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葛原りょう:そうそう、アホウドリさん。
葛原りょう:Twitter ですよ。ただ、このビル自体は 20 年前から知っていた。俺が 20 代でお酒まみれの頃、すぐ隣の居酒屋・檸檬屋さんの店長の住枝さんが詩人なんだけど、その人にお世話になった。今はスイーツの店になっているけど、詩人の荒川洋治*45さんが常連だったね。あとはグリコ・森永事件で有名な宮崎学が通っていた。俺は荒川洋治に会いたくて会いたくて、呑みに行っていたの。ただ、会えなくて会えなくて。
会ったのは宮崎学*46さんの方。
葛原りょう:根津に居酒屋「あるたい」という店があってね、そこが俺の 20 代の半ばで酔いつぶれだした時から 30 ぐらいまでずっと俺のねぐらだった。そこのママさんも詩人で画家だった。そこのママさんの「あるたい」がだめになって、そこで働いていた時期もあるし、継ぐのは俺しかいないみたいな気持ちもあった。
潰れた時、そこの不動産屋に「建物の構造上、飲み屋はもうだめです」と言われちゃって。それで物件を探していて Twitter で「古本屋さんがもう辞めます」というのをみかけて、すぐにアポをとった。実はその信天翁*47(あほうどり)さんとはムジカマジカの CD を置いてもらっていたり、少し付き合いがあったんだよね。居抜きで借りてね。だから、俺が出るとき天井とか直さなきゃいけなんだよな。出るにもお金かかるから俺はもう出れないのね(笑)。
葛原りょう:うん。だけど、バーをやる考えも開店直後からあったね。出版社としてやりながらバーが理想だった。本の時代ではないからね。
葛原りょう:そうね。
葛原りょう:俺が20代の後半かな。詩のボクシングの時代に高田馬場のベンズカフェ*49という朗読できる場があった。彼とはそこで出会った。不思議な顔とたたずまいだった。彼とも長い付き合いよね。
葛原りょう:本棚を横にしてそれをドリルと金具を使って足を作ってくれたりしたね。それで、俺が色塗って。
葛原りょう:そうそう、上地君はだいぶやってくれたよ。そこの窓のところも彼がやってくれた。
葛原りょう:4 年だね。bar を始めてすぐにコロナだからね。助成金もらわずにやったから大変だったね。
葛原りょう:全く書く時間がなくて「はたらけど はたらけど 猶わが生活楽にならざり ぢつと手を見る」という歌を見て今の俺だって。働き過ぎだ。
葛原りょう:うん、働いている。20種類以上……。だからあまり恋愛をしてないのよ。時間がない。でも、恋愛体質でもあるの。女性とのロマンを追いかけたいね。
葛原りょう:近所の苺屋のママさんがとても綺麗で、奢るから今度、ワインでも呑みに行こうよ。そこのママさんがここで働いてくれないかなって(笑)。
葛原りょう:ここは恋愛を持ち込まないで bar をやっている。ジャンルはないし壁がないからこれはこれ、あれはあれというのがなくて全部一緒。広い世界を創ってきた。
葛原りょう:俺の詩には「あなた」や「きみ」はが多いからね。だけど、それはほとんどの場合、ある特定の人ではないんですよ。そういう点ではプラトニックかも。恋愛というか求めているのかな。何かを希求する、人を求める、そういった一貫かもしれない。だから「私のことを愛してないでしょ」と良く言われるね。
葛原りょう:すごいダサいんだけど、そうかもしれないと思いながら愛ってなんだって。……愛って何?ちょっと教えてくれるかな。本当の愛って。
葛原りょう:自己愛とかはわかるんだよ。普遍的なアガぺー*50という愛もわかるんですよ。
葛原りょう:エロスもわかるのよ。それも含めてだけど、愛って。
葛原りょう:なるほどね。
葛原りょう:なるほどね。俺は無私じゃなかったのか(笑)。
葛原りょう:愛ってなんだろうね。これが言えたらいい詩が生まれるのかもね。
葛原りょう:うん。そうだね。「友達 100 人できるかな」から始まって希求が多いね。
葛原りょう:そういうのは特に考えていないね。理想はもう少し小説を書きたいとかそういう具合だね。さすがにガンジーになりたいとかはね。思った時期はあったけどね。マハトマって言われたいとかね。ただ、言われたいんじゃダメだ(笑)。
