第11話

雑誌の最終号の「ありがとうページ」

《Zipperのありがとうページ》

– 比較的メッセージ性が高い部類 –

【「ありがとうページ」の哀愁】

雑誌が廃刊休刊する時、最終号の巻末に「読者の皆さん今までありがとうございました」と感謝を伝えるページが、必ずといっていい程存在する。自分はこの「ありがとうページ」に、チェーン店の閉店日に勝るとも劣らない哀愁を感じる。

編集部的には納得いかなかったりとか色々な感情を引っくるめての読者への「○年間ありがとう」。この表現が正しいか人によると思うけど、この「ありがとう」はかなりエモい。役目を終えて異世界へ帰っていくキャラクターのセリフのような、そんな万感の思いのありがとうだと思う。
ここでまた「来月からはパワーアップしたweb版◯◯をよろしくね!」みたいな事言われると思わず「笑って言ってるけど本当はそう思ってないんだろ…!?」と叫びたくなる。
また自分の雑誌への愛を直接誌面に言葉にする機会ってなかなか無い。やっと見せた本音に感じる。「…こんなボロボロになるまで強がりやがって!」

一方、名前は聞いた事あったけど手にした事はなかった程度の距離感で接する雑誌の最終号には、浅はかな「今までご苦労様でした、もう休んでいいんすよ」という労いと、休刊廃刊というトピックスへの単略な興味本位の2つから生まれる罪悪感にも少し襲われる。

廃刊するのがファッション雑誌の場合、かつて誌面で看板モデルとして活躍していた現人気女優、タレント達が、普段の「today’s corde…」みたいな投稿と真逆の気持ちのこもった「お世話になりました。」投稿をSNSに載せる。ネットニュースでは廃刊理由の数字的な部分をはっきりと伝える。廃刊休刊のニュースを見た関係者や外野の反応を見た後、今一度「ありがとう」誌面を見て欲しい。

《HRのありがとうページ》

– 淡白すぎて逆に感動して購入した –

【「ありがとうページ」の今後】

ファスト映画が流行った背景含め、時間無くて結末さっさと知りたい症候群みたいな人に対して、曲がった需要が出てきそうな気もする。創刊号と全盛期と路線の転換期の中から数刊、そして最終号のセットにした、漫画の最終回だけのアンソロジーをタチ悪くしたような形態で。

「ありがとうページ」は、語る上で何かしら蔑ろにならざるを得ない、直立してるようで生地はデリケートみたいな存在だ。自分は本棚の中にしまって、ただエモいのままで終わらせておこうと思う。書いてて困惑してきた。

【記録係】
伊藤竣泰


『観察庁24時』

第10話:隣の席の会話
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