Naoqki Doodah



※ページ毎にご本人の作品をお聴きになれます

構成する9つの作品

1. Sex Pistols – Never Mind The Bollocks, Here’s The Sex Pistols
正に今に至る道筋を着けてくれた、パンクの代名詞。ギターリフやバックビートは1950年代のチャック・ベリーのモロパクりだし、音楽的には特に新しい事はやって無いが、何か新しい不思議さ。そして先ずジョニー・ロットンの歌唱方法と自ら書く歌詞の内容と態度は革命的だった。当時未だ一般的には主流だったヒッピーの形骸化した残り香的な冗長で退屈な風潮を吹き飛ばし、シンプルな初期衝動でタフなストリートの世界にロック及びユースカルチャーをグイっと引き戻した功績はデカいでしょう。兎に角、良いバンド。

2. Son House – Death Letter Blues
質流れ中古品の安いエレキギターを手に入れて、地元仲間とパンクバンドを結成したは良いが、ドラマーが見つからなかった(結局は俺がその座に就かされた)16歳頃、パンクと同じ匂いを嗅ぎ取った音楽が初期のブルーズ。中でもこれは超濃厚なやつ。この人は戦前期に活躍した南部のデルタ・ブルーズマンだが、’60年代に再発見され、晩年はまた忙しく活動した、その時代の録音。椅子に座ってギターを弾きながら靴底を床にバンバン踏み鳴らすし、ギターのボディもパーカッションとしてバンバン叩く。木製だと直ぐ割れるとの理由から、金属製のドブロ・ギターをボトルネックで鳴らしている。凄いドスの効いた声と歌唱が合わさり、一人なのにめちゃくちゃパーカッシブでヘヴィーでラウドなバンドみたいなサウンド。

3. The Who – My Generation
ビートルズ、ストーンズ、アニマルズ、キンクス、ヤードバーズなど、イギリスのビートバンドが世界を席巻した所謂ブリティッシュ・インヴェージョン全盛の1965年にイギリスから登場した4ピース。ロンドン郊外の労働者階級の普通の若者達が圧倒的に派手な、画期的にラウドな演奏と新しい世界観で、先を行ってたと思う。態度や歌詞、曲想に代表される彼らのアナーキーな正直さもその後のパンクに直接影響を与えてる。それはやや先行したビートルズ、ストーンズ、キンクスなどもそうだったが、中でもフーは突出してる。そしてドラマーとしてやはり当時18,9歳のキース・ムーンの天才的気狂いプレイには完全にノックアウトされた。しかもこのバンドはギターがリズムでドラム&ベースがリードってアプローチも肉体的かつクレバー。ロックバンドのある種の雛形を作ったのに何か違和感が有るのは、社会の周縁部に追いやられ疎外された異人達の一部として存在するバンドだったからだと思う。ダダ、ヒップスター、ビートニク、モッド、パンク、ブルーズ、ジャズの態度にも通底する。

4. Various Artists – Club Ska ’67
このアルバムは1960年代ロンドン・モッズのトップDJで、後年にはザ・クラッシュも手掛けた天才 ガイ・スティーヴンスが、アイランド・レコーズ傘下の自身のレーベルから出したコンピレーション。ジャマイカの音楽に最初に打ちのめされたのは、この時代のサウンドだった。なんてプリミティブで洗練されて豊かな音楽、発明なんだろうか!日本の県ほどの規模の小さな島国からこんな大きな音楽とカルチャーが生まれた。今だに感動し続けている。

5. Thelonious Monk – Genius of Modern Music
モンクの独特の世界観は同時期のジャズの最前衛ビ・バップとモロにリンクしながらも、一線を画する音楽。リズムやハーモニー、作曲面でかなりぶっ飛んだ事を演っていたわけだが、頭デッカチでは無く、その根っこには諧謔と反骨、ブルーズやストライド、ブギウギ、ジェームズ・P・ジョンソン、デューク・エリントンなど、彼が育ったニューヨークのハーレムのヴァイブスを想像させる美しい曲ばかりで一生飽きない。

6. John Coltrane – Impressions
ジャズに、アフリカのみならずアラブ、アジアの原理、更には宇宙観を導入して成功している。この先駆者はサン・ラだが、特にこのコルトレーンのグループは、チャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスら同様、モダン・ジャズを大きく進化させて別次元に導いている。ロック、ファンク、レゲエ、テクノ、ハウス、ヒップホップにも影響を与えて来た。そして何と言ってもドラマーとして、このエルヴィン・ジョーンズのドラミングには完全に打ちのめされ、生き方まで変わった。エルヴィンをきっかけに全てのジャズドラマーを聴く事にした。

7. Ornette Coleman – Free Jazz
先ず一音目からやられる!何だ?これは?!。オーネットはこの一年半前のアトランティックの1stアルバム”ジャズ来たるべきもの”で、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデン、ビリー・ビギンズのピアノレスのカルテットによって和音を廃しながらビ・バップのエッセンスを新たに抽出し直し、何故かアンチ・ジャズとまで言わしめた前代未聞のジャズとして爆発した出発点で既に凄いが、この、エリック・ドルフィーらが加わったダブル・カルテット作品は更なる極みに達していて、今聴いても新鮮で刺激的な美しいアナーキー音楽だと感じる。ジャズの即興演奏からコードと小節と言う概念を取り外し、プリミティブなメロディとビートのみにしてしまった大胆不敵さ。カントリー・ブルーズ、更にはアフリカ音楽が元々そうだったものを、当時硬直しつつ有ったモダン・ジャズの世界に持ち込んだ快挙は果てしなくデカく、その影響はジャズも飛び越えて広がり、現在の我々も、例え知らずともその恩恵を受けている。

8. A Tribe Called Quest – Low End Theory
それまで以上に自分にヒップホップの重要性を意識させた作品。同時期のデ・ラ・ソウルやジャングル・ブラザーズらと共に新しい地平を切り拓いた。ストリート発の新しいジャズだとも思った。こんな自分と同世代のアーティスト達がニューヨーク郊外から続々と出て来たことも非常に嬉しかった。’90年代はリアルタイムの音楽として常に新譜を楽しみにしていたが、あれから約30年、今だに色褪せない。他にも DJ Premier 始め、この直後の Wu-Tang Clan, Beat Minors そして更に後の J. Dilla, Madlib, Flying Lotus…へと更新されて行ってる所に、アメリカ社会のサブカルチャーが未だに持つ自浄作用とダイナミズムを感じずにはいられない。

9. Various Artists – Panorama de Musique Concrete
第二次世界大戦後、’60年代にかけての初期電子音楽集。暖かな電子音が心地好い。自分の世代的に、幼少期に慣れ親しんだテレビの特撮ドラマなどの中ではこんな音がよく鳴っていたのを思い出す。ジャケットデザインもダダ的なタイポグラフィで好きだ。ちなみにもう一枚、vol. 2 が有り、それは同じ文字色デザインで地がオレンジ色。


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