グッナイ小形

タイトル:くらし

※本人の楽曲を聞きながらインタビューを読めます

『最初は親にもらったワープロですよね。仕事で使ってたワープロ。歌詞をコピーして打ち始める』

4.音楽、創作、表現活動を始めるきっかけを教えて下さい

グッナイ小形:はじめて買ったのが井上陽水のベストだったんですよ。その始まりもすごいあれなんですけど、小学校の時に、「僕の夏休み」というゲームがあってプレステ2で。小学生4年生ぐらいの時にうちにゲームがなくて、友達の家でずっと、やってたんですよ。

何とか頑張って、虫とか集めたりしていて、一番最後に井上陽水の少年時代が流れてエンディングを迎えるんですけど、その時に初めてウルフルズの「ええねん」のCDと井上陽水の「少年時代」が入った赤いベストみたいなのを買って。

初めてフォークを聞いたのはそこだと思うんだよね。そこから、ちょうど、なんだろ、最後にCDがよく売れた時代だったと思うんですけど、2000年ぐらい、2000,2001年ぐらい、オレンジレンジとかロードオブメジャーとか、175Rとか、あのあたり、本当に一番最後の音楽の純化というか、文化的にもそういう時代な気がして、周りにどんどんと音楽としてすごい純化されたものが、モンパチだったりとか、そういうのがバッと出てきて、そこらへんから音楽にはまった。

最初は親にもらったワープロですよね。仕事で使ってたワープロ。歌詞をコピーして打ち始める。詩を書き始めるきっかけ。モンパチかなんかの歌詞をずっと、ワープロで書いて、それを印刷して壁に貼ったりしていたんですよ。

-音楽を聴いて、ギターを練習して、コードを真似するとかはありそうですが、歌詞を真似するのは面白いですね。

グッナイ小形:自分は歌詞を作っていないですけど、「ライオンハート」とかをいい歌詞だなとずっと眺めていた。
そういう感じのこじれた少年だったんじゃないですかね。

-真似して書いて、歌詞を鑑賞していたんですね。

グッナイ小形:そうそう、そういうところから詩は始まった。
そうやって、周りに音楽が溢れて、毎週毎週ヒットチャートが楽しみで、その時はずっとラジオを聞いていて、北海道のローカルの。今週のトップ10とかがあって、オリコンもありつつもリクエスト昔のヤツが入っていたり、全然知らないヤツとかも。

そういう情報源はずっとラジオだったんで、小学校、中学校ぐらいまではずっとラジオで。そこら辺を毎日追ってて、「タッキー&翼」めっちゃ良い曲書くじゃんみたいな。そういう歌詞をコピーして眺めるのが好きで、その流れで一番最初に書き始めて。

『完全にそれですね。完全に新曲を作るためだけに歩いている。やっぱりペースが落ちてきている。』

5.今後の目標について教えて下さい

グッナイ小形:やっぱりあれですね。良い曲を創るに尽きますね。そういう意味では森山直太朗みたくなりたい。売れた1曲があって、でももっともっと知らない曲、めちゃくちゃ埋もれていて、それをわかっている人がたくさんいて。

そういう状態で売れたいというか、そういう売れ方をしたい。売れるならね。曲ありきで売れたいですね。もっとわかりやすくて、もっといい曲を作り続けるだけが目標ですね。それしか、モチベーションがない。

あんまり、正直『正気です。』に入っているやつも、多分僕も心から楽しんで歌えるやつがあんまりなくて。ここに入っていても入ってなくても、本当に新しい曲にしかモチベーションがなくて、「できたらできた」でいいんすよ。できた作品は。

後は出してみたいな。後は、僕の問題じゃなくて本当にリスナーさんの問題ですよね。その曲をずっと聞いてくれているとか。

-子離れみたいなもんですかね。

グッナイ小形:本当に子どもです。生みました。
後の育て方は、聞いてくれる人の反応で、もう、僕良いですというか。

曲っていう意味だけで言ってしまえば、産むだけ産んで、そこから育てるのは僕の話じゃない。自分の言葉は、出ちゃったら自分じゃないみたいなところはちょっとありますね。
出たものを大切にできないのはちょっとありますね。時間が経てば、そこからまた、ちょいちょい変わるかもしれないけど。

そういう曲を常に持っておくというのと、やっぱり常に作り続けられる状態、自分の生活だったり、姿勢だったり。

-さっき、おっしゃた空にしてるのもそのため?

