃべるんですけど、向こうは結構シャイで。俺は初対面のシャイな人にちゃらつく癖があって、結果、ウマが合っているのか、合っていないのか、わからない状況。向こうがすごい気に入ってくれていたみたいで、「また会いたい」って連絡先を交換したのね。

で、次の日、「遊ぼうか」となって、力ちゃんの家で絵を描くことになった。
白いひとつの紙を囲みながら、二人がうつぶせになりながら絵を描いていて、すごい子供みたいだなって。「いいなぁ絵を描けるって、俺絵とか描けないからなぁ」って。

その子のあだ名がデミちゃんって言うんだけど、「タクくんも書きなよ」と言ってくれた。
「いやいや無理だ」と言うと、「いいから描けって」と強引に。笑

力ちゃんも「いいじゃん」みたいになって、手を握らされるぐらいのチカラで。「やだぁ」とか言いながら、描いてみたらすんなり描けることに気がついて。

楽しくなりました。2人も「タクくんの絵から何か感じるね」って。そこから絵の楽しさに気が付いて、「これは趣味だ」、人生を豊かにする趣味と思って。その日家に帰って、ちょっと母親に見せたら、一日で描いた絵を褒めてくれた。音楽をやっているときは全然反応がなかったのに。

そこから絵を描いて母親に見せる日々が始まった。そこから毎日描いている。あの巡りあわせは、本当に「隕石が当たった」と言ってるんですよ。

-友情が生んだ感じがいいですね。

TaKu‘ ,n:なんというか、隕石ですね。描かされた。
誕生日の前に新しい表現、自分の才能を活かせる表現に出会えた。衝撃。
もともと芸術家は周りに多かったんですけど、自分はできないから、芸術ってよくわからないと思っていて。

でも、はっきりわかった瞬間がありました。「芸術ってこういうことだ」と思ったんです。

-「こういうこと」というのは、どういうことですか?

TaKu‘ ,n:何か音楽のことがわかっているみたいな人っていませんか。前からずっと、芸術のことがわかっている人なんだと認知できた。音楽をしているときはカッコをつけているみたいなのがあったのかも。表現に対して真摯じゃなかった。

芸術は懐が深い。人間の視覚認知は80%ぐらいあって、パワーがある。とにかく、恋人みたい。
芸術さんって人がいたら結婚してもいいかなって。すごいわかってくれるんですよ、芸術が。すごい良い。本当にすごい表現は、画面があってそれに逆らえない。

-力丸さんと女性の方がきっかけで始まったんですね。

力ちゃんとデミちゃんは1ヶ月ぐらいしか、一緒にいなかったんです。あの出会いは「タクちゃんを描かせるためにあったのかな」って。でも、彼女とは今でも、心でつながっています。

※デミさんが描いた∮TaKu‘ ,n∮ さん(左)と音楽家の石田力丸さん(右)

『絵が初めて売れたときは死ぬほど嬉しかったし、ちょっと怖い部分もあった。気持ちは変えたなくないなって』

5.お金についてどう思っていますか

お金はすごい不思議なものですね。お金って何なんだろうと調べていたんですよ。そしたら、世界を牛耳ったロスチャイルド家※が出てきて。お金というのは身近にあって、みんなめちゃくちゃ触るじゃないですか。だけど、お金の事に気づいていない人は多いですよね。調べれば出てくるけど。

※2 ロスチャイルド家‥ユダヤ系金融資本家を代表する財閥

お札で話をすると、お金というのはとにかく紙ですね。お金の所以というのは信用なんですよね。

昔は「金」があって、原始時代は「石」を転がしていて。信用って人間が作り出したもので、あの印刷に価値があるわけじゃなくて、世界が価値をつけて、この国の人達は労働を使ってそれを取得する。その絶対量があるだけなんですね。

お金は便利です。すごい便利です。お金があれば結構なんでもできてしまう。人間の作り出したツールなんですよね。考えた人が一番すごいですよね、天才中の天才。ユダヤ人か。ユダヤ人かわかんないですけど。

あれはひとつの価値なんですよね。
自分ができないことを代わりにやってもらえる、コミュニケーションの発展した形でもあるんですよね。だから紙や小銭とかもどんどんなくなってきて、デジタル化していますよね。マイクロチップとかも生まれて、さらにデジタルで管理されていくと思いますね。

お金にはドライな部分とわんぱくな部分があります。高校生がアルバイトをして、お母さんに何か買ってあげたりとかすごい良いですし。お金は持つ人によって、意味がすごい変わってくる。カイジの会長みたいなやり方をすると…ね。

投票的な部分もあると思う。好きな人を応援するという意味もあって。
絵が初めて売れたときは死ぬほど嬉しかったし、ちょっと怖い部分もあった。気持ちは変えたなくないなって。


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