T-MAN

“消えた実家” ポジティブを発信し続けられる T-MAN という生き方

タイトル:くりかえし

※本人の楽曲を聴きながらインタビューを読めます

ジャマイカの音楽 Reggae にのせて、力強いメッセージを発信し続けるT-MANさん。
関わった全ての人々にいい影響を与えようとするその姿勢の裏には、全てをさらけだす潔さがありました。

価値観を一新した幼少期の馬糞事件。伝説のdeejay SuperCat の解釈。借金により消え去った実家、そこから生まれたメッセージ。様々な話を伺うことができました。太陽に向かい伸びる雑草のように、たくましく生きる姿は多くの人に元気と喜びを与えるはずです。
野性的な発想力と人間としてのあり方、ぜひ受け取ってください。

『音楽は行動ではないから、聞いたり発信したりして何かが補われている』

<インタビュー>

1.なぜ音楽をやっているのですか?

T-MAN:やっぱり好きやし、喜怒哀楽があって、「面白い」「楽しい」「悲しい」「しんどい」とか、どんな時でも何かしら音楽がそばにあって、辛い時はこれを聞こうとか、楽しいからこれを聴いてもっと楽しくなろうとか、そこに自分も居たくて。
人ってよく幸せになりたいと言う。幸せな部分、音楽のあるところにいたい。自分が音楽の一人でありたい。
ちょっとでも周りが元気になったりポジティブな影響があったり、そういうところにずっといたい。

感情の中に音楽が含まれているイメージ。そこで過ごしておきたい。

-それはなぜ音楽なのですか?

T-MAN:おかんがエレクトーンの先生をしていて、おやじがピアノの調律師をしていて、それが関係しているかどうかわからないけど、音楽がすごい好きで、ずっと。
何のジャンルとかもなく、好き。悪い気持ちで音楽を創る人って絶対いないから、人に何か感動を与えたいと思って音楽を創ったり、楽しいから作ったり、音楽を創る人って何かしらポジティブな理由が絶対あるというか。

HIPHOP とかでも Bad な感じのスタイルもあるけど、歌っている人はカッコいいと思ってほしい、伝えたい、何かがあるから作っていると思う。
要はポジティブにずっと触れているというか。昔のクラシック、悲しさだけを表現したクラシックはいっぱいあるかもしれないけど、それも芸術に変えようというポジティブな理由がそこにはあって。
結局はポジティブに触れている。

-悲しみや悪さも、その根本にはポジティブがあるということですね。

T-MAN:結局、ただ気持ちいい。気持ちのいいところに居たい。

-理由が明確ですね。

T-MAN:音楽はずっと居場所を作ってくれるというか、どんな感情の時でも「ここに居ていいよ」と言ってくれている気がする。俺はそう捉えている。もしかしたら、音楽をやる側にいることで安心しようとしているのかもしれない。

-音楽に触れなくなると、どうなりそうとかありますか?

T-MAN:触れなくなった時、何しているやろう。想像つかないけど、多分ずっとお酒を飲んでいる(笑)
現実逃避しているんじゃないかな。音楽を聴かない日がない。どないかして、音楽以外のことで満たそうとするんじゃないかなと。

-ずっと渇いている感覚があるということですか?

T-MAN:うん、ある。あると思う。渇く。潤すために補おうとする。
音楽でしか補えないものってあって、腹減ったら食べる食欲、眠いから寝る睡眠とか色々あるけど、音楽で満たされるものって目には見えない。
寝るとか食べるとか行動というものではない。音楽は行動ではないから、聞いたり発信したりして何かが補われている。脳みその何か、心の何かが。だから、それを満たすのって難しい。

友達と遊ぶのももちろん楽しいし家族と過ごすのも楽しい、でも音楽ってまた別の胃袋みたいな感じ。それぞれに欲求の胃袋があるとすれば、睡眠、食事、友達、彼女、音楽、それぞれの胃袋。
特に音楽のところだけ、何かある。そんな気がする。無音だったら一番しんどい。

-その感覚を無理に言葉で表せますでしょうか

T-MAN:なんやろ。背中、背中とみぞおちにかけて温かくなる。

-ありがとうございます。

T-MAN:お腹とか背中やなぁ。聞いていなかったら体調崩しそうじゃない。わからんけど、便通悪くなりそうな気がする。音楽はお腹に良い気がするなぁ。

『創作の方法、俺はバナナ食って散歩する』

2.創作の方法について教えて下さい

T-MAN:止まりながら創るのがすごい苦手で、歩いたり散歩したりして作る。できるだけゆっくり歩いたりする。早歩きだったら、色々と追いつかない。
散歩していたら部屋の中より色んな景色が見えるから、勝手に視覚的な情報が増えるから、思いつくこととかも増える。後 Reggae でも言うけど、ハートビート。心臓の鼓動で曲を作る。

ただ実際問題、心臓の音を聴きながら歌を作るの難しい。だから、トントントンって歩く速さで曲を考えたりすることが多いな。

-T-MANさんらしい作り方ですね。人間から出てきている感じというか。

T-MAN:歩いている方がその分情報が増えるし、人が生きている自然なリズムで曲とかできるなぁと思って。

-逆に今まで歩いていなくて作った曲とかあるのですか?

