観察業の中で隣の席の会話を盗み聞くのが、一番メジャーでオーソドックスな観察行動だと自分は思う。
全神経を使って盗み聞きしようとする人は流石にいないと思うが、ふと隣から聞こえてきた断片的ワンフレーズが気になり、その話を詳しく聞き取ろうとした事は誰しも一度や二度あるだろう。
自分は普段カフェやファーストフード店で詩を執筆する事が多く、その際気になった会話を日記に書き留めているのだが、今回はその中からいくつかのフレーズや会話をアルバム仕立てに紹介していく。
【DOUTOR 1st Album】
1.「わたし、人生がネタだから笑」
作詞:女子大生二人
昨日一緒に買った服を気付かず今逆に着てた事に対して。
2.「俺タマゴサンゴ食べるとカラオケ行きたくなるんだよね」
作詞:二十代男性二人
席ついて五分後くらいに退店していった。オタクっぽかった。
3.「若山の笑い声を音声入力に読み取らせたら、『角角角角角角角角角角』ってなったことくらい?」
作詞:イケイケな女子大生二人
「最近ニュースないの?」の質問に対する返答。
4.instrumental
十五分近くかけてテーブル上で紙ナフキンと新聞と水を自分的ベストな位置に調整してから、注文しに行く初老の男性。
5.「空き巣とか強盗ってアンジャッシュのコントとかでしか見たことなかったからさ〜」
作詞:二十代後半女性二人
自宅から徒歩二分圏内の家で強盗が入って、二十代の息子と五十代の母親がガムテープで縛り上げられ通帳と金巻き上げられた話。
6.「ちょっと苦し紛れにGo back キャンディ・ハウスしてくるわ!(苦し紛れに)」
作詞:男子大学生二人
トイレに行く事をそう呼ぶらしい。
7.「今こうやって現実で呟かれたら勝ちってゲームなんだよ。だから今回は向こうの勝ち。物理RT。」
作詞:男女カップル
Twitter上の話を滅茶苦茶細かくしてる人達。「あの時期にバズった◯◯」みたいなテーマ延々と盛り上がっていた。
8.「そん時マジ、八卦六十四掌で回避したからね」
作詞:男子大学生二人
倉庫の派遣バイト中、数の尋常じゃない事務作業をした際、自分の仕事振りを、NARUTOでいうネジが鬼道丸の集中攻撃を八卦六十四掌で対処する場面で例える。
9.「今のバイトのシフトもある程度『キーポン』しながら…」
作詞:マルチを紹介する年齢不詳の男
前半後半に分けて2組の卒業間近の女子大生を相手にしてたけど、どっちの時もデュアルタスクを連呼。「俺のターン!じゃない方ね」つって二回滑ってた。途中参加の隣の仲間の女の突っ込みも全く同じだった。さながら音声ガイダンス。
10.「かんりょーうっ!!!!!」
作詞:うるせージジイ
イヤホンを何か電子辞書的な装置に指して、数十秒に一度コントロール出来てない馬鹿デカイ声で放つ謎の言葉。
初めは外国語を勉強しながら、大声で発音練習してるのかと思ったが、あまりにも同じ単語を連呼するので恐らくSiri的なガイダンスに向かって「完了」と言っていたのだと推測される。一時間以上は続けていた。その間、周りの客は察するや否や次々と退店していき、その光景は何か科学の進歩によってドトールを追い出された気分でウケた。
【McDonald 1st Album】
1.instrumental
部活系サークルの練習帰りの男子大学生集団を見定める、男性アーティストのライブ帰りの女子たち。
2.「ワタナベマホトの顔面を潰した感じ」
作詞:女子高生二人
面食いを自称しているが、常に「◯◯の顔面を潰した感じ」で人の顔を例えていた。派生表現として「米津玄師を栗きんとん的に捻った感じの顔」も登場。
3.「ここで人狼やっちゃう?」
作詞:男子大学生五人
深夜の閉店付近に雑談がダレた際、一人が背伸びをしながら発した言葉。隣の隣のテーブルにいたので「殺すぞ」と目で訴えて無事回避。
4.「これ以上キレキャラになりたくないからオレ」
作詞:男子大学生四人
らしいです。
5.「そのポテトのスピード感は流石に俺でも分かる」
作詞:バイト仲間四人(男女)
一組の男女(公には付き合ってない)が先に食べてたら、偶然もう一組の男女(付き合ってる)が来て、「たまたま被っただけで食ったらすぐ帰るつもりだった」と言い訳する二人の関係性を怪しみ、辻褄の合わない点を指摘した言葉。
6.「言うてオレら見聞きしてきた量半端ないから」
作詞:漫才のネタ出ししてる二十代男女二人
初心者なのに二人ともやけに自信家。地下アイドルやパパ活をテーマに根本で見下しながらネタ出し。「センスの塊」「動きでもっとウケる」等を乱射。乱射事件。
7.「パスタじゃない時点で勝ち組」
作詞:男子大学生三人
合宿免許の各々の場所の感想話し合う。食べ放題かパスタオンリーか。飲み物、シャワーの温度調整等。
8.「このシェイク、おにぎりの味するんですけど」
作詞:男女カップル
マックシェイクのバニラ頼むも何かしらの理由で期間限定のブルーベリー味と混ざって、訳分からん味になっていた。俺のバニラはバナナ味になっていた。
【STARBUCKS 1st Single】
1.「あんまはしゃいだりするの好きじゃない?」
作詞:援助交際するおっさんと化粧の濃い女子大生
女子大生がこう聞くも、完全に寒さにやられてる系のおっさんは「はしゃぐ」の意味が分からず、会話は終始噛み合わない。
外にあるトイレに女子大生が行き、おっさんが店内で待つという構図になった時に、女子大生が「逃げないでね(笑)いや、私が逃げないでねって言うのはおかしいか(笑)」と言った時に援助交際を察した。
おっさんはブレンドのホット。女子大生は何とかフラペチーノ。
第 9話:『閉店日のグルーヴ』
第11話:雑誌の最終号の「ありがとうページ」