塩の道の行進など、要するに行動する人。だから常に社会的な人間でありたいとはすごい思っている。
葛原りょう:チェ・ゲバラが大好きだったね。好きすぎて共産党系列の方々に少し融通してもらって、30歳ぐらいのときにキューバに行ったんですよ。キューバで10日間、ハバナシティからサンチェコデクーバまでね。革命があった場所、サンタクララの市街戦*52があった場所とか、いろんなところを周ったね。とてもよかった。
キューバから帰るのが嫌でさ、俺はもうキューバ人になろうかと思った。
葛原りょう:キューバの人と溶け込んじゃった。日本人だと気を遣うことが多いのね。でも、キューバだと気を遣うことが少ないのね。街歩いていたら、若者が広場でたむろしていて、そいつがラム酒をポンッと投げてきてアミーゴになる。
葛原りょう:「写真を撮ってくれ」って、みんな写真を撮られたがっているのね。昔の車もあって時が止まっていて、その写真を撮ったりもした。当時は、輸入が止められていて部品が無くて直せないのさ。俺が電車で移動した初日、止まっちゃって6時間ぐらい足止めをくらった。今ある物で修理をしているんだよな。ハバナの首都の電車がだよ。
それだけ、貧乏なんだよね。農業やっていてコーヒー園があるけど、草刈り機ひとつない。みんな貧しい。でも、みんな幸せそう。物質の豊かさを知らなくて、政治家まで貧しいから不満がない。アメリカとキューバは国交を回復したけど、今またダメになっているんだよね。
葛原りょう:そうだね。キューバにもう一度いきたい。キューバも詩を大切にしている。特にパブロネルーダ*53の詩をすごく大事にしているの。ゲバラは詩人の気質があって、シエラネバダ山脈*54に立て籠もっていたとき、「Radio Rebelde」というラジオ番組を作って、そこで詩を朗読したり詩人を紹介しているんだよね。
ラジオの大きさをその時から認識している。今、俺はラジオもやっているんだけど、それはそこからきているのかな。
葛原りょう:もう一年半ぐらいになるかな。
葛原りょう:詩人のメインパーソナリティがいて、メインパフォーマーとして呼ばれている。パーソナリティの人が喋って作っているんだけど、俺は基本朗読でトークはしないね。ラジオ成田さんは文化的ないいラジオだね。
※Archives から「徳重玻璃と葛原りょうの Flip-Flap Notes♪ (ラジオ成田83.7MHz)」がご視聴いただけます
葛原りょう:一ヶ月に一回の収録だね。
葛原りょう:もう 3 年目になるのか。わからないけど、地元の男塾と言うのがあって谷中愛好会といって若者たちがたむろしている場所があった。それを経由して知り合ったね。
葛原りょう:「町おこしをしたいね」という動きだね。その飲み会で森君の鳥鍋を食べたらとても美味しくて。
葛原りょう:そうです。もう運命共同体ですよ。でも、2人だとずっと自転車操業で君たちも経営に入ってくんないかなって(笑)。
*45 荒川洋治…現代詩作家、批評家。詩書出版の紫陽社の経営にもあたる。
*46 宮崎学…日本の評論家・ノンフィクション作家・小説家。自伝的著作「突破者」や、暴力団や社会問題を扱った著作で知られる。
*47 信天翁(あほうどり)…古書2010年から2019年の2月まで営業をしていた古本屋。
*48 上地さん…スタンダップコメディアンの Uechi Yasushi。日本語、英語を使い都内で活動中。
*49 ベンズカフェ…高田馬場のカフェ/イベントスペース。現在は閉店している。
*50 アガペー…キリスト教における神学概念。神の人間に対する「愛」を表す。
*51 エロス…ギリシャ神話では愛を司る神の名前。一般的には、男女の間に生じる愛の感情のことを表す概念として用いられる。
*52 サンタクララの市街戦…1958年12月下旬の一連の出来事。チェ・ゲバラ率いる革命軍の勝利を決定づけた重要な戦いとして知られる。
*53 パブロネルーダ…チリの詩人、外交官、政治家。チリの国民的詩人として知られる。
*54 シエラネバダ山脈…アメリカ合衆国カリフォルニア州東部を縦貫する山脈。