T-MAN:ないなぁ。全部歩く。でも、自転車に乗っているときに思いついたリリックは自転車を止めて、携帯にメモする。今便利やからそういうのはする。作りにかかった場合は歩きながらメモ録る。後、めっちゃ歩く。

-歩いていても全然浮かばない時もありますか?

T-MAN:めっちゃある。次リリースする曲は「ある」という曲やねん。それも全部歩いて作った。歩いているとポジティブになるし、運動は”運”を”動かす”と書くやろ。いいことあんねん。だから、歩いていたらポジティブなるねん。

-調子悪いときは運動をするのが手っ取り早かったりしますもんね。

T-MAN:後、バナナやなぁ。

-バナナ!!

T-MAN:バナナは裏切らへん。バナナとヨーグルト食べて歩いていたら大体うまくいく。……という宗教を開こうかな(笑)

-なぜバナナなんですか?

T-MAN:バナナ好き。クルーの Shock Dem88 *1 もバナナ好きやし、彼らに影響を受けている。

-クルーの中では誰が一番バナナ好きなんですか?

T-MAN:Shock Dem88 に TAKUWAAN という、ずっと地球上を歩いているやつがいて。
大阪の大国町に住んでいた時に、そいつがいいタイミングで外国から帰ってきていて、ちょっと一緒に居てた。その時にずっとバナナを食べていた。
TAKUWAAN が色んな世界を渡り歩いた結果、バナナは裏切らないって。バナナやっぱりめっちゃよくて、マジで良くて。
そこからちょっと人生変わった(笑)会う友達とかみんなにすすめる。バナナ食った方がいい。

-了解です。

T-MAN:結構どこでも売っているから、フィリピン産とかあるけど、”どこ産”とか関係ない。何産でもいいから、バナナ食ったらマジでいい。マジですすめる、バナナは。

-どういう面でバナナはいいのですか?

T-MAN:良いこと思いつきやすいし、悪いことを想像しにくい。

-バナナで防ぐんですね。

T-MAN:アンテナが増える。

-バナナと音楽も関係があるんですか?

T-MAN:絶対あると思う。明るい国の方、南の方、レゲエでもよくバナナが出てくる。
Lecture Riddim*2 の Sweet Jamaica という曲でも「バナナ」って出てくる。Reggae ってめっちゃバナナ出てくる。あの人らって無敵みたいな性格してるやん。大阪のおばちゃんにバナナを足したみたいな性格してるやん。

-笑

T-MAN:ジャマイカ人ってバナナめっちゃ好き。俺も結構、バナナ好きやねん。創作の方法、俺はバナナ食って散歩する。


*1…都内を中心に活躍するハードコアなReggae Sound。
*2…レーベル Fugitives によって発表された Riddim、 Reggae ではバックトラック(オケ)に名称をつけるのが習わし。

『自分で知識とか知恵を生きるために使っていて、それを人に発信していないけど、周りの人が勝手にそれを汲みとる』

3.好きなアーティスト、憧れのアーティストを教えて下さい

T-MAN:Manfred Mann。イギリスのバンド。この人らに「Do Wah Diddy Diddy*3」という曲があって、何か知らんけどめっちゃ好きで、 THE BLUE HEARTS のめっちゃ前の取材みたいなのを見ていたら、甲本ヒロトが階段みたいなところに座って「なぜ、音楽を始めたのですか」と聞かれていて、そこで「Do Wah Diddy Diddy」が出てきた。
俺、今真似しているみたいになっているねんけど、甲本ヒロトも好きなんやと思ってそこからもっと「Do Wah Diddy Diddy」が好きになった。

どっちかと言ったら、民族音楽みたいな調。「走れコータロー」のにおいがする音楽。牧場の香りがする。

-他に好きなアーティストを教えて下さい。

好きなのは甲本ヒロト。後、甲斐バンド。Blues かな。Blues って嘆き、ネガティブやけど、「こんな状態やけどやろうか」みたいな音楽やん。そういうの好きやから、甲斐バンドも好き。

-フォークソングも好きなんですか?

