関口竜平(本屋lighthouse)

『リフティングはわかりやすくて、やればやるほど回数が増えていくんですね』

6.子どもの頃のエピソードを教えて下さい

関口竜平:やはり、サッカーが大きいですね。

-怪我はもちろんあると思いますが、サッカーで心に残っていることは何ですか?

関口竜平:リフティングってあるじゃないですか。リフティングはすごい地味な練習でボールを落とさずに黙々とやるだけなんですが、あれを小学校3年生ぐらいで練習し始めて夏休みの自由研究にしたんですよ。リフティングの回数を毎日記録して提出しました。先生がどう思ったか知りませんが(笑)。そのあとも家の前の道路で小学6年生ぐらいまで続けていて、最終的に2000回ぐらいはできるようになりました。ちなみに1000回ぐらいで1時間かかるんですけど、その経験があるからこそ集中力がついたと思います。

-一点に集中する力ですね。

道路だから車が来るんですよ。完全に集中すると危ないから耳でなんとなく車の音を聞いている。車が来ると頑張ってリフティングは続けながら移動して端に寄るんです。記録更新が掛かっている時は特に必死です(笑)

あと、リフティングがうまくいかなくて家の壁に向かっていらいらしながらボールを蹴ると、壁の下のほうにある出っぱってるところで跳ね返って。そういうのを繰り返していると、「いらいらした時にものに当たってもいいことはない」という学びを身を持って体験できます(笑)。

-リフティングひとつとっても、学びですね。

関口竜平:リフティングはわかりやすくて、やればやるほど回数が増えていくんですね。そういう意味では、「努力すれば結果になる」ということが実感できたし、「辛い思いをしても逃げずに続けていればいい結果になって返ってくる」と子どもの頃に体験しておいて本当によかったですね。

あとは、父親がサッカーの試合を見に来るのが嫌でしたね(笑)。今は全然大丈夫ですけど、子どもの頃はだめでしたね。父親は僕がプロになりたいと思っているのを知っているから、厳しかった。大体怒られるんですよね。「今日は絶対怒られるな」と思うようなプレーをしていると、家に帰ってドアを開ける前に雰囲気を感じとってしまう。

「リビングの電気がついていない。これは説教タイムだ」って(笑)

『選ばざるを得なかった道できちんとやっていれば、おのずとその道が正解になると知った』

7.生きていく上でのこだわりや、どのような人生にしたいかを教えて下さい

関口竜平:できる限り長生きしたいですね。300年くらい生きられるなら、是非ともそうしたい。長いスパンでの変化を見たいというような欲があって、たとえばどういう風に社会がなっていくのかを見たいといったことがあります。300年後の日本と今の日本、地続きになっている部分も含めて長く見たいですね。

それに、今やりたいことがたくさんあるし、これがずっと続く、つまりいつまでたってもやりたいことだらけの人生になるだろうと思っていて、でも300年ぐらい生きられたらなんとか解消できると思っています(笑)

-300年あればライブハウスも地下にいっぱいできそうですね。

関口竜平:そうですね(笑)

それだけ生きれば知識も経験も積み重なっているから、やりたいことももっとうまくやれているだろうし、あとは体力だけ。そこは科学技術で何とかしてもらって(笑)

割と不老不死はアリだと思っています。自分の知っている人がいなくなって寂しいというのも理解できるんですけど、それだけ長く生きていれば知っている人もどんどんと増えるだろうと。

-300年は夢と怖さがある話ですね。

関口竜平:そうですね。今の話もひとつの野望ではあるんですけど、僕は死ぬ瞬間も悔しいと思っているはずです。

「あれをやれていない」とか「もっとこうしたいな」とか。でもそういう風に死にたいとも思っています。「これで満足だ」と死にたくはないんですよ。出来れば「くそぉ、どうにかこうにかして来世に記憶を引き継いでやる!」と思いながら消えていきたい(笑)

-取材を通して、あきらめない姿勢を感じました。

関口竜平:それはありますね。何をやっていても失敗には「ならない」と思っているので、あきらめずにいられるのもそこがあって、失敗に「ならないようにすればいい/しなければいい」という考え方ですね。

それこそサッカーがそうなんですよ。辞めた時に「この12年間はなんだったんだ」と、友達と遊びもせずにサッカーボールだけ蹴ってきて、「体育祭の打ち上げいきたかったな」とか思ったんですけど、その後の人生でサッカーに費やした時間は活きている。選ばざるを得なかった道できちんとやっていれば、おのずとその道が正解になると知ったんですよね。

-他人のせいにしない素敵な考え方ですね。

必要以上に落ち込まないのは、そういうところにあるのかもしれないですね。「こういうルートになったんですね」という淡々とした感じです。サッカー選手になったらなったで、違う出会いもあったと思うけど、ただそれだけのことなんだなって。

大学を卒業して就職がうまくいかずに院に行ったのもそうだし、院を出た後に「業界を勉強したい」と出版取次会社に入って、でも全く関係のないグループ企業に配属になって、1ヶ月ぐらいで辞めたのもそう。

今までの蓄積があったから、辞めた瞬間から自分の人生はこういうルートと切り替えられた。それで気がつけば小屋が建っていて、その結果、本屋を始めたことも知ってもらえて、空いている物件を教えてもらえた。そういう風に繋がっているのかな、と。

そういうところが根本の考え方としてあります。とにかく生きてりゃ「失敗」にはならないだろう、という考え方ですね。そのために心身のケアが一番大事。やりたいことをやって、やりたくないことをやらない環境をいかに作るかです。


【店主情報】

関口竜平


【プロフィール】
関口竜平(せきぐちりょうへい)。1993年2月生まれ。20歳の頃から卵・乳製品アレルギー持ちとなり、以来ビアードパパのシュークリームを想う日々を送っている。千葉ロッテマリーンズファンクラブ会員。

<本屋lighthouse>
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【Publication】


ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所

Date:2023年04月刊 / Size:46判256p
大月書店


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