DJ YEW

『ヒップホップという音楽の不良性をかたちにしたようなラップ』

3.好きなアーティスト

DJ YEW:好きなアーティストについて、さっきの話にも出たけれど DJ KOO。作る音の前に存在として。
今現在も継続してリスペクトをしていて、最初に目にしたときの視覚的な DJ の格好良さを与えてもらった。現状クラブプレイもしているだろうけれど、バラエティ番組に出ている時も、要するにターンテーブルの前にいない時も DJ である。音は鳴らずとも DJ として成り立っている。

DJ という存在に足が生えて歩いている現人神みたいな。ターンテーブルの前にいない状態であっても DJ、それが自分の中での理想の人間の姿。
そういう意味では常に憧れのアーティスト。

-DJ という存在そのものですね。

「【DJ活動40周年】下積み・小室哲哉・TRF…DJ KOOが全てを語る。)」

DJ YEW:今のは概念的な部分の話。それとは別に作っている音が好き、こっちが真面目な回答だと思うんだけれど、現時点で自分の中で理想とするラップをしてくれている人を考えると Heltah Skeltah。BootCamp Click*27 というみなさま大好きな集団の中の二人組。Rock と Sean Price で Sean Price はなくなってしまったけれど、Rockness Monsta は未だにご存命で彼のラップがヤバい。

この魅力は語り慣れているので、圧縮してお伝えしますね。

-ありがとうございます。

DJ YEW:まずは不良性。ヒップホップという音楽の不良性をかたちにしたようなラップ。ヒップホップはお行儀の悪い音楽であると。ループした音にメロディのない喋りをそのままのせる。何人かでマイクリレーしている中でも Rockness Monsta は後方でずっと煽っていたりして常に声が聞こえる。他の人がラップしているときも何か聞こえるぞと。

あとはビートの譜割り。カチッとしたところにのっけなくて、若干後ろにずらしていたり、前のめりになっていたり、喋りの中から自然にラップが立ち上がってきていてとにかくルーズ。
ヒップホップを聴き始めた人は「この人、下手なんじゃないですか」と言われかねないほどのルーズさ。

「A Must See Heltah Skeltah Freestyle (Official Video)」

その状態で音源にして出しちゃう不良性。ルーズだなと自分もずっと思っていたけれど、細かく聴くとルーズではなくドラムに音をのせる上でグルーヴが壊れないギリギリのラインを保っている。拍を細かく刻んでのっけていくというのは基本ではあるんだけれど、拍にのったときにここまでは前のめりにしたり後ろにずらしても大丈夫ですよのライン。

それをぎりぎりまで攻めているとようやく気がついた。それをずっとやっているのにときたまオンビートになるときがあって「どうしたんですか」みたいな。

普段ずれずれだからオンビートになった時のホッとする感じ。でも、やっぱりずれずれの方が格好良くて何だろうな。

アカペラでラップを聴いたとき、ビートを聴いていなくてもバックビートがわかる人と完全に迷子になっちゃう人がいる。彼はその迷子になるタイプ。
声も決して美しくはなくて、爬虫類じゃないけれど、ヒップホップをやるための声。だから後ろでガヤを入れても目立つ。そこにいるみたいな(笑)。
国外ではその Heltah Skeltah の Rockness Monsta が一番好きなラッパー。

北関東スキルズの話に戻るとメンバーの DUFF くんが Rockness Monsta に近いことができていて、日本人もできるんだと。そこが北関東スキルズに惹かれた部分でもある。

4.構成する9つの作品


1.HYPER MIX Ⅲ / trf
カッコ良い音楽との出会い。1曲目のイントロに反応できていなかったら今の自分は別の人生を歩んでいた。

2.Tha Doggfather / Snoop Doggy Dogg
12歳の時に初めて買ったヒップホップの CD。求めていたヒップホップの音とは違ったけれど、ここから学んでいった。

3.THE MIX TAPE-VOLUME Ⅱ 60 MINUTES OF FUNK / FUNKMASTER FLEX
最初に聞いた時は音楽を使った悪ふざけだと思った。2枚使い、ブレンド、エクスクルーシブなフリースタイルという MIXTAPE の完成形。8分近くに及ぶ Boot Camp Click のフリースタイルが自分にとっての最高のヒップホップ。

4.E.L.E. (Extinction Level Event): The Final World Front / Busta Rhymes
中学の修学旅行の時に京都の Booty’s というレコ屋で購入。変態ビートと最高のスキルが詰まっている。

5.In Search Of… / N.E.R.D
剥き出しなデジタルサウンドとロック寄りなメロディーが生み出す得難い刹那感。
2001年リリースの electronic version の方が強く感情に響きます。

6.SUBSTREAM / DJ KIYO
質感を揃えるセンスと完成度が圧倒的な、常に目標にしている MIXTAPE。

7.Kaikoo 邂逅(DVD)
この頃のダークでヘビーでディープでシリアスなストリートの美学から生まれるアートが今でも最上の物だと信じています。

8.PUBLIC ENAMAY / ENAMAY
国内最高のスキルを持つMC、YAMANE の変名作品。日本のヒップホップにある種の絶望と限界を感じ始めていた時に YAMANE の存在に出会えて私は救われました。

9. Burial / BURIAL
隙間に見え隠れするノイズの異物感が必要不可欠な存在だと気づいたら、暗闇の中の孤独さが人生にとって大切な時間になります。


*27 Boot Camp Clik…ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするヒップホップ・コレクティブ。Black Moon、Smif-N-Wessun、Heltah Skeltah、O.G.C. などのグループやメンバーが参加し、硬質なビートとストリート色の強いラップで知られる。


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