T-MAN:めっちゃ好き。フォークギター系は全部好き。「悲しくてやりきれない」とか。流しみたいなの、ああいうのも好きやな。

-Reggae で好きなアーティストは SuperCat なんですね。

T-MAN:何かかっこいいやん。初めて聞いた曲で、日本語じゃない曲とかで、何を言っているのか全然わからない、どんな歌なのかも全然わからへんけど、何かかっこいい時ってあるやん。ぐぅって感じ。後で調べてみて、この曲はこんなことを言ってんねんやとか、例えば Come Down *4とかは「来るぞ、来るぞ、危ない、危ない」みたいな。
原西さんのギャグの「みんな!俺やで!」みたいな。それであのオラオラ感。 人間としての野生感が出ている曲と思うな。人間って動物の中でも独特の野生感だすやん。その感じ。

「SuperCat/Come Down ライブ映像」

-T-MANさんにとってどういう人に野生味を感じるんですか?

T-MAN:落ちたものをすぐ食う。

-具体的ですね。

T-MAN:俺あんまり気にせえへん。俺の中ではSuperCat もそこに直結する。バンド名も Wild Apache。SuperCat って自分しか分からない人の名前を出したりする。「あれは誰やろ?」って日本語で調べても全然出てこない。

思ったことを全部言う。すごいなぁと思って。彼の言う Wild Apache はめっちゃ野性的に生きているソルジャーやと俺は解釈してる。色んな解釈されたりすると思うねんけど、俺は自分だけの解釈をしたい。素敵やと思ってたい。

普段の見た目、食い物の食べ方、どういうのが Apache なんだろうと考えたりする。そういう SuperCat ごっこを自分でする。結構する。

-好きなアーティストでジミー大西さんと事前に聞きましたが、彼も野性的という意味において好きなんですか?

T-MAN:そう言われたらそうやな。ずっと好きやな。なんで好きなんやろうな。
好きになってから絵を描いているのとかを知った。

彼らは知識とか知恵とかを無駄遣いすることなく、活用の仕方がタフでポジティブ。自分で知識とか知恵を生きるために使っていて、それを人に発信していないけど、周りの人が勝手にそれを汲みとる。汲みとりやすいすごいシンプルな生き方、情報の使い方をしている気がする。

だからすごいし、いじられる人って絶対目につく人やん、周りから見たら。目につかせるのを狙っていない、自然体やからあそこまで盛り上がる。
何か好きって気持ちは見えへんやん。理由がないけど好き。後から考えたらそれが理由になるんやろうけど。後から考えさせられる回数が、自分の中で一番多かったのがこの人かなって。

-後から考えさせられるのがジミー大西さん、面白いですね。

T-MAN:結構、考えるなぁ。一週間で何回か考える。こういう時に彼やったらどうするんやろうとか。あの人やったらこういう判断するから、こういう行動をするんやろなとか。

好きな人やったら、どんな風に判断してどういう風に言うんだろうって。つまらない仕事でも、どうせやったら楽しみながらやっておきたい。好きな人やったらこの時どういう判断をするやろうって考えるのが好き。
嫌なことをする中でも、好きな人のことを考えている。「この人やったらどういう風にするんだろう」とか、その回数が多いのがジミー大西さん。後、江頭2:50さん。音楽をしている人以外で好きな人。

Chinese Man*5 は単純に音楽が好き。音楽の作り方がカッコいい。捉われへんし、みんなに聞いてほしいアーティスト。色んな人に聞いてほしい。Youtube とかで検索して。今ってそんなん便利やん。

あんまり音楽のこと詳しくない人に Chinese Man みせたら「めちゃカッコいいやん」って。
普段クラブとか来ないし、J-POPだけが好きだったりする子とかも聞いたら「なにこれ、カッコいい」ってなるし、しかも Black Music が好きな人でもこれはやばいってなる。一般の人でも「何これ」って。
夜に聴くな。夜に聴くことが多い。

-自分の音楽スタイルとして、意識しているアーティストはいるのですか?

T-MAN:みんなに言っても通じないけど、SuperCat やねん。SuperCat はすごい大好き。ずっと意識しているな。
多分作品にした時にそうなっていない。全然そうなっていない。

結局、歌を作るとなったら本気で向き合うから思ったことを出す、そういう意味で THE BLUE HEARTS もダサいこともでかい声で言うやん。思ったことをダサかろうがなんだろうが、でかい声で自信満々で言うやん。そういうのはカッコいい。ダサイを本気でやったらカッコいい。だから、俺も出来たらするようにしている。全部言うようにしている。

HIPHOP でも Reggae でも、韻を踏むってあるやん。韻を踏むことに重点を置いたら、嘘をついてしまいそうになる。その方がハマるけど、そうまでして韻を踏むのは嫌ややから、ひとつ前の小節のリリックを正直に言えるようにする。曲を作るにその作業をすることが多いかな。そこを正直に言うために、一個前の思ったことと照らし合わせる。じゃあ、言える。


*3…元々は The Exciters の楽曲で Manfred Mann のカバーにより国際的に有名になった楽曲。
*4…1980年後半より Dancehall Reggae で活躍した SuperCat の代表的な楽曲。
*5…DJ Zé Mateo、High Ku、ビートメーカーの SLY によって2004年に結成されたフランスのヒップホップ集団。


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