グッナイ小形:完全にそれですね。完全に新曲を作るためだけに歩いている。やっぱりペースが落ちてきている。なかなか出来ないんですよね。

-その変化というのは?

グッナイ小形:前はバンバン作れていたんですけど、だいぶ落ちてますね。そういう意味では。情報が増えすぎちゃって、やっぱりやっていくうちに。例えば、前こういう曲作ったよな、かぶっちゃうよなとか。

新しいものって考えた時にどんどんと材料が少なくなってきて、そうやって凝り固まっちゃって、「そうじゃなくて作りたいものはこれだよ」とそこが今のあれかな。なかなかそこらへんがうまいこと作れない、作れなくなった。

ライブもすればするほど印象もあるし、ファンとの関係、「小形くんこういう人なんだな」って。守らなきゃみたいなところもどっかありますし、そういうところでちょっと構えちゃうようにはどんどんなってきちゃっている。いい意味でも悪い意味でも。

僕がそれしか知らなかっただけで、創作の仕方もしかり、空の状態にするというのも、それしか知らなかったし。また、変わるかもしれないし。それは自分が変わるのか、そのままでいるのかさえも分からなくなってきた状態。分かりやすく言うと、即興みたいなのがあんまり出来なくなってきた。

前はバンバン出てきたのが、なんだろう、そこまで頭から出てこなくなった。

そういう変化はちょっとありますね。だからずっと「フリースタイルダンジョン※1」とか見てるし、あれすごいっすよね。こないだ般若とR指定のヤツ見て、ああいうフレキシブルさはミュージシャンにはない。ミュージシャンなんですけどね。ああいう人たちの方が難しいじゃないですか。

※1 フリースタイルダンジョン・・・テレビ朝日にて、毎週水曜1:26 – 1:56(火曜深夜)(JST)に放送中の番組。

そういう、ずっと僕よりもフラットでそういう状態なのかなと。すぐ出てこないですから。

後、売れるというのは結果の話なので、売れようと思ってツイッター頑張ったりとか、そういうのは完全に向いていない。プロモーションをするとか、そういうのすごい、めちゃくちゃ大事なんですけど、曲の強度なんで一番大事なのは。それをしっかりずっと保ってれば売れるんですよ。絶対。

路上でもそうだし。月曜日の朝8時から高円寺駅でやっても、金曜日の夜の10時から、めっちゃ人いるときに新宿駅でやっても、集まんないものは集まんないし、環境の要因のせいは絶対あるけど、それをやっぱり自分はできるんだと思っちゃうと。

月曜の朝6時からやっても集まる人は集まるんすよ。良い音楽には人が止まるし。忘れたくないとこですね。それは。

『それでせっかくいい音楽が行き詰ったりするわけで、それだったら、チケット制なんてなくした方がいい』

6.お金についてどう思いますか

グッナイ小形:大変な問題ですよ。
お金、僕に聞きますかっていうぐらい(笑)

お金は…、あったにこしたこともないし、でもやっぱり結局お金って何かに使うわけだし、何かに使うためにあるべきもので、僕はそれが酒だったりとか、「めっちゃいいもん食いてぇ」とか、「うまいもんずっと食っててぇ」とか。そういうのがしっかり定まった使い方、やっぱり、使ってあげないとお金もかわいそう、言い訳じゃないけど。

基本的にあるときはばっーと使っちゃうタイプなんで、それも自分のためとか、ギター買いたいとかあんまりないんですけど、ばっておごったり、なんとか、やっぱり、誰かのために自分も含めて、そういう風に使っていきたい。そういう意味ではめちゃくちゃ欲しいですけど。

ミュージシャンとしてのお金の生まれ方って。ぼくの場合は、全然動員ないんで、その客に今の音楽で言ったら、客にお金がついてくるみたいな、それがありきなんですけど、それが一番辛いんすよ。ミュージシャンって。

