遠藤ヒツジ


※ページ毎に本人の作品をご覧になれます


こころにいう
(2019.7.13)
(初出・未発表)


 心にもないこと言う
 少しは心にあるけれど
 本当は言いたくなんてないことが
 心にもないこと
 言いたくないこと
 言ってごめん

 心ないこと言う
 いらいらしちゃって
 ついつい言う
 言いたくなんてないけれど
 僕って弱いから
 ついつい言う
 心ないこと
 言っちゃってごめん

 心壊すような言葉いう
 過剰に異常に乱暴に軽率に
 相手に言いたいことばかり言う

 僕って弱いから
 簡単に壊しちゃって
 たやすく壊れちゃう

 壊しちゃうような言葉って
 何気ない一言だったり
 悪意のある一言だったり
 みんなの心の風景は
 みんなそれぞれ違うから
 つい口をついた言葉が
 心壊す言葉になったりする

 ごめん ごめんね ごめんなさい
 それではもう
 済まされないことだってある
 心壊す言葉は言わないように
 この詩は
 心を壊さないようにこう言う

 でも忘れないで
 黙っていることも
 時に人の心を壊す

 そういうことを言いたいために
 この詩は愚直にも
 こんな口調で
 こうやって言う


『「怒っているのを見せたことがない人が、怒っていないわけではない」と詩では伝えたい』

8.今後の目標を教えてください

遠藤ヒツジ:自分には限界があるというのはわかっているし、今でも結構いっぱいいっぱいです(笑)でも、その辺りのキャパを見極めつつ、やれることをやる。それが重要かなと思います。アーティストというと心血注いで、人生を掛けてやる方が心を打つのかもしれないけど、本当に今若いアーティストの人たちがネットから出てきて、これからって時に過労で亡くなっちゃうのがいたたまれない。過剰に継続するのではなくて、緩やかに続けていくのが自分の中では大切です。活動の歴が長くなると知り合いも増えて、「オンラインイベントが割合できるようになりました」と、でも全部は追い切れないじゃないですか。全部に全部でているわけにはいかないし、最初に挨拶にいってその後はいけなくなっちゃったりする。

過剰反応が起こると「あそこもここも顔を出さなければいけない」みたいなしがらみが増えてくると思うんですよね。それ自体は悪いことじゃないけど、そこに折り合いをつけていかないと活動が嫌になって短くなっちゃう。色んなところに出ていける人はそれはそれで素晴らしい才能だと思うからいいんですけど、自分は折り合いをつけないと生活も仕事もあって、観たい映画もあるのに…リーディングを全部聴いていたら終わんなくなっちゃう(笑)

基本的に僕は大きい目標みたいなのを持っていなくて、無理をしないで活動していくのが必要なのかなと。ダラダラやるとかやる気がないとかではなくて、あくまでも自分のペースで長く続けるためにストレスを溜めないことですね。自分自身も疲れていた時期もあったりするので、そういう経験をしているとあまり無理して活動する必要はないと思う。

-無理をしても返ってきますからね。

そういう人を見ていると、心配になっちゃう。多く活動するより自分のペースを見極める方が大切だなと。小説家のデビューの方法は、賞に応募してそこから芥川賞を受賞したりするのが一般的とされている。そうすると、500~600枚は書かなくちゃいけない。

「ものが書けたら賞に応募してみよう」という気持ちでやっていく方が自分には向いている。「そんなんじゃプロになれねえよ」と言われたらそこまでで、それはその人の考え方。プロになりたい人は頑張った方がいいけど、生活があってやることがある。そういうのは重要かなと思います。身体を壊すと元も子もない。心血を注ぐより、ある余剰の中で動いていく方が向いています。

-他に活動をする上でのこだわり、気をつけていることはありますか?

遠藤ヒツジ:過干渉にならないようにはしています。元々、過干渉になるほど人と接していないとは思いますけど(笑)それこそさっき言ったようなイベントの付き合いとかはあまり考えないようにはしています。「普段からよくしてくれている人がせっかくイベントに誘ってくれたのにいけないのは申し訳ない」とは思いますが。

SPIRIT だとブッキングする側だから、色んな所を見に行ってパフォーマーにお声掛けをするのは自分の中の課題としてはある。動きながら見ていく、そういう意味では猫道*22さんは本当に現場をみて、自分の感性で選んでいる。さっき言った審美眼がないので、ブッキングに自信がない(笑)自分が良いと思ったものを良いと言える人は本当に素晴らしい。

-二択ではもちろんないですが、自分の感性を信じる・信じないは難しいですよね。

遠藤ヒツジ:auly mosquito のコラム『光よりおそい散歩』で作品を紹介していますけど、褒めて書いているから「なんだよ!」と感じる人はいないと思う。あれは善意のもとで成り立たせて書いていますね。差引くと批評性みたいなのは弱いのかもしれないですね。自分を信じる審美眼の感覚が育っていない。胎動の ikoma*23 さんとかブッキングの面できちんと活動しているのは、どうやってんのかなって(笑)

「本サイトにて連載中の遠藤ヒツジ氏のコラム『光よりおそい散歩』」

-パフォーマンスをみて「これはいいなぁ」と感じたりはしているんですか?

遠藤ヒツジ:もちろん。あと、良くないのがあとがきや解説から読むのが全く苦じゃない。最初から読む場合もあるんですけど、本を読んだ後にあとがきや解説を読むのが嫌です。「余韻の後に文章を読むのか」って(笑)

あまりいい行為じゃないと思うんだけど、終わったら終わりにしてほしくて。中に入っている文章として読みたいので、先に読んでから本編にいく。

-その読み方、全然アリだと思います

遠藤ヒツジ:ミステリーとかで「ネタバレだから読まないでください」って時はさすがに読まないです(笑)あと、解説力がなくて「この映画、面白かったよ」をうまく伝える術がない。周りの友達が物凄くうまいから、観た映画の誰が前の映画のどの役で…みたいなところからきちんと筋立てて語れる人が多くて、あれはすごい。自分はどうも苦手で人にオススメする時は「これ、面白いよ」ぐらいしか言えない。一回練習してみたんですけど、全くダメで(笑)

なので、自分に負荷をかけないようにしています。リラックスしている時の方が、今の自分としては良いものがでるなと。負荷を掛けるのは締切りが迫った時ぐらいですかね。

-なんだか作品の雰囲気とはギャップを感じます。

遠藤ヒツジ:そうね。のほほんとしているのかも。あんまり人に怒ったり感情を出したりしない。ただ「怒っているのを見せたことがない人が、怒っていないわけではない」と詩では伝えたい。「腹持ちならないこともありますよ」というのは、向こうが想像しないとわからない。「この人は優しいよね。なんでも”はいはい”と言ってくれるよね」そういう人って役割を負いがちで、それが信頼の証でもあるから一概に悪いとも言えないけど、「静かにしている人もその場でケンカ腰になる人と同じくらいのことは考えているよ」と。何も考えていないわけではないです。

-その場で怒るかは気質の問題でもありますよね。

遠藤ヒツジ:そうね。後は感情の波がかなり遅い。後できちんと構築して怒っていたかどうかを判断する。

-そこに時差があるんですね。

遠藤ヒツジ:その場でモノを言える人は瞬発力もあるし言える胆力がある。それが合わないこともあるのかもしれないけど、自分にはない才能だから「よくこんなに反論できるな」と、これだけ反論するには一回、文章に起こさないと(笑)

-時間掛ける分だけ迫力のある反論になりそうですね(笑)

遠藤ヒツジ:うん(笑)


*22 猫道…スポークンワードのパフォーマー、猫道氏を指す。婚礼司会・イベントのMCも務める。
*23 ikoma…胎動レーベルの主催者の ikoma 氏を指す。ジャンルレスに様々なイベントを手掛ける。


【アーティスト情報】

遠藤ヒツジ


【プロフィール】
遠藤ヒツジ
2014年頃から各活動を開始。日本詩人クラブ会員。詩の同人「白亜紀」「指名手配」、詩のグループ「シジンサロン」参加。個人サークル「羊目舎」主宰。イベント「ポエトリーリーディングオープンマイクSPIRIT」を伊藤竣泰と共同主催(2020年~)



ShareButton:

返信する