『異才!!世界を見つめ直すレゲエアーティスト Dragon Chop』
タイトル:ダンスホールピアニカ feat. RIO(KING LIFE STAR)
※本人の楽曲を聴きながらインタビューを読めます
不条理から決して逃げずに、レゲエバンド Akame Rockers と共に音楽活動を続ける Dragon Chop さん。
こぶしのきいた歌唱に風刺的なメッセージ、彼の楽曲を一度耳にすると頭から離れません。
取材では、ユーモアを織り交ぜつつアーティストとしての信念に触れられる回答まで貴重なお話しを伺えました。生物や植物に惹かれている Dragon Chop さんのその信念は、世界への観察から芽生えた愛情なのかもしれません。
“異端児”としばしば呼ばれる、その裏には何が渦巻いているのでしょうか。
今回はレゲエアーティスト Dragon Chop さんの世界に触れてみましょう。
『僕が言っている完成度というのは整合性の話、いかに変なことをしていないか』
<インタビュー>
1.なぜ音楽をやっているのですか?
Dragon Chop:自分自身に言い聞かせているのはビッグチューン*1を作ること。自己暗示として「お前、死ぬ前に1曲はやばいビッグチューンを書くんだ。だれが聴いても感動するヤバい曲を作ってから死ななきゃいけないんだ」と使命のように言い聞かせている。
後はメインじゃないけど、理由を挙げればいっぱいあります。有名になりたい、承認欲求を満たしたいというのもあるし、人間関係を広げたい、後は単純にピアノが上手くなりたいとか歌が上手くなりたいとかですね。
-「ビッグチューンを書く」とおっしゃいましたが、音楽以外の創作だと替えは効かないのですか?
Dragon Chop:図工とか好きだったな。モノづくりは好きなんだけど音楽だけが引っかかった。他の創作は生活の中で淘汰されてきました。
あと、創作活動は元々好きなんですけど、子供の頃から適性上、作品全てにおいて丁寧さに欠けるんですよ。ここで完成というところが早かったりします。
-丁寧さに欠けるというのは、途中で面倒くさくなるんですか?
Dragon Chop:もういい、逃れたいという。飽きたな、疲れたなって(笑)
でも、人と一緒にやることによって忖度なしの意見がもらえます。自分では良いと思っていても「そこはまずいよ」と言えるぐらい分析が鋭い人間と一緒に作れば、作品の完成のラインは高くなるんですよね。お互いが「イエス」と言わないと作品としては不合格にする。だから、バンドでいい。
-なるほど、他者の目を入れることによって強制的に基準を上げるんですね。
Dragon Chop:そうそう。後、自分では判断できない部分とかね。例えば、僕はドラマーじゃないからドラムの叩き方を知らなくて。キーボードの打ち込みでドラムパターンを組んだときに、ドラマーに聞かせたら「これ、現実にやったら変だよ」と笑われちゃうのは防ぎたいです。…何なんでしょうね。製品検査員みたいな…企業ですね(笑)
-バンドメンバーは検査員も兼ねているんですね。
Dragon Chop:それでいいですよね。常にみんな厳しい目でみないといけないんですよね。仲良いから「いいんじゃない」みたいなのはちょっとね…。忖度や褒め殺しは一切の毒ですね。
-Dragon Chopさん自身、忖度するタイミングはありますか?
Dragon Chop:ありがちなのは先輩と一緒に作る時ですね。”自分からお願いした”とか”言いだしっぺが自分”のパターンの時は、余計に気を使っちゃう。向こうからすれば「そんなのは適当でいい」というのも気を使いすぎて形式ばってしまったり。結果、身動きが取りづらくなっちゃう。そういうのは、いつも感じますね。「やべぇ、飯奢ってもらっちゃたよ」とか。余計に言えなくなっちゃったり。
-奢ってもらえるとそういう風に考えてしまうんですね。
Dragon Chop:一緒に曲を作っている時はね。例えば、その人に「リリックを直してほしい」とお願いしたいんだけど、よくしてもらっているし言いづれぇ…って。
-そういう時は結果的に言うんですか?
Dragon Chop:結果的に言えなくなっちゃって、作品として完成度が下がってお蔵入りする。もしくはある程度、進んだところで「実は…なんですけど、本当すみません」って。一番良くないパターン。「えっー、2番まで作っちゃたのに、もっと早く言ってよ」と先輩に言わせちゃう。超ポンコツなんですけど、わかってほしいなぁ。
誰かこういう経験ないんですか?(笑)
-その気持ちわかる気はします(笑)ところで完成度のラインの高い/低いについて、どういう基準をお持ちですか?
Dragon Chop:人によって良い悪いがあるから感性的な話はここではしないけど、僕が言っている完成度というのは整合性の話、いかに変なことをしていないか。
クレイジーなプレイを計算でやっている人はカッコいい。無意識的というか適当にやってる時のクレイジーさを「カッコいい」と言う人もいるのかもしれないけど、実際プロに聞かせると恥ずかしいんですよ。正確な耳を持っている人に自分の作品を聴かせた時に「ぷっ、こいつまだ分かっていないな」と思われるのが恥ずかしいから完成度を上げたいんですよね。
もはや普通の人たちに聞いてもわからないようなレベルであっても、プロに聴かせて恥ずかしくないようにしたい。
-なるほど。
Dragon Chop:カッコいい、カッコよくないの判断はここでは言わないです。人によって違うからね、大事なのは整合性の問題。
-ドラゴンチョップさんの個人的な好みはありますか?
Dragon Chop:エレピ系が好きです。R Kelly など2000年代の R&B が大好き。Christina Milian とか懐かしいでしょ。
-曲の雰囲気が違うので一見気がつかないですね。
Dragon Chop:ああ、そうかもしれないですね。でも、大分そこから影響を受けている。18歳ぐらいの時に受験勉強をした時の友だし。
-R Kelly がですか?
Dragon Chop:そう、R Kelly が。もちろん Ashanti も Ja Rule も友。あの時の R&B シンガーはやばい人いっぱいいましたよね。後、だれが好きかな。Anthony Hamilton とか K-CI & JOJO とかね。
「I will never find another lover Sweet than you…(口ずさむ)」
-歌ものがお好きなんですね。
Dragon Chop:そうですね。
-Reggae Deejay としてもメロディを重視した Singjay のスタイルですか?
Dragon Chop:Singjay*2 を意識してはいません。今でもそうですけど、歌を大切にしています。やっぱりね、Deejay スタイルは早口でリリックもいっぱい書かなきゃいけないし、詰めると言葉が多すぎてかえって聞いている人に残りづらくなる。意外と間を作らないと頭に残らないんですよ。そこを考えた時に Deejay スタイルより歌を入れたほうが残るなって。
内容がない無意味な歌も作りたいんです。意味のない言葉を連呼したりすると、歌詞の内容を理解していなくても、その連呼だけが気持ちよくて歌っちゃたりする。それはもう、完全に心をゲットしたわけじゃないですか。
-メッセージ性が強い楽曲が多い印象ですが、今後はおっしゃられている”繰り返しによる手法”も使っていくご予定ですか?
Dragon Chop:作戦…。かなり活用していきたいですね。後、あれもそう。一言いってしばらく間を空けるやつ。
-自身の楽曲の『道産子』でも「どっさんこ、どっさんこ」と連呼されていますね。
Dragon Chop:「どっさんこ、どっさんこ 長靴のおっさんと…」意味も何にもない。
-「パーリラ、パーリラ…」が頭に浮かびました。
Dragon Chop:「パーリラ、パーリラ、パリラ、ハイハイ」って1回聴いたら何、超面白そうじゃんって(笑)
-『道産子』は興味深く聞かせていただきました。
Dragon Chop:ありがとうございます。あれはね、子供も「どっさんこ、どっさんこ」と言っちゃうんですよ。お母さんに「やめて」って。お母さんはあれがガンジャチューン*3だと分かっているから「変な歌を歌わせないでって言ったじゃん」と怒られる。
*1 ビッグチューン…名曲のこと。Reggae ではビッグチューンという言い方をする。
*2 Singjay…歌(シンガー)と Deejay の中間のスタイル。Reggae 特有の言い回し。
*3 ガンジャチューン…大麻を題材とした曲を指す。