辛くないですか。ミュージシャンにとっての収入って意味でのお金は、完全に動員になってくるんですよ。現時点では。
後、CD販売とか。それが単純についてくればいいんですけど、そこにさっき言ったプロモーションだったりとか、ツイッターの頑張りとか、そういうのが入ってきてしまうというのが本当にミュージシャン、今も全員がプロモーターなんで、そこら辺についてはもう本当に苦しいですよね。

「CMのタイアップとかでこれぐらいのお金です」というのは全く関係ないことだと思うんです。
企業さんとか相手の人がこの価値だと言ってくれてこの価値、もちろんそれに対してのレスポンシビリティもありますけど、そういう出方をもっとしたい。難しいですよね。

ライブの動員の話になっちゃいますけども、それで全部決まっちゃう。それで呼ばれる回数も決まっちゃう、待遇も決まっちゃう状態にライブハウスがなっているから、しょうがないんだけど。それでせっかくいい音楽が行き詰ったりするわけで、それだったら、チケット制なんてなくした方がいいと個人的には思います。

みんな投げ銭にすればいい。

-観客も気合い入って見そうですもんね。

グッナイ小形:投票とか、投票はちょっと残酷かもしれないですけど。

-投げ銭はその人に対して投げる、それはコミュニケーションとしても面白いですね。

グッナイ小形:その方がだってライブハウスもやっている意味あると思うんですよね。ここだったら面白そうなことやっているから、このライブハウスに行くって、すごく直接的なモチベーションになるわけじゃないですか。

あの人を見に行くというのは、どれだけ残酷で辛いことか。別にそういう人たちで囲いたいわけではないし、色んな人に見てもらいたい。

ライブハウスに人が来ない。本当に来ないですよね。ライブハウスに来る人ほとんどいないんじゃないですか。それだったら、全部投げ銭にして。もし、自分でそういう場所を作るなら、そういう場にして、その何割かをこちらが支払うと。そういう方が絶対いいと思う。

-ぜひ、その場を作ってください。

グッナイ小形:そういうやり方の方が、いいお金のまわり方の気がするんですよね。純粋に音楽を楽しめない、やっている方も見ている方も。今のシステムだったら。活動もできない。

投げ銭は投げ銭でまた、話がいろいろありますけど、そのシステムにずっと疑問はありますよね。
ちっちゃい頃から音楽やっていて、高校生ぐらいからライブハウスに出た身ではないので、なおさらすごい違和感があった。

ノルマがあって、このノルマをやるために客を呼ばなきゃいけない。受付で誰を見に来たって言わなきゃいけないって。

北海道から東京にきて、はじめてライブハウスに行ったとき、友部さんと奇妙さんの2マンで、受付で「どちらを観に来ましたか?」と聞かれてエッと思った。なんすか、それみたいな。「えっ、友部さんです」と。そのシステムは未だに違和感がありますね。

『みんな生きてていいんだと思える、安心してそうやって思えてたら、きっともっと変わってただろうし』

7.音楽をやっていなかったら何をやっていますか

グッナイ小形:多分、起業してますね。今でもしたいですもんね。何をやりたいとかもなく起業がしたい。カフェをやり始めたのも起業がしたくて、生きていることの目標は何となく決まっていて、別にそれが今音楽であって、それが起業だったりとか、そういう形式をとる、とらないだけの話で。

割とずっと誰かの居場所を作るみたいな。そういう居場所を作りたいなぁというのがずっと多分。音楽でないのであれば多分起業して自分で模索しながらそういうのをやる。

-本質的には同じということですよね。

グッナイ小形:同じだと思いますね。音楽をやっていても、起業していても、あんまり変わらない人間だと思います。経営的なセンスは何もないので、自分の身の回りもできていないので、何かお金を回すということはできないですね。

ただ、やっぱりそういうのを自分でずっとやりたいなぁと。

-根っこにあるのは何なのでしょうか?

グッナイ小形:元々ものすごい目立ちたがり屋で。
小学校の時に6回生徒会長に立候補して、6回落ちた。なんかやりたいというエネルギーだけすごい強くて、全部空回りしちゃって、友達とあまりうまくいかなかった。あんまり周りとうまくコミュニケーションとれなかったり、いじめられたりとか。かっこばかりつけることだけ覚えて、そういう少年、青年時代だった。

すごいいつも孤独で、そのくせすごい寂しいから、毎日外で誰かと遊んでいたいみたいな。極度の寂しがり屋ってのがずっとあって。毎日それで家にいることができなかった。ずっと外でなんかやりたかった。でも、うまく関係が築けなかった。

-思いと状況がマッチしないんですね。

グッナイ小形:音楽を始めるまで、ものすごい長かった。
だから多分そういうところが、一番でかい。自分のその思いを保ったまま、昇華できるやり方として、同時に誰かを救いたい。そういう人たちも生きてていいんだよって、そういう風にちゃんと安心できるように音を自分で発信したりとか。

曲的にもそうだと思う。みんな生きてていいんだと思える、安心してそうやって思えてたら、きっともっと変わってただろうし。色んな人、色んなことが変わっていて、そういう環境に僕は出会えなかった。だから、どこかで作りたい。というのはずっと。

本当にそれが音楽なだけだと思うんですよ。

-コンプレックスという感じでしょうか?

グッナイ小形:もう、コンプレックス。もうもうもう、今もずっとですもん。

ある意味、自分を守るためでもあり、他人を守るためでもあるんですけど、何かしらそういう思いがあったらうまくできる場所、そういう場所を作りたいって思うのは、ずっとこれから考えていくことだと、音楽を辞めても続けても考えていきたい。根源ちゃあ根源かもしれないですね。

『平沢進的な電子音、ウィンウィンとしたやつも好奇心としてはあるけど、やっぱり根っこは弾き語り』

8.表現形式に関するこだわりを教えて下さい

-あまりこだわりがないとおっしゃていましたが、いかがでしょうか?

グッナイ小形:ああそうですね。でもやっぱり弾き語りっていうのは、やっぱり、一番言葉がシンプルに入ってくるんですよね。そういうものを大事にしたい、でもやっぱり、いまだにバンドのサウンドにまだまだ慣れないというのもあるし。一番もったいないなと思うのは、バンドのライブを見に行ったりとか対バンしたりとか、ボーカルが聞こえない。

よくあるじゃないですか、こいつ何言ってんだって。単純に物理的に何言っているかわかんない。ボーカルが弱すぎたりとか癖が強すぎたり、色々問題はあると思うんですけど。聞こえないというのは、致命的じゃないですか。自分何歌ってんだって。歌詞が伝わりやすい状況が一番大事かな。一番耳触りがいい、入りやすいのがいい。

やっぱり、後は友部さんもずっと一人じゃないですか。あくまでも伴奏だと思ってるんでギターは、究極的に言うと。僕が弾かなかったら僕が弾かなくていい。今もう、すごい慣れちゃっているだけで。もっとフィットするのがあれば、単純に言葉がちゃんと聞こえてくるという状態で、伝わりやすいのであれば。

-言葉がきちんと聞こえることは前提で、やってみたい形態とかあるんですか?

グッナイ小形:やってみたい。楽器とか一緒にやりたいとかありますね。バンドをワンマンでやるのも、ある意味、それにちょっと飽きちゃっている自分もどっかいて、だから、シャンハイ・オーケストラ※3とかもあって。

※3 グッドナイト・シャンハイ・オーケストラ・・・7/15(取材後)に行われたバースデイワンマンにて結成された大所帯バンドのこと

あれは、小形とは全く別人格で、そういう好奇心も一応どっかにもあって、基本的なスタイルは弾き語り。やってみたい楽器はバンジョーとか、アイリッシュ、カントリーだったり、ジャズだったり、歌い方がまた違ったり、拍の置き方とか違ったりとか。

平沢進的な電子音、ウィンウィンとしたやつも好奇心としてはあるけど、やっぱり根っこは弾き語り。それは大事。

逆にもう、この一本とこの歌だけでどこまでいけるか、みたいなのももちろんありますし、後はやっぱり今でもどこかで詩人になりたいところはありますね。言葉だけでやってみたいとか。ありますね。音楽じゃなくてもいいみたいなところは。詩だけで何とかしてみる、というところへの憧れはある。


ShareButton